六話
「エンジェルライトお」
「おお」
天使の手に気が集まっている。なんだ?なんかすごいんだが。
アニメや漫画の魔法詠唱シーンを見ているみたいだ。仮想現実か?
「おお?」
「うん」
「ん?これで終わり?」
「そうですが?」
「はあ?」
え?あ?これを放つとかは?どういうこと?ホントに手が光っているだけじゃんか。しょぼっ。
「天使の光ですが?」と天使は自慢げに誇らしげに言っている。どうして誇らしげになるのか理解は出来なかった。
「天使の光?蛍の光と一緒じゃねえか。何の意味もねえだろ」
「夜道とか綺麗だからクリスマスツリーに映える光でしょう?」
「人間イルミネーションかよ」
「はあ?天使ですが?」
そこだけかよ。ツッコむところ。
「まあ。役に立たない天使であることが分かったわ」
「はあ?天使だぞ?日本担当のエリート街道歩んでいるんですよ?役に立たないとは何ですか?」
「俺。俺」
「なんですか?」
「お前がなんか俺の能力を変な風にいじっただろう?」
「いやあ。ああ……。うん。すいません。いざ一緒になると《《それ》》本当に邪魔ですよね……」
「馬鹿にしてんのか?殺すぞ」
「天使にそんな口を……」
「堕天使に必要ねえ。なんだよ。あの能力。貧乏?なんとか?不幸?なんであんな能力が存在するんだ?」
「いや、知りませんよ。ムカついたから苦しめられそうな能力選んだだけですよ。ステータスとか見ればいいんじゃないですか?」
「は?何言ってんだ?ゲームじゃあるまいし。現実と空想の区別がつかなくなったのか?いい加減にしてくれ。冗談はその知能だけにしてくれ」
「おい。どこがだ。知能が劣っていると言いたげじゃないですか。もお。あ、あ」
「どうした?その小さな頭でわかったのか?」
「一言どころではなくお前が発する言葉全てが余計なのだが、忘れてたことがあるわ。人間はステータスを専用の道具で見ていることを忘れていた……。それは天使の生まれながらのものでした」
「お前は使えるのか?堕天使だし……」
「何言ってんだ。何度言ったら分かる?天使ですよ?ほら天使らしさを見せてあげましょう」
そう天使が言うと手をまたしても空中に挙げた。別に天使らしさはなかった。
「ステータスオープン対象者岡村チハヤ」
「物部だろ?」
「いつまで引っ張っているんですか……」
少し呆れた様子を見せる天使さん。
しかし、それも気にならないほどに空中に画面が出て来た。近未来感溢れる空中ディスプレイってやつだ。
だから、俺はそのステータスの内容よりもそのディスプレイ自体が気になってしまったのだ。
少し触ろうと手を伸ばして見るのだが、すり抜ける。ホログラムなのだろうか。SF世界に迷いこんだのか?
「興味津々なところ申し訳ないが、ステータスの方確認してもらえます?」
天使がそう言ったことで少々我に返った。「ああ。そうだな」と一言頷いて、促されたステータスの方を確認しようと思ったのだが、そのディスプレイ自体に俺は触れられなかった。
「触れないのだが」
「そりゃ。所有者の私にしか触れられないに決まってますけど?」
何言ってんですか?みたいな顔をする。見ろと言ったのはお前だろ。確認の場合は全て見ないと始まらないだろ。
ムカついたので脛でも蹴っておいた。
「なに、なにしやがるんですか。て、天使、天使なんですけど!」
「天使でもなんでもいいが、それ全部読んだ後に俺に説明してくれないか。色々と面倒だ」
「はあ。分かりました私が読みますよ。え~と。はい」
「もう読んだのか?」
「舐めないでください。仕事で培われた速読は伊達ではないんですよ」
「で、何が書いてあるんだ」
「まず。貧乏は文字通り貧乏になる」
「うん」
「二つ目。不幸。文字通り不幸になる」
「うん」
「で、最後の能力魔力減少は使う能力や獲得した能力の効力が半分になるったり、魔力量が通常より少なくなったりと……最悪ですね。まあ。この能力のもっと最悪なところは半径百メートルの仲間に適応されるという点ですね。だから近づかないでください。それか死んでください」
「はあ。何言ってんだてめえ。百パーセントお前のせいだろ。全部最悪じゃないか」
「まあ。しかし、この能力があるおかげで残り二つの効力は弱まっているんだからいいのでは?」
「殺すぞ。怪我の功名にしかならねえよ。あほか!」
「そうですね。レベルアップすればするほど貧乏になるし、不幸になるし、能力魔力は減少しますからね……」
「ほ、ホント最悪じゃねえか」
俺は手をついて絶望する。
「ああ最悪です。近寄らないでください」
「ああ、天使えもん~。何とかしてえ」
「無理無体だが」
「なんだよ。お前がこうしたんだろ。責任もって元の世界に返しやがれ」
「そんなこと無理ですよ。私にはもう権限が一切ないですから」
「じゃあそんなゴミ以下の天使は用済みだ。新しいのもってこい」
「はあ?殺しますよ?」
「天使がそんな言葉吐いていいのか?コンプラあるだろう?」
「捨ててきました」
当然ゴミだった。
「ていうかなんで帰りたいんですか。転生、転移ものの主人公は何も考えずにワクワクとするものでしょう?」
「チート能力があるからだろ」
「そ、そう、でしたね」
動揺しかしていない。で
「完全に知っているだろ。早く戻す方法を……」
「えっと……。もういいじゃないですか。責任もって私がどうにかして見捨てるから」と天使は無慈悲にどこかに歩を進めようとした。
「一行矛盾やめろ」
「じゃあ。見捨てますから。バイバイ」
「そっちを取るな。教えろ」
おい。全く聞いてない。天使はお構いなしにずんずんと俺から逃げるように走った。
止めろよ。温室育ちの俺がこんな何もない平地で何かできるわけがないだろう。
「おい、待て」と待ってくれる慈悲など見せない天使を追いかけて、どこへ行くのか分からないままついていった。
ここまで、こいつは本当に天使なのだろうかと思うのは自明の理だった。




