九話
パチクリ。パチクリ。
目が覚めると仰向けだった。眼前には紺碧に染まった空が……。いや、それは異世界転移した初めのものと一緒なのだが、まあ、そのデジャヴ感も今はいいと思った。
天井があった。石で出来ている。暗かった。
「まだ夜かあ?」とか言いながらこの暗さは夜の暗がりではない。ジメジメとした石をひっくり返したときに出てくる蛞蝓みたいな暗さだった。
「寝ぼけているのですか?」
「いいや」
「まどろんでいるのですか?」
「同じことだろ。何言ってんだ」
「貴方が何言ってるんですか?」
「おまっ……」
おっと。ここから色々と弁を進めてしまうと不毛な議論になる。
「まあ。もーいい」と一回に切っておいて「ここはどこなんだ?天使さんよ」と聞いた。
「あー。あれ見て見な」
そう天使は光がやや差し込む方へと腕を伸ばした。
鉄の棒が狭く等間隔に並んでいた。
それを人は鉄格子と言う。え?まて、ということは、そういうまでもなく自明に牢屋なのか?
俺は鉄格子に近づき手で揺らしてみた。意外とびくともしなかった。
「あー何してるんですか。牢屋に閉じ込められたお決まりのことをしないと済まないのか?」
冷ややかな目をして俺のことを見ていた。体育座りで。
「そういうお前はお決まりのように諦めているんだな。そういう奴いるわ。アニメでみた」
「はあ。お決まりのことしか私たちは言えないようですね」
「はっ。牢屋に来てやることなんて決まっているんじゃないか?」
「知らないですよ。牢屋なんて神聖なる天使が入ったことあるだなんて恥以外のなにものでもないですよ?」
「じゃあ。実績解除だろ。おめでとう。箔が付いたな。犯罪者として」
「はあ?恥です。恥。本当の恥ですよ。あー貴方は何回も入っているから逆に落ち着いているんじゃないですか?」
アイロニカルな毒づいた言い方をしやがる。いやらしいわ。
「ばっかじゃないの?一度もないが?今回が初めてだよ」
「権力ですか。モノノベ財閥は恐ろしいですねえ。パパー。ママーはもういなんいんですよあ?」
「おめえっ。殺す。表でろおお。そこまでのことはしていなあいんじゃ。ボケっ」
彼女の胸倉を荒く摑む。
「表なんて出られませええん。」
「じゃあ。ここで、ぶっ殺してやんよおおおおお」
野太い声で叫びを俺が上げた瞬間「********!!!!!」と訳の分からぬ声で人が叫んだ。
二人いる中の一人が叫んだのだ。
「****」
「*****?」
「*******」
もう一人は激昂したもう一人を押さえつけるが如く話を振っていた。
全く何言っているのか分からないが、怒っていることは分かった。分かったからどうしろという話なのだがな。二人の会話の詳細は不明瞭のままである。
「すみません。許してください。この人がちょっと興奮してしまったみたいで、悪気はないのですよ。はい。ほんとすいません。許してください」
長々と俺なら首にするような謝罪を述べた。
その後俺の後頭部を掴み無理矢理頭を下げさせた。
「何すんだよ?」
俺は無駄な配慮と分かりつつやや小声で訴えかけた。
「分からないのですか?この野郎。この兵士さんはお怒りなのですよ?」
「それは分かるんだが、言語が一切合切何も分からない」
「ああ」
「え?」
天使は忘れていたと言わんばかりの声を上げた。今まで通じている風に思っていたのか?こいつ間抜け過ぎないかと言うのは黙っておこう。
意図せず向こうの方を刺激してしまいそうであるのだ。
「まあ。とりあえず黙ってもらえる?」
「一旦な」
どうもこうもできなかったらしい。俺もそれがいいと思った。全て一任するのが好ましいだろう。
俺は棒立ちで傍観することにした。
「******?」
「いや、取るに足らない些事でごさいます」
「****」
「はい。今度から気を付けますので、どうかご慈悲を…………」
「****************」
「え?あの嘘ですよね?嘘って言ってくださいよ」
「******」
「ああ。あああ。」
え?これって。
「おいお前……」
GOODポーズを見せた。天使ならGODポーズとか言いそうだと思い、天使のニカリとした微笑みを見た。
「ふざけんな。明らかに失敗しただろ」
「えーはいすみません。おわりました。なんだか顚末は分かりませんが、最悪死刑になるらしいで…す……」
「は?」




