八話
うわ。ナニコレ。暖かい。
眼前は真っ暗だ。暗黒に包まれていた。
う、宇宙。そうなら、ヤバい息が……。苦しい。苦しい。あ、わあ。あれ。
え?暴れていて分かったけど、これ土の中じゃね?と少し冷静になって思った。
え?え?大事なことだから二回思った。この温もり、そして目の前にミミズっぽいものが通ったのだ。
「あああああああああああああ」と叫んだが、土と言うものはほぼ真空なので外に伝わった感じがしない。
いや、でも空気を感じる。足に空気を感じる。
「いたっ」
足に痛みを感じる。
「いたっ。いたっ。いった」
誰かが俺の足を蹴る。もう自明だろ。ゼッタイアイツだろ。
「クソ。このやろ。お前のせいで清潔な私の体が、燃えちまったじゃないですか。まあでも、貴方が爆発から逃げなかったから埋まっているのは、私としては好都合ですね。数時間の恨みをここで晴らしてやりますよお。おりゃあ」と悪魔みたいな天使の声が聞こえた。
どもっているように聞こえるがはっきり聞き取れてしまう。
俺はそれに反芻するようにと「出せえー。出せえー」真空なのに叫んだ。無駄な行為なのは承知の上だ。
クソ野郎は蹴り続けている。クソお。何とかしなければ。考えなければ。
どうしようか。えーと。えーと。
あっ。そうだ。そういえば、能力を使えば……って使い方知らねえ。終わった。何も出来ねえ。
俺は放心状態になった。全てを諦めたのだ。
「********!」
「えっ。え?いや、何を…と言われましても…えっと」
「*********?」
「いやっ。違います。いや。ホント何とか、お願いします」
「*******」
「や、止めて。手え摑まないでえ」
何やら声が聞こえるのだが言語が全く分からない。状況から判断できることはあの天使やらかしやがったなとしか思えなかった。
アイツはゴミだったが死なれたら……堕天使だからそういう概念とかないのではないか?じゃあどうでもいいな。
いや、待て。よくよく考えなくても良くないことは分かる。俺がこのままだろ。どうしてくれるんだ。
ああああああああ。
俺はどうしようもないことを悟ったのでとりあえず叫んでみたのだ。
叫べば、よくわからない言語を話しているそこの現地民に気が付いてくれるという算段だ。
「なんですか。取り込み中なの黙ってもらってもいいか?」と天使はキレた。
なんだよそれ。俺の算段は最悪だった。
天使を当てにしたことが最大の過ちなのだろう。
しかし、目論見は別の方向に行った。
『緊急事態《attention》。緊急事態《attention》。プログラムに従い能力を自動発動します』
は?
は?ん?状況が全く呑み込めていないが……。どこからそんな声が流れているのだ?そんなことより能力が使えると言うことでいいのか?と思うと勝手にパネルが開いた。
そこには天使が見せてくれたようなパネルがあって俺のクソみたいな能力が羅列されていた。なんか隠しスキルがあって無双できるという夢想は……。
無かった。
チクショウ。
それなら、何でもいいわと思い、俺はそこに触れようとしたが、そういえば俺は地面に埋まっており身動き一つ取れやしなかった。
そうしている間に『自動選択により魔力能力減少を選択します』と流れた。
え?
それは最悪の選択ではないのだろうか?いや、違う。最悪の能力しかないから一番マシなものになったのだ。
でも、結局これも悪手であるには変わらない。
緊急事態による救済プログラムが裏目に出ていると考えていい。首を絞めるプログラムになっている。ああ。全てが上手くいかない不幸中の幸いすらないらしい。
あ。
体から力が抜けてくる。思考している間に俺の能力が回ってきた。最悪だ。
「あ、あれ?力が抜けて…来ます……」
「*******!!」
あ、ああ。
どさり。地面の方からそんな鈍い音が聞こえた気がする。
もしかして、もしかすると……天使と現地民が倒れたとかいう最悪のシナリオ?
え?まじ。俺は?俺は助けて貰えないの?
俺死んだわ。転生してすぐ俺は死ぬらしい。
と、おもった時期もありました。
「己ええええいらんこと仕上がってえ。なんだよおおおおお」と天使がいつものですます口調を崩して荒げながら俺の足を引っ張て大根引きを揚力で引っこ抜いた。
かなり勢いよく引っこ抜いたので、俺は宙を舞った。こんなきれいな飛ばされ方でなく、もっと雑に適当に飛ばされた。
どすり。ぼきっ。
着地音がこんな鈍い音だった。
その後、天使は倒れた。引っこ抜いた反動で体が倒れた。
「……大丈夫……ですか?」
やっておきながら天使は心配そうな声を出した。
全てが力尽きて俯せでそんな言葉を呟いた。全く心配するような立場ではない。逆に俺は心配になってしまう。
まあ。その時全く考える余裕などなかったのだけれども。
なぜなら俺のゴミみたいな能力が絶賛ここに広がり続け体力を奪い取っていたのだ。
このせいで天使が倒れたのだ。今はもうぐったりしている。
だからこそ彼女は俺を助けたのだ。天使の体力が完全になくなり意識がなくなったら、俺は土の中で生き埋めルートだった。
感謝をしたいが、視界がぼやけ始めたので無理。それは言い訳でこんな奴に感謝はしたくないのは本音だった。
最悪だな。
あれ?あそこに転がっているのは兵士か?西洋の甲冑ののようなものを着用している。多分さっきの謎の言語を話していた兵士よな。初めて見た。
この世界で初めての現地住民だが、もう見るのは最後か。
そう。みんなここで死ぬんだ。
力が抜けて……。




