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一人百物語 2

支えてくれた

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/20


以前いた会社で、上司だった元木さんの話。


久々の休日、元木さんは家族で買い物に行った。

給料が出たところだったので奥さんの許しを得て特大のウイスキー瓶を買い、喜々として帰ってきた。

車から家族と荷物を下ろし、自分は左手に二歳の次男を抱え、右手にウイスキー瓶を持ってマンション二階の部屋へと階段を上りはじめた。

途中、次男が腕の中ではしゃいで元木さんは階段の途中でよろけた。

「……うわ!」

両手はふさがっている。子供を落とすわけにはいかない。元木さんは右手のウイスキー瓶を離し、手摺りを掴もうとした。

しかし手は空を切った。

パァン!

とウイスキー瓶が割れる音がした。

(落ち……)

と思った時、

がしり、と子供をかかえた自分の左腕を掴まれた。

え、と見上げると

そこにはもう一人の自分がいた。

同じポロシャツを着た、もう一人の元木さんが、足を踏み外しそうになっている元木さんの左の二の腕を掴んで支えていたという。

(え?!)

と思ったとたん、もう一人の自分は消えていた。

「無表情な顔でさ。じっと俺を見て。目が合ったよ。子供はとりあえずびっくりした様な顔してた。二人のパパの間でさ」


残念ながらウイスキーの替えは、奥さんから許可が出なかった。




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