【五話】ChatGPTからの短編お題④『明日死ぬはずの魔王が、今日だけ休みをくれた』
4. 『明日死ぬはずの魔王が、今日だけ休みをくれた』
魔王軍の下っ端である主人公は、突然「1日の休暇」をもらう。
だが魔王の本当の目的は——?
(ChatGPTより)
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土と草のにおいを嗅ぎながら、寝転がって広い空を見上げる。俺はふと、昔読んだ人間界の書物に「魔界は草木も生えぬ瘴気に毒された大地と、不気味な赤い空が広がっている」と記されていたことを思い出した。残念ながら、魔界の大地は今日も草木が豊かに茂り、空はどこまでも澄んだ青色をしていた。
今日、魔族は前例のない「祝日」が与えられている。突然休みになったところで、することはとくにない。虚しいことに、下級兵には遊ぶ金がないのだ。酒場に行くにも、賭博場に行くにも、娼館に行くにも金がいる。金がない奴は、こうして惰眠をむさぼることしか出来ない。
遠くから聞こえる農民たちのくだらない世間話と農具を使う音が心地いい。大きな欠伸をしたあと、誰かの気配がゆっくり近づいてくる。
「そこの犬っころ、暇そうだな」
思いきり尻を叩かれ、あまりの衝撃に俺はベンチから落ちそうになった。振り返ると農村地区の区長が仁王立ちしている。その眼光の鋭さにわずかな殺意を感じ取った俺は、ひょいとベンチを離れ、間合いをとる。
「おいおい、ドワーフの腕力は暴力を振るう為にあるのか?」
「ドワーフの腕力は開墾と鍛冶、あとはサボってる若造のケツを叩く為にある」
俺は溜息をついて、うなだれた。うなだれると同時に腹も鳴る。俺は近くにいた若いゴブリンの女を見つめてクーンと甘え鳴きしてみせた。
女は「かわいい!」と叫んで俺の顔を撫で回し、パンとチーズを持ってきてくれた。区長は俺の襟首をつかんで、思い切り顔を寄せて睨んでくる。
「クソガキ、人狼の尻尾は女に振る為にあるのか?」
「いいえ、違います」
俺は必死に顔を背ける。怖い上に息も臭い。
「それ食ったら芋の収穫しろよ」
「でも、今日は休みなんですわ」
「知るか、農村地区に休みはねえ。下級兵も働け。巡回がないなら芋掘りと堆肥撒きだ」
「はい……」
毒息から解放された俺は、三分で腹ごしらえを済ます。農村地区でいつもタダメシにあやかっている以上、区長に楯突くことは出来ないのだ。顔の毛についたパンくずを払って芋畑へ向かうと、子供たちが泥だらけで走り回っている。
「あ!狼さん!」
「もふもふー!」
「尻尾にリボンつけてあげるね!」
子供たちに囲まれ、もみくちゃにされる。
「お前たち、次は納屋と麦畑の調査を命ずる」
「「「はーーーーい!!!」」」
散り散りになった子供たちを敬礼で見送ったあと、芋掘り作業に取り掛かる。フォーク型の鋤でどんどん掘り起こしていくと、手のひらほどの大きな芋が出るわ出るわ。思わず四足歩行で駆け出したくなるほど広大なこの芋畑で、俺はあと何千回同じ作業をするんだろうと考えたら、少し目眩がした。
「おや、今日は兵隊さんは休みだと聞いてたけど」
芋を選別していた農夫が顔を上げた。
「いやあ、ダラダラしてたら区長に殺されかけた」
「ハッハッハ。最近は生産量が多くてな、人手が欲しいのよ」
確かに、どの畑も収穫された野菜が山のように積まれていた。
「今の魔王様は随分と農村地区に目をかけてくださった。亡くすには惜しい御方だ」
「開墾も進んで規模もでかくなったしな」
「その分の人手不足、王都に催促しているんだがね。区長も頭を抱えているよ」
「鉱山に移されたオークたちを呼び戻せば、力仕事も楽になりそうたけど」
「オークが居れば作業は助かるが、奴らは他種族との共生には向いとらんからの」
「確かに。年々会話が成り立たなくなってきてるしな、知能を捨てて身体能力に全振りしてきてる感じかある」
「魔王様も大昔は何百年と生きたのに、最近は戴冠から数十年と経たず新しい魔王様を迎えるしな」
「疲れてるんじゃない?」
「もしくは魔族の退化かの。最近の子供たちは魔力も少ないし、長寿種族と言われたら奴らも二百年も生きなくなっている。人狼もな?」
「今や人狼は俺一人。お陰様で危険な任務は回ってこないが絶滅は待ったナシ!」
「割と前向きじゃないか」
「血統とか種族の誇りとかあんまり気にしてないんで」
「最近の若者は……」
農夫の嘆きを聞き流し、俺はひたすら芋を掘り上げた。飢えた子供はいない、種族間の内戦の話もない、今日も魔界は呆れるほどに穏やかだった。
◆
魔王城の執務室にて、鹿のような仮面をつけた男が書類に目を通している。その男の影が一瞬揺らめき、そこから這い出てきたなにかに、男は視線を落として声を掛ける。
「帰ったか。ご苦労だった」
従者らしき人物は頭を垂れる。
魔王は側仕えを下がらせて、自身の仮面を外す。
「はあ、この仮面は肩が凝るな。こんなのが魔王の象徴なんて、やってられない」
その仮面の下の素顔は人間の男であった。目元や額には深く皺が刻まれ、髪には白髪が交じっている。
「魔王様、任期お疲れ様でした」
「貴殿にも迷惑をかけたな。それで明日、私の死体はどこに飾るんだ?」
「魔王城の大広間に」
執務室の横にある隠し扉を開けると、そこには魔王の死体の精巧なレプリカが置いてあった。
「いやはや、不気味だな」
「昔からの慣習ですので。退く時は命を捧げるのが新たな魔王への最大の賛辞になられます。もちろん貴方様ご自身は人間界にお送りしますので」
魔王は隠し扉を閉じ、従者とソファーに掛けた。
「で、祝日の王都の様子はどうだ?」
「あちこちで小さな騒ぎはあったものの、大きな事件事故はないとのこと。民衆にも活気がありとても良い雰囲気でしたよ」
「やはり治安は大幅に改善している」
「凶暴性の高い種族や協調性に欠ける種族を山岳や荒野に隔離したのが吉と出ましたね」
「治安調査として公務に携わる者のみ祝日を設けてみたが、息抜きとしても役立ちそうだ」
「今後、祝日を増やせるよう検討します」
「そういえば農村地区は収穫期に入ったが、今年はどうだろうか」
「はい、今年の収穫量は昨年と比較して二倍になっているそうです」
「長年の土壌改善の成果がやっと出たな。人手不足の件は予算委員会で審議中だ」
「奴隷でも連れてくるのですか?」
「いや、農業用の魔道具を作らせる。草刈り機、耕運機、収穫機……」
「それはまた近代的な」
「人間界より天候が安定しているのも良いな。あと数年もすれば、人間界に輸出できるようになる。あとの成果は後任に譲ろう」
「その次期魔王様は午後七時頃の到着予定です」
「手付かずの事案が山ほどあるから、引き継ぎが申し訳ないな」
「仕方ありません。治安改善、食糧の確保は前魔王との和平合意で最優先事項でしたから。成果は十分かと思います」
「そう言ってくれて嬉しいよ。しかし、人間による魔界統治は始まったばかりだ」
「そういえば、前魔王はどこへ?ここ数年見かけません」
「農村地区でだらだら過ごすと言っていたな」
「人狼は目立つでしょうに」




