表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

【六話】ChatGPTからの短編お題⑤『一日だけ“心の声が字幕になる”世界』

5. 『一日だけ“心の声が字幕になる”世界』


突然、全人類の心の声が可視化されるバグが発生。

主人公の秘密がバレる前に、どう動く?


(ChatGPTより)

----------------------


「ごちそうさまでした」

 

 朝食の卵かけご飯と、昨晩の残り物の豚汁を食べ終えた僕は、使った食器をキッチンのシンクへと置いた。ふと、キッチンカウンターの横で、立ったままコーヒーを飲む母を見る。いつのも、疲れた顔をした母だった。しかし、僕は視界にやや違和感を覚え、寝不足のせいかと思い何度か目を擦った。しかし、一向に改善しない風景に、確信を得る。間違いない、視界の端に文字が浮かんでいる。


母【あの卵、消費期限が四日前だけど大丈夫かな】


「あっ!」

僕は驚いて大声をあげた。文字にも、そして消費期限にもだ。その声に振り返った母は、目をまん丸にして僕を、いや、僕の首元あたりをじっと見つめていた。


僕【なんだこの文字】

母【なにこの字幕みたいなの】


「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

突如として現れた謎の現象に、僕も母も語彙を失った。完全に混乱の渦中である。


僕【なんで考えてることが文字に】


母【嫌だわ。これ現実?】


僕【どうなってるんだ?】


母【ありえない】



「母上、僕たちはまだ夢の中かもしれません。一度寝室に戻り眠りませんか」

「それはいい考えだわ、是非そうしましょう」

「では、また後ほどお会いいたしましょう。よき目覚めを」

「よき目覚めを」


 僕と母は各々の寝室へと戻った。僕は制服がシワになることも厭わず、ベッドで横になりしばし目を閉じる。鳥の囀り、電車の音、鳴り止まないスマホの通知音。


僕【眠れるはずがない】


勢いよく部屋を飛び出した僕は、同じく自室から出てきた母と視線が合う。


「「夢じゃねえ!」」


僕は通知音の主である友人のグループチャットを開いた。友人たちの反応を見るに、この現象は我が家だけのものではないようだった。


――おい、おかしいぞ

――お前も?

――俺だけじゃないんか?

――え?みんなそう?

――これやば

――うける

――みんな生きてる?(社会的な意味で)

――なんとか

――初手で死んだわ

――学校誰もいないんたが

――この状況で登校すんな

――強者すぎぃぃ

――今日テスト無理だろね

――俺は休むわ

――おれも!

――おなじく

――いまニュースでやりはじめた



僕は急いでテレビをつけた。女性アナウンサーの取り繕ったような穏やかな声がリビングに響く。


「繰り返しお伝えします。本日、午前七時十二分ごろから、全国各地で“視界に字幕のような文字が浮かび上がる”という現象が確認されている件について、先ほど内閣官房長官が会見を開きました。現時点で原因は不明であり、海外において同様の報告は確認されていないということです。また、健康被害との関連性については『現時点では情報が不足しており、断定はできない』として、国民に対し落ち着いて行動するよう呼びかけています。続報が入り次第、お伝えします」


横にいた若い男性アナウンサーが続ける。


「文字の内容については、いわゆる——ええ……あの、“心の声のようなもの”だという指摘も多く寄せられていますが……現在、政府は因果関係を含め、詳細を調査中だとしています。音声通話、ビデオ通話では反映されず、対面時にのみ視界に文字が表れるとの情報も入っています」




「どうする?」

僕は母に無意味な質問をした。どうするも何も、どうしようもない。母は、こちらの声が聞こえていないようで、こわばった表情で立ち尽くしている。こんなに深刻そうな母は生まれて初めて見た。父と離婚した時ですら、僕の前でここまで深刻な顔はしていなかったと思う。


母【もう……無理かも……】


「母さん?大丈夫?」

「大丈夫じゃない!」


母は三杯目のコーヒーを一気に飲み干した。

「私、会社ではクールなキャラで通してるのよ。一日中、心の中でマツケンサンバ歌ってるってバレちゃうじゃない……」

「そんなこと、どうでもいいじゃん」

「どうでもよくないわよ!あんたこそ、どうでもいいことしか考えてないんだから早く学校行きなさいよ!テストでしょ?」

「いや、行けない」

「なんで?」

「思春期の男子にとって、この上なく悲惨な状況だと思わない?」

「なに?もしかして一日中いやらしいこと考えてるんじゃないでしょうね?」

「そういう奴もいるかもしれないけど、僕は違う」

「じゃあ何?」

「僕、隣の席の青木さんが好きなんだよ。半年も寝かせてるこの気持ちに終止符を打たれたくない」

(こじ)らせる前に終わらせてきなさい」

「無理だ!」

僕は頭を抱えて、これからのことを想像して震えた。



僕【このまま青木さんに好意がバレて、変に気まずくなるくらいなら逃げよう。そうだ、学校を辞めよう。転校するしかない。転校してから……いや、転校している隙に青木さんに恋人でもできたらどうする?それこそ生き地獄じゃないか。そもそも僕は……】


