チュートリアルボス
ーーーコンテンツ終了まで、残り30分前になります。
アンコモンさんから、最近ガラの悪いプレイヤーが増えたとの事だ。理由について思い当たる節が無いと言っていたが…恐らく動機は私達と同じく有名配信者が原因であろうと伝えると、納得した。
また、鳥人についても明確な強みを教えて貰った。探索レベル5を超える…つまり、このダンジョンを終えたぐらいのタイミングで瞬間移動ができるスキル『前進する翼』を習得するので、それを積極的に使用すれば移動の遅さをカバーできるらしい。
「そろそろ出発しないとな。」
「そうですか…。色々、教えてもらって…ありがとうございます。」
「こちらこそ、貴重な時間を使って貰って聞いてもらったから、お互い様だよ。」
「そういえば『ワイルドピグレッドの荒皮』を集めているのでしたっけ?お手伝いしましょうか?」
「いいのかい?正直助かるよ。カリンさんが良ければ、ダンジョン後に適正価格で買い取らせて貰うよ。」
簡易キャンプを片づけて、薄暗い森の中に入って行く。
草木をかき分け、山を登り、川を渡り、道中の敵もベテランユーザーの助けもあり、簡単に……はいかなかった。
「あれ?ここって、こんなに敵多かったけ…?痛ぁ!?」
「コレ何だっけ…あ、毒だこれ…。(毒状態になる)」
「大丈夫大丈夫!これぐらい避けられ……ゴフッ!」
「全然大丈夫じゃなさそうですけど!?」
アンコモンさんの耐久値が何度も赤色に輝く度に、這い上がってゴクゴクと回復薬を飲み干している。
チュートリアルでは、回復薬はゲーム内通貨で購入するアイテムだが…結構なマイナスになっているのでは?
それに素材集めに来たという事は、実質ゲーム内通貨を稼ぎに来たはずなのに、大丈夫なのだろうか?
色々な意味で、心配になっていく中、とうとうマップボス前のエリアまで到達した。道中運が良かったらしく、敵の多くが"ワイルドピグレッド"で、そこそこの数を集める事ができた。
私のバックパックの中にも、そこそこの数の"ワイルドピグレッドの荒皮"が入っている。それに…。
(事故が多かったとはいえ、ちゃんとリカバリーして敵もいっぱい倒してたから、その辺は上手なプレイヤ―なんだなぁ。)
「ぎゃ!?」
(…どこか間が抜けてるのは確かだけど。)
森林の木の実トラップにより、頭部にダメージを受けたアンコモンさんは、頭をポリポリと搔きながらボス部屋の入口の安全を確保する。
「コンテンツ時間が残り15分…。まあ間に合うでしょう。えーと…足を引っ張らないように気を付けます。」
「あ、いえ、そんな…。い、いきましょうか!」
カリンは苦笑いしながら、ボスが居ると思われる部屋に入るが…。
入って来たのはカリンとアンコモンさんだけで、NPCの二人は入って来ない。
「あ…しまった……設定を変えるの忘れてた。」
「UnCommonさん!?」
「大丈夫!大丈夫…な筈!」
まさかの二人抜けてのボス戦である。
私達の前に現れたのは、Demon boar…巨大な黒毛の猪だ。見た目通りと言うべきか、真っ先に突進してくる!
「うぉっ!?」
「くっ!」
二人は分かれるように、緊急回避する。そのまま直線で走り抜けた猪は、ボス部屋の出入口にぶつかり…扉に牙の凹みを作る。
……防御向きのキャラクターでも、直撃は無事では済まなそうだ。
「Karinさん!支援する!」
アンコモンさんが使っていた武器の鞭を、杖の武器に切り替える。
そして口笛を吹くと、鳥が4匹か飛んでくる。2匹はカリンの周囲を滞空し、2匹が猪の周囲を飛び回り妨害とダメージを与える。
「…!『響く注声』!!」
手持ちの槍を掲げて、声大きく上げる。道中でも使った、敵を自身に集中させるスキルだ。自分自身のステータス欄に"注視Lv5"が付与される。
猪の周囲を飛んでいた鳥は、消え去りアンコモンの元に戻ってくる。直後、猪はカリンの方へ突っ込んで来る。
「『守り羽』!!!ーーっ!」
「カバーする!」
防御スキル『守り羽』を発動するが、生成されたバリアを貫き耐久値も削られる。しかし、削られた耐久値は即座に回復し、鳥によってバリアが張り直される。
(守り羽が一撃…!?今までの敵とは全然違う!)
「攻撃回復はこっちで対応するから、カリンさんは敵視と防御を!」
「分かりました!」
役割が分かれば、あとはそれに集中するだけだ。可能な限り突進を避けて、定期的に『響く注声』を使い、避けれ無さそうな時は『守り羽』を使う。
一方アンコモンは、カリンが問題なさそうな時は杖を使い、地面から蔓を出して攻撃を加えている。時より、蔓が猪の脚に絡まり、突進速度も落ちている。
猪の体力は着実に削れており、このペースなら時間内に倒せそうだが……。




