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74話

 結婚式の準備に追われながらも、充実した日々は続いていた。

 そんな中、すっかり傷の痛みもなくなった私は、先日ジョンに渡した農薬のことが気になり、伯爵邸に様子を見に行きたいとルイス様にお願いをした。

 あの日以来、かなり過保護になってしまわれたルイス様には許可を取らなければ、外出出来なくなってしまった。でも護衛を付けて行くならと渋々許可を出してくれた。


 そしていざ外出しようとしたらオリビア様が

「今日はアカデミーがお休みだから私もご一緒してもよいかしら?」

 と仰ったので、私は

「構いませんが、ブドウの木の様子を見に行くだけですよ」

 と言うと

「だったらクリス様もお誘いします、農薬が効いているか気になさっていたので」

 と言われ、クリス様を呼びに行かれてしまった。そうこうしていたらリリアーナ王女まで来てしまい『このメンバーで伯爵邸に押しかけたら皆びっくりしてしまうわ』と思ったが、止められるはずもなく皆さんをお連れして向かうことになってしまった。

 先触れは出したが、まさかこんなに大勢で来るとは思っていないだろう。


 伯爵邸に着くと予想通り皆大慌てでお茶の準備をしようとしたが、私はブドウの木を確かめに来ただけなので、果樹園の方へ直接行くのでジョンに後から来るように伝えて欲しいと告げて果樹園へと向かった。

 たぶんクリス様はそれにしか興味を持たれないはずだから、と笑いそうになったことは言わずにおこう。

 そして果樹園に着き、農家の人たちに案内されながらブドウの木を見て回っていると、ちょうどそこにジョンもやってきて

「姉上、ありがとうございました。おかげで随分とブドウの木も回復しました」

 と言ってくれたので、私は心から安心した。

 そしてクリス様も

「これならもう大丈夫だ」

 と言ってくださった。


 私は伯爵邸の使用人たちが緊張していたのでこのまま帰ろうとしたが、継母から是非皆様に寄って欲しいと言われたとジョンから聞き、それならと少しだけお邪魔することにした。

 屋敷に入ると継母が丁重に皆さんをおもてなししてくださり、意外な一面を見た。そして深々と頭を下げて

「この度は皆様のお力添えで伯爵領が救われました。本当にありがとうございました」

 とお礼を述べた。その後、和やかな雰囲気で軽く談笑をしていたら、継母に呼ばれ、隣の部屋に入ると今までのことを謝られた。

 あまりに急だったので驚いていたが、継母は私にずっと謝りたかったと言った。

「もう気にしていません。それより、これからジョンとこの伯爵領をお願いします」

 と言うと

「何とお礼を言ったらいいのか」

 と本当にすまなそうにされていた。

「今なら少しだけですが、あの時受けた仕打ちがなんだったのかわかる気がします」

 と言って

「父を思うからこその嫉妬からだったんではないですか?」

 と言ってから

「亡くなった人には勝てません。だって良いことしか思い出せないのですから」

 と話した。そして

「父は新しい家族も愛していました。だからこそジョンが生まれたのだし、私の目から見てもとても大事にしていると感じていました」

 と伝えた。すると継母は

「そうね、気づくのが遅すぎたわね。あの人が亡くなってからずっとあとになってわかったのだから」

 と呟いた。そして晴れ晴れとした表情で

「結婚式、楽しみにしているわ」 

 と言ってくださった。  

 なんだか今までのわだかまりが嘘の様に薄れた。

 その後、私たちは寛ぎながらお茶をいただき、伯爵邸を後にした。

 帰りの馬車の中で私は皆さんにお礼を言って、気づけば王宮へと着いていた。

 馬車を降りようとしたらどこから現れたのかルイス様が手を差し出してくれながら

「このメンバーで行ったのか?」

 と驚いていたが、私はいつから待っていたのかそちらの方に驚いていた。


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