母【こいつ既に拗らせてやがる】




「あ、もうこんな時間」

母の声で我に返り、時計を見ると八時を指している。

「大変!可燃ごみ出さないと!」

「次回にしない?誰にも会いたくない」

「コバエを発生させたくないのよね」


僕と母は見つめ合い、鋭い眼光を互いにぶつける。拳を構え、リビングには緊張が張り詰めた。ちなみに殴り合うわけじゃないから安心してほしい。


「「最初はグー!ジャンケンポン!」」


「っしゃー!」

母のガッツポーズに、僕は項垂(うなだ)れた。

「じゃ、よろしくー」

母の余裕の笑みが癪に障る。僕は舌打ちして玄関に向かうが、後ろからクッションがと母の怒号が飛んできた。

「舌打ちすんな!」

「……すみません」


僕は玄関を出て、階段で一階のゴミ置き場へと向かう。六階から降りるには多少面倒だが、エレベーターのような密室で他の住人と会うよりずっといい。僕が二階まで下りた頃、男女の言い争う声が聞こえてきた。


「だから、違うって」

「もういいから!」

「誤解だ」

「何が誤解よ!」


その不穏な雰囲気は、段々とこちらに近づいてくる。僕は焦った。一度上へ戻るか、このまま駆け抜けて下へ逃げるかの二択で迷い、一瞬足を止めてしまった。この判断の遅さが運の尽きである。


僕【下まで走り抜けよう】


決意しスピードを早めて二階を通り過ぎようとした時、結局僕は声の主である二人にばったり鉢合わせてしまった。知らない人ならスルーしたのに、なんとその二人は小学校の同級生の両親だった。ここ数年顔を合わせることはなかったのに、今日に限って会うなんて。


「「「あ……」」」


こんなに気まずい邂逅(かいこう)があるだろうか。とりあえず挨拶、そうだ、挨拶をしよう。




僕【なに揉めてるんだろう】




僕は血の気が引いた。僕は自身の思考を律することもできない低俗な生き物だ。同級生の母は一瞬で顔が赤くなり、同級生の父は反対に青ざめた。


同級生母【パパのせいで恥かいたわ】

同級生父【お前はいつもヒステリー起こすから】

同級生母【出張が嘘だったなんて】

同級生父【大騒ぎしすぎなんだよ】



もう、これ以上ここに居てはいけないと直感で判断した。僕は急いで階段の踊り場まで走り、二人の姿が見えないことを確認してから叫んだ。


「お久しぶりです!間が悪くてすみません!なかったことにしてください!」

「こっちこそごめんね!お見苦しい所を」

同級生の母は申し訳なさそうに言った。その声色はとてもヒステリーを起こす女性には思えない。食後に走ったからか、知らなくていいことを知ってしまった罪悪感からか、僕の胃はムカムカとしてきた。

 やっとのことで一階のゴミ置き場に到着すると、ちょうどゴミ収集車が到着したところだった。素早くゴミを起き、帰りはエレベーターに乗ろうとボタンを押した。子供の頃、人の心が読めたらいいのにと思ったこともあった。やっぱり読めない方がいい。建前なんてクソくらえと思ったこともあった。やっぱり本音は隠した方がいい。平和はそうやって作られているんだ。僕はやってきたエレベーターを見た。中には女性が一人乗っていた。



僕は忍者のように身を(ひるがえ)し、わずかな壁の隙間に隠れた。テトリスの棒になった気分だった。

「どうぞ!行ってください!」

僕が叫ぶと、女性も叫んだ。

「すみません!延長ボタン押してあります!」

ヒールで駆けていく音がエントランスに響いた。

「すみません!ありがとうございます!」

「いえ!」

誰もいないことを確認し、僕は六階まで戻った。玄関に入り、靴を脱ぐと腹部からギュルギュルと異様な音が鳴った。僕はトイレに駆け込んで腹痛と戦った。これが卵のせいなのか、この状況のストレスのせいなのかはわからない。まだ落ち着かない腹痛を抱えたまま、僕はソファーに突っ伏してブランケットを被った。こうしていれば身体は暖かくなるし、心の声も見なくて済む。母は職場からかかってきた電話を切ると、僕の背中あたりに触れた。

「つらい?今日は在宅ワークだから病院連れて行こうか?」

「いい。外に出たくない」

「わかった。悪化したらすぐ言うのよ」

「うん」


母は寝室へこもり、僕は部屋着に着替え、温かい牛乳を飲みながらぼーっと外を見た。スマホの通知音が鳴り、メッセージを開くと臨時休校の知らせであった。

「青木さん、大丈夫かな。このままずっと会えなかったらどうしよう」


そんな僕の心配をよそに、この奇妙な現象と僕の体調は二日後に解消した。その間、この住宅街で聞こえたのは、外で遊ぶ子供たちの無邪気な声だけだったという。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