プレイヤーショップ
カリンはサブ職を育てつつ、週末では友人たちとF.Oを楽しんだ。ランダムマップ探索での、PT人数の上限が4人という事もあり、自分達だけでPTを楽しんだ為、変なプレイヤーに出会う事も無かった。
全員が初期街であるルートレスに辿り着いた際には、装備一式と幾つかの回復薬、救難煙灯を少し手渡した。特に回復薬に関しては自作であると、少し自慢した。
チュートリアルまでは割とすんなりクリアできた。アンコモンさんとのボス戦を思い返すと、かなり縛りプレイしていたのを実感する。やはり、頭数が揃っているだけで、戦闘の安定感が全然違う。
自身のパーティー欄には『Karin・KU・Rain・Hiro』の名前が並んでいる。私自身が"守人"の職業を公言していた事もあり、他三人もそれぞれ、合わせて選んで来てくれた。もっとも、全員第一希望の職業を選べたみたいだが。
その日は、ルートレス周辺を探索したりしつつ、今後は何処から進めて行くか話して終わった。私も少し調べたが、どうやらストーリーを進めるには、東西南北のそれぞれに在る街に向かい、イベントを進めないといけないらしい。もっとも、進める順番や方法は完全に自由のようで、言い方を変えればチュートリアルを終えれば、自由のままに大陸を探索できるわけだ。…まあ、敵が強いところに行ったら間違いなく死ぬだろうが。
(…皆ログアウトした。私もサブ職進めてから…ん?アンコモンさんがログインしている…。折角だし、お礼しに行こうかな。)
メニューを開いて、フレンド欄を確認していると、アンコモンさんの名前が光っている。最近はタイミングが合わず、会えずじまいだったので少し話してみたい所もあったのだが、丁度良い。早速会いに…。
「…よくよく考えれば、何処に?居場所は…常夜の樹海?…何処?むー…。む?」
フレンドの欄をポチポチ弄っていると、プロフィール画面まで飛んでしまったが、その中に気になる表記がある。それは住居エリアの住所だ。三つあり、二つは分からないが、残り一つはルートレスに存在する住居エリアだ。しかも一等地だ。
「…他に行く当てもないし、行ってみようかな。」
カリンはアンコモンの住所へと足を進めて行った。
◆◇◆◇◆◇
ルートレスは初期街であると同時に、大陸最大の大都市でもある。ぶっちゃけ街を回るだけでも一日過ごせそうな程だ。その最たるが住居エリア。ルートレスの北部に位置する広々とした空間だ。サブ職"開拓者"で土地を切り開いたうえで、莫大なクレジットを納める事で自宅を購入できる。ルートレスの中央に近いほど土地の等級も高い。
アンコモンさんの住所は、土地中央から徒歩でも移動できるほど近い場所だ。道もレンガで舗装されており、広場や噴水も見られる上、何よりも他のプレイヤーがコーディネートしたと思われる独創的な家々は、眺めてるだけでも面白い。凝った庭から場違いな建物まで目白押しだ。
「……住居エリアに入るのは初めてだけど…すごいなぁ…。まあ、自宅の購入なんて夢のまた夢だけど。っと…この辺かな?3-3-14…。」
辿り着いたのは、鍛冶屋とでも言うべき家だった。他の家と見比べると、小ぶりな土地だが、狭い庭の中にも石踏と門灯があり小池もある。
庭を外から一通り眺めた後に、ふと足が止まる。
(……フレンドとはいえ、勝手に家に入るのは不味いのでは?見た感じ別荘というよりは店っていう見た目だけど、買い物しに来た訳でも無いし…うーむ。)
どうしようかと考え、門前でウロウロし始める。傍から見れば完全に不審者だ。
「うーん…うーん……。」
「おや?先客かな?」
「はぇ!?」
いつの間にか後ろに知らない女性が立っていた。
カリンと比べると明らかに身長が低く、第一印象は可愛らしい子だ。
銀髪のセミロングヘアに、褐色肌、特徴的な長い耳。初期から選べる森人に似ているが、ステータス欄には"闇森人"と書かれている。この種族は、確か課金…というより追加パッケージを購入しないと選択できない種族だ。それに、ぱっと見の服装だけでも、見た事もないが、明らかにこだわりを感じる。絶対にファッションで力を入れてる類だ。
そして仕草。棒立ちのチャット会話ではなく、声を掛けられた直後に、私に対して両手を後ろに組んで見上げる動作をしている。ゲームシステムとして、様々なエモーションが存在するのは知っているが、まさか声を掛けられるタイミングで目にするとは思ってもいなかった。
「えーと。その。客じゃなくて…会いに来ただけで…フレンドで…。」
「へぇ?UnCommonくんも隅に置けないね。こんな初々しい初心者の子を、放置して挙句、住所だけ教えるなんて。」
「そ、そういうのじゃなくて!お、お礼をしに来たのです!チュートリアルでお世話になったので!」
