ミドルユーザーの予想外
ーーー『UnCommon』がログインしました。
「ん〜〜。さて、今日も作業進めて行くかぁ。」
小屋のような家、ベッドから茶髪の青年アバターが背伸びをして、ストレッチをする。中の人も、軽く伸びをする。服装は厚皮の耐熱エプロンに、滑り止めが着いた手袋、安全靴と生産職の装備と、一目で分かる。
もっとも、装備の見た目だけを変えるドレッサー機能で、それっぽく見せてるだけなので、実際はヘンテコな見た目だ。
「さてさて、新規の依頼は来てるかな?」
自宅を出て、ポストを確認する。外は深緑の森で、涼しげな雰囲気だ。ここは『常夜の樹海』と呼ばれる、第三弾のアップデートで追加させたエリアだ。彼の家があるエリアは、レジデンスエリアという、住居を持てる場所だ。勿論、土地代、管理費、税金諸々発生するが……生産職としては、設備が使えるようになる為、垂涎モノと言える。
ポストの中には、五つのメールが入っていた。三つはシステム。二つはフレンドからのメールだ。
「宛先は、マーグラットと……ギルド『カンブリア』?珍しいな。大規模遠征でもするのかな…?」
マーグラットは、ゲーム始めた頃からの知人だ。図々しい奴だが、腕は確かだし割と義理堅い。今日も装備の修理と、薬品の補充の依頼が来ている。……メール文が『修理。飯。薬。』だけなのも、全額前金払いなのも相変わらずだ。
そんな事よりも、気になるのはギルド『カンブリア』だ。あそこは、結構な新人ユーザーを抱える、探査・育成がメインのギルドだ。一定数の中堅ユーザー、ハイレベルユーザーも揃っているので、ある程度は自給できる筈だが……。
「ミスリルアロー500本、救難煙灯50本。中級ポーション…可能な限り…、などなどね。期限は…結構短いな。まあ、手早い仕事を売りにしているのは確かだけどさ。」
初心者から中級者の遠距離攻撃職、回復職で必要なモノ一通りと言った所だ。ギルドからの依頼である為、金払いも良い。数カ月分の土地代、維持費は気にしなくて良さそうだ。
ついでに、システムからのメールも確認する。一つは今月の維持費等の明細書だ。二つは、今月に発生した生産職ギルドからの公開依頼の一覧だ。最後は、昨今の市場情報だ。
「ん?…なんだこれ…やば…。」
アンコモンが驚いたのは、最後の市場情報だ。何と、初心者向けの製作素材が枯渇しているのだ。市場価格も青天井で、普段の14倍近い。初心者向けの製作素材が枯渇した為か、公開依頼も、かなり増えてる。どこも素材不足と見える。
「カンブリアめ…そういう事か。依頼費用の設定は…弄ってないから、前の定価通りか……トホホ。」
カンブリアに値段交渉を仕掛けたい所だが、ぐっと我慢。これだけ素材が枯渇しているという事は、大量の新規ユーザーが流入したか、何処かが買い占めを行った可能性が高い。後者ならともかく、前者の場合は素材を得るための狩場が不足する可能性も低くは無い。
依頼を間に合わせる為にも、素早い素材集めが重要だ。
(在庫は……結構多めにキープしてたから、そこまでマラソンする必要は無さそうだな。鬼門は〘ワイルドピグレットな粗皮〙だな。ドロップ沼は勘弁して欲しいが…。)
アンコモンは探索着、魔具、杖、採取道具、などを集めて家を出たのだった。




