表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/85

80話

 その後、帰国されたオリビア様からお手紙が届いた。

 そこには全てが順調に進んでいると書かれていた。

 それを読んだ私は『まずは一安心だわ』と喜び『後でルイス様にも報告しなければ』と思いながら私室で書きかけのシリーズものの小説を書いていると、リリアーナ様がおいでですと声がかかった。

 部屋へ迎え入れると、彼女はラナウド伯爵のことを色々と聞いてきた。

 流石にこれほどあからさまなのだから私もリリアーナ様のお気持ちは理解したが、突然

「アンリ様の従兄ということはお父様かお母様のご兄弟の息子さんということですのよね」

 と言われ、そこは上手くかわした。

 それよりも厄介なのは、リリアーナ様がもう一度会いたいということだった。だけど私からリリアーナ様の話しをするのはラナウド伯爵に失礼だと思い、まずはエマ先生に相談することにした。

 そしてエマ先生のお屋敷へと行き、リリアーナ様のことを伝えてから

「私は来週からルイス様と公務のため南の国へと行くので、往復を考えると半月ほど留守にしてしまいます。もしリリアーナ様が尋ねて来られたら宜しくお願いします」

 と頼んだ。

 実は私たちの結婚式には南の国の国王、つまりはルイス様の伯父様がいらっしゃる予定だったが、急遽、国王の息子である王子が出席することになった。

 理由を聞くと、ご病気で倒れられたということだったので、ルイス様はとても心配をされていた。

 伯父様といえば、ルイス様のお母様が亡くなられてからずっと気にかけていただいているお方だった。

 今回の訪問は隣国との親善が目的となってはいるが、本当はルイス様が伯父様のお見舞いをしたいとの意向も働いていたのだ。

 こうして私は留守の間のリリアーナ様のことをエマ先生にお願いをして王宮へと戻った。

 そして私とルイス様は南の国へと向かう日の朝、リリアーナ様に

「何か相談事があればエマ先生にお願いしてありますので訪ねてください」

 と言い残し、旅立った。

 この旅はルイス様との初めての遠出となった。それなのにシリーズものの執筆を急がなくてはいけなかったため、寝不足のまま出発することになってしまい、馬車の中では早々に眠ってしまい申し訳ないことをしてしまった。それでもルイス様は怒るどころか気を使い、そのまま寝かせてくれたのだった。

 途中、休憩を取りながらの旅だったが、その間も寝ている私を起こさないようにしてくれた。そして片道五日間をかけて、ようやく南の国へと着いた。

 ルイス様は挨拶もそこそこに伯父様のいる部屋への案内を優先してもらい、久しぶりとなる再会を果たした。

 伯父様はそれは喜び、周囲の話しではずっとベッドで横になったままだったのに、今は起き上がり、ルイス様と手を握り合っていた。そしてルイス様は私を呼ばれ、

「伯父上、彼女が私の妻となったアンリです」

 と紹介してくれた。私はルイス様の隣りで

「お初にお目にかかります。アンリと申します。お身体お辛くありませんか?」

 と尋ねた。すると伯父様でもある国王様は

「よく来てくれた。ありがとう、ルイスのことを宜しく頼む」 

 と仰ってくれた。そしてこれ以上はお身体に障ると思い、一旦二人共退出をした。

 王子によると、お医者様は暑さで体調を崩したところ、お食事を取れなくなってしまい衰弱していったという。確かにこちらの国は私たちの住んでいる国と比べたらかなり暑く感じた。

 その夜は王子が歓迎パーティを開こうとしてくれたが、ルイス様は国王がお元気になられるまではと辞退なさった。それでもルイス様がいらしてからは、少しお食事も取れるようになったようで、顔色も私たちが着いた時よりはだいぶ良い気がした。


 こうして短い滞在ではあったものの、体調が回復に向かっているようで安心したルイス様は王子に挨拶を済ませ、最後に伯父様の元へ行き、国に戻ることを伝えた。 

 伯父様は次に会う時までには元気になると約束され、会えて嬉しかったと仰ってくれた。

 そうして私たちは帰路に着いた。

 まさかこんなにも短期間に思いもしないな事が起こっているとも知らずに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