「ふふっ。そう否定的にならなくてもいいんだよ?彼、鈍い所あるからね。年がら年中多忙だし、積極的なぐらいが丁度いいよ。LucíaだLucía Galeano。」
ルシアと名乗る女性は、ネームプレートを指さす。読めなかったので助かるが、本当にありそうな名前だ。
カリンが面食らっていると、手を引っ張ってくる。…実際に引っ張られる訳では無く、そういうエモーションのようだが。
「ほら、外に突っ立てないで入りなよ。私の家では無いけど、彼の後輩なら友人も同然だからね。外で立たせるのは忍びない。」
「ル、Lucíaさんも、UnCommonさんの知り合いなんですか?」
「まあ、そんな感じだね。お得意様って奴だ。私の場合は、服の仕立て依頼で来る事が多いかな。今日も、依頼しに来た訳だしね。」
「服の仕立て…。サブ職の発明家ですよね。装備作成。…お得意様という事は、こういう外注は一般的なのですか?」
「うんー…。半分正解。知ってる?サブ職で物品等を製作すると、製作物には製作者の銘が刻まれるって。一種のブランドみたいなモノだよ。」
確かにそれは気付いていた。私が回復薬を自作した際も、カリンの名前が刻まれており、ドヤ顔で自慢したのは記憶に新しい。
「ブランド…やっぱりUnCommonさんは有名人なのでしょうか?」
「有名人…という程では無いけど、知り合いの多いんじゃないかな?おっと、噂をすれば…。」
ルシアと池の前で話し込んでいると、門前が青白く光る。気付けばアンコモンが立っていた。カリンが使っている自動移動とは別の機能による移動手段だろうか?
アンコモンは、直ぐにカリンに気づき驚いた様子をみせるが、ルシアに対しては少し面倒そうな様子だ。
「ハウスDMが鳴ったから来てみたけどLucíaか。相変わらず回りくどい事が好きだなぁ。っと、Karinさんも居たのか。何か素材でも卸に来てくれたのかい?」
「い、いえ!その、前回のお礼をしたくて…。コレ、よろしければどうぞ…。」
「ワイルドピグレッドの荒皮…。いやいや、流石に受け取れないよ。市場価格も落ち着いてないし、それだけで一財産だ。特に、始めたばかりの君には色々と入用だろう?」
「で、でも…。」
少ししょんぼりした様子で、俯く。
カリンがサブ職を育成し始めてから、素材の…特にワイルドピグレッドの荒皮は常に足りていない。それに、需要と重要性も理解してしまった。だからこそ、価値あるモノとしてアンコモンさんにプレゼントできればと思ったのだが…。
「…ほらほら。Karinちゃんが困ってるでしょ?折角、君の為に用意したアイテムなんだから、素直に受け取ってあげないと!」
「け、けどなぁ。人にポンポン物をあげるのはよろしくは…。」
「UnCommonくんが言えた義理じゃないでしょうに。頭にブーメラン刺さってるよ!」
「うぐっ。」
痛いところを突かれたかのように、アンコモンは言葉に詰まる。実際彼も、初心者支援という名目で物資提供した事は多い。
「貰って…くれませんか?」
「…コホン。Karinさん。ありがとう。素直に嬉しいよ。もし、店で買い物しに来た際には、割引させてもらうよ。」
「店…、そういえばUnCommonさんは店をやっていたのですね。あれだけのプレイスキルを持ってたので、意外でした。」
「どちらかと言うと、こっちがメインだけどね。装備・消耗品・中間素材。まあ、加工品を受注販売しているから、Karinさんもサブ職育成とかで、作りずらい素材とかあれば、依頼してくれ。"氷樹の木板"とか"大沼の淀み"とかね。」
「あぁ~…。」
非常に心当たりのあるアイテムだ。絶賛欲しい素材、その一と、その二だ。私がサブ職育成状況どころか、育成しているかも教えていないのにピンポイントで当ててくるのは、エスパーなのだろうか?
「……今欲しいです…その素材。」
「おや。お買い上げありがとうございます。」
割引価格で、欲しい素材をいくつも購入する事になった。
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名前:Karin
探索Lv:15
職業:守人 /Lv:19
サブ職業:鑑定士 /Lv:8
装備:新緑の守人槍(要レベル15/レア/専装)
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名前:Lucía Galeano
探索Lv:80
職業:歌姫 /Lv:70
サブ職業:料理人 /Lv:15
装備:サイレント・マイク(要レベル69/エピック/専装)
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名前:UnCommon
探索Lv:80
職業:魔獣使い /Lv:80
サブ職業:発明家 /Lv:80
装備:ブラスティング・ハンマー(要レベル80/レジェンダリー/専装)




