三話
「貴方は死にました」
そう言った。困惑しかない。
困惑も拭えないまま彼女は「えっと。申し遅れましたが、天使です」と言った。
華麗に彼女はそう名乗った。そんな単語を聞いたとて、本来受け入れられるはずないだろうが背景も相まって俺はすんなり理解が追い付いた。理解は追いついたが疑問が一つ。
「なんで神様じゃないん?神様が私の相手をしてくれるのがスタンダードではないか?こういう物語的には神様だろ」
「何言ってんですか?神様みたいな忙しく尊いお方に貴方みたいな小物が会える訳ないでしょう?笑わせないでください」
なんだ。こいつ。鼻につく奴だな。
理論は納得できたが、もっと優しく言葉にしろよ。そうそうだが、この天使が神様ではない理由を見つけてしまったかもしれないと思った。
「そうか。こんな天使いやだあああ。神様。神様呼べやああ」
「ちょ、ちょま。貴きお方の名前を軽々しく。そんな失礼なこと言ったら私降格されちゃうんですよ。天使は信用が一番なんですから。それ以外は要らないんですけど……。兎に角、だから大人しくしてくださいよ?」
天使は主に人間の願いを神様に伝達するいわば中間管理職見たいなものだろうか。
ここまでの言動を鑑みてもどう頑張ったとしてもこいつが有能に思えない。むしろゴミ以下だろ。
「まあ。いいや。早くこんな事務作業終わらせて結婚相手でも探さないと」と俺をただの手間としていてゴミ以下としか見ていない。
天使の世界に結婚なるものがあるのは興味があるけども、今は良い。
「えーと。貴方は岡村チハヤ……」
岡村とその天使は言った。
俺はこの状況に疑問を湧くわけでもなく間髪入れずに「物部チハヤだ」と叫んでしまった。
彼女は大変驚きを隠せずにいた。この状況に始めに引っかかるのがそこなのか?と。そして、呆れたように次の言葉を紡いだ。
「それはペンネームみたいなものでしょう?ここではそんなのいらないんですよ」
「俺はそうやって呼んでほしいのだが?」
「はいはい。そうですか。では、関係ないチハヤさんとお呼びしますね」
「それなら構わない」
「じゃあ、構わないのであれば、続けますね。岡村チハヤ。男性。十六歳。二〇〇八年七月七日生まれ。日本有数の大財閥モノノベ財閥のほぼ末端家庭に生まれる。素行は最悪。詐欺、恐喝、他多数。うわっ。なんか犯罪にしては中途半端ですね。三流。小心者って言ったところですか」
「はあ?」
「いや、だからこんな犯罪組織の下っ端みたいなラインナップなんか笑う」
「な、何をおおお!!」
「藁藁《WW》」
「殺す」
「(・o・)」
天使は俺に分かるように馬鹿にした笑いを返す。
こいつはただのムカつくお前の言う言葉を借りるとするならば三流天使と言ったところだ。
「はいはいこれはここまでとしまして……」
天使は適当に返した。なぜなら、時間が迫っていたからである。腕時計っぽいものを見ていたのでそう言える。
「さて、本題に入ろうか。ここは最後の審判であるのだから、ある程度の手続きをしなければならないのですよ。で、これ見て貰えます?これだけで済みますから」
パチンと指を鳴らして出てきたのは鏡だった。
「鏡ですか?」
「そう。浄玻璃の鏡。閻魔大王の庁にあったものです」
「そんな鏡をどうして天使が使うんだ?閻魔大王が使えよ」
「行政効率化と言いますか、働き方改革と言いますが、理由はともあれです」
「へえ。あの世も窮屈なんだな」
「とにかく私みたいな下っ端でも使えるように量産化されたものなんです。お値段なんと数十万」
「ほお。お安い」
「安いでしょう?生前の善行、悪行を見れると言うもともとの機能の他に貴方の今後の決定がなされます。天国に行くだとか、地獄に行くだとかが決まるわけです。まあ。結局、機械が全て決めるので、別に完全セルフで出来るんですよ」
元も子もないことを言った。
「味気なさすぎないですかね?」
「だから、私がいるのですよ?天使の職業など、面接官より実質的に心理カウンセラーに近いんですよ?」
「そうっすか」
「そうっすよ?いいや。では時間もないですし、流しますから、浄玻璃の鏡を……」
その天使はテレビのリモコンを押した。ようなものではない。れっきとしたテレビのリモコンである。
それはテレビのようなものなのだろうか?
ピッと電源が入るといきなりテロップが出された。




