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83話

 リリアーナ様が帰られてから暫く経った頃、私はオリビア様から一通のお手紙をいただいた。

 そのお手紙には予想通り、クリス様との婚姻が決まったと書かれていた。

 あの後、オリビア様は手を尽くされ、お兄様を説得されたそうだ。

 その中でも我が国の元国王、つまりは現在北の塔に幽閉されているルイス様の異母兄の妻であった前王妃であるオリビア様のお姉様の口添えが大きかったそうだ。

 勿論クリス様の功績も大きいのでしょうが、あのシスコンである国王は姉妹二人から攻撃されたら従わざるを得ないのは手に取るように伝わってきて、私は思わず一人で吹き出してしまった。

 そしてその手紙にはルイス様と一緒に結婚式に出席して欲しいとも書かれていた。

 正式な招待状は後ほど王室の方へ送ると書かれていたが、私はその手紙を持ってすぐにルイス様の元へ行き

「オリビア様からお手紙が届きました」

 と喜んでお見せした。手紙を読まれたルイス様もとても喜ばれていたが

「なんだ、こちらの国に一旦二人で戻ってくると思い部屋も全てそのままにしておいたのに」

 と仰った。それを聞いた私は

「お二人が幸せならそれで宜しいではありませんか」

 と返すと

「まあ、それはそうなのだがクリス殿にはまだまだ沢山、知恵を貸してもらおうと思っていたんだが」

 と残念がっていた。


 結婚式は二年後と書かれていたがそれほどの準備期間を要するということは、かなりの規模の結婚式ということかしら? とルイス様に聞くと

「ただ単に一日でも長く自分の手元に置いておきたい国王の意向だろう」

 とルイス様が仰ったので私も一緒に納得してしまった。

 オリビア様は一日でも早く結婚したいはずなのにお可哀想に思えたが、これがせめてもの妥協点なのかもしれないとも思った。

 そしてその間に、私たちには今までで一番の喜びが訪れた。それは王子の誕生だった。

 気の早いルイス様は次も男の子が生まれるまで頑張らなければと、こわいことを仰った。まだ一人目が生まれた直後だというのに。

 尤もそれには理由がある。それは王族としての地位と公爵としての爵位を保持している状態なのでもう一人に公爵位を継がせるためでもあるからだ。

 そうはいっても五ヶ月後にはオリビア様の結婚式が控えている。その日は必ず出席をして直接お祝いを申し上げたい。なのでそれまでは我慢をしてもらいたいのだが、無理のような気がしてきたのは言うまでもない。


 そうして無事? に五ヶ月が過ぎ私たちは北の国へと結婚式に出席するために向かった。

 可愛いそうだが王子は乳母とお留守番だ。

 そして北の国に到着するとそこにはリリアーナ様が素敵な男性と共に出席なさっていた。すると彼女は隣りにいる男性を連れてやってきた。

 私は思わず心の中で『流石はリリアーナ様。早速、有言実行なさったのね』思った。

 そして私とルイス様に

「わたくしの婚約者のイエール・ノーマン公爵様よ」

 と紹介してくださった。私たちは互いの紹介と挨拶を終え、そしてリリアーナ様に出産のお祝いのお礼を言うと、私の耳元に来て

「アンリ様が七冊目に書かれた小説にあった『自分が愛してお付き合いするより愛されてお付き合いする方が幸せなのかもしれない』というフレーズがわかったわ」

 と仰った。それを聞いた私はあの日のように開いた口が塞がらなかったのは言うまでもない。


 そして豪華な結婚式は始まり、今までで一番美しいオリビア様がそこにはいた。

 そして一番幸せそうな彼女はクリス様と共に微笑み合っていた。 

 あのクリス様でもこんな嬉しそうな表情をなさるのだとそこに愛を感じて安心をした。そしてそれをルイス様に言うと

「クリス殿はずっとオリビア嬢を愛していたよ」

 と仰った。やはり男同士感じるものがあったのかしらと理解した。

 でも、ただ一人不機嫌そうなオリビア様のお兄様がいたことは触れないでおこう。

 その後、私の姿を見つけたオリビア様は私に抱きついて

「遠いところ、来てくださってありがとう。こんなに幸せで怖いくらいよ」

 と仰った。それを聞けた私も幸せを感じた。

 こうして、とても豪華な結婚式が始まった。

 因みに南の国からは国王の代理で王子が出席していた。

 王子は先日のお見舞いのお礼をルイス様と私に言われてから

「父上もあれからすっかり元気になりましたがまだ完全ではないので念の為、今回は私が代わりに出席させていただきました」

 と仰った。


 こうして色々あったがそれぞれが幸せを見つけ、今は平凡な毎日を送っているが、そんな平凡で普通の日々が本当は何よりも幸せだという事を私たちは知っている。

 だからこの平凡で普通の日々がいつまでも続きますようにと願わずにはいられなかった。


 そういえばただ一人、平凡で普通の日々が送れていない人がいた。

 ラナウド伯爵が結婚なさったお相手のご令嬢は、かなり気の強いと有名な方で、毎日彼女の尻に敷かれ、嘆いていると聞いた。

 しかしそれもまた考えようによっては幸せなのかもしれない。

 彼にとってはそれが普通の日常となっているようだし。

 それにもうすぐ子供も生まれるというのだから尚更だ。やはりそれは彼にとっては、普通の幸せというものかもしれない。

 そしてルイノール子爵にも、もう一人お子様ができたと聞いた。

 私は心の中で『これでエマ先生は私の子供と合わせて三人の孫が出来たということね』と温かな気持ちで呟いた。

 だけど今のルイス様を見ているとあと何人増えるのかしら? と僅かな不安? がよぎった。


 



 






             



                  


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