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《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢  作者: ヴァンドール


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71/85

71話

 公爵邸に戻った私は、出版社で今日起こった出来事を手紙にしてルイス様に報告することにした。

 さぞかし驚かれるだろうと思い、それを目の前で見られないのを残念に感じた。

 何より報告しなくてはならないことは、今まで伏せてきたアリーシャ・ポートランドが私であるとリリアーナ王女に告げてしまったことだった。ラミナさんにも言った通り、もう隠す理由はないので、これからは積極的に活動をしてみようと思っていた。

 出版社が望むサイン会にも応じて、少しでも出版社や読者の方々にお礼がしたいとも思った。

 そう思えたのは、私がサインをした本を手にしたリリアーナ王女の表情を垣間見た時だった。

 あんなにもプライドの高い方でさえ、あのような表情をなさってくださるのなら、それだけで私も嬉しかった。だから、これだけは伝えなくてはと。

 そうして書き上げた手紙をロザリーさんに託してから、私は今取り組んでいるシリーズ物の続きを書き始めた。


 それから三日後、ルイス様から先触れがあり、リリアーナ王女の送別会が二日後に内輪だけで行われるので参加するようにとのことだった。

 私は早速プレゼントとして、最新刊の本にサインとお手紙を挟んで渡すことにした。

 そして当日。(内輪だけ)と書いてあったので、仰々しいドレスではなく、普通のドレスで王宮へと向かった。

 馬車を降りると、そこにはルイス様が待っていてくださり、私のことをエスコートしてくださった。

 ルイス様は私の顔を見ると、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。


「随分と久しぶりのような気がするな」


「はい、私も同じことを思いました」


 そして先日の手紙の話になり

『物凄く驚いた』と仰った。


「そのおかげで色々な厄介ごとから免れることができたようだ」


 そう感謝されてしまった。

 そして部屋へと入ると、既にリリアーナ王女、オリビア様、クリス様が待っていた。


「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした」


 するとオリビア様はいつもの笑顔で答えてくれる。

 

「いいえ、わたくしたちが少し早すぎただけなので気になさらないで」


 リリアーナ王女は黙ったままだった。それならと私の方から声をかけてみた。


「リリアーナ王女殿下、先日は失礼いたしました」


 すると彼女は少し顔を赤らめた。


「こ、こちらこそ失礼したわ」


 オリビア様とクリス様には前もって、私の送った手紙の内容を既に伝えてあるとおっしゃっていたので何も聞かれなかった。


 和やかとまでは言えないが、なんとか送別会は始まった。そしてそれぞれのグラスにワインが注がれ、ルイス様がグラスを高く掲げた。


「それではこれからの友好を祝してリリアーナ王女に乾杯!」


 そして、皆も同じくグラスを掲げて乾杯をした。

 それを一口飲んだリリアーナ王女が思わず言葉を漏らした。


「とっても美味しい、深い味わいだわ」


「流石はリリアーナ嬢、このワインは樹齢百年のブドウの木から造られた物なんです」


 とルイス様が説明した。

 すると今度はクリス様が話される。


「樹齢の高いブドウの樹は、根が深く伸び、土壌のミネラルをより多く吸収するため、ワインに独特の風味と複雑さをもたらすのです。

 しかし、百年もの樹齢の木からはわずかな量の果実しか取れないのです」


 そうしてワイン談義に花が咲き、だんだんと和やかな雰囲気となったところで、私はリリアーナ様に話しかけた。


「実はリリアーナ王女にお渡ししたいものがあるのです」


 と、言って持って来た最新刊の本をお渡しした。

 それを遠慮がちに受け取られた王女様は、その本に書いた私のサインを見ると、今度はご自分で買われた最新刊を私に手渡した。


「この本にもサインをお願い」


 思わず『本当に可愛らしい方だわ』と思ってしまった。

 そして私の挟んでおいた手紙を大事そうに見つめ、改めて本の間にしまわれた。


 それを見ていたオリビア様は、頬を膨らませた。


「ずるい、わたくしにもその本ください。同じ本ですもの、二冊も必要ないでしょう?」


 それを聞いたリリアーナ王女は、本を二冊とも後ろに隠された。


「ご自分で買われたらいかがです?」


 周りはそんな二人を微笑ましく見ていた。

 こうして送別会は滞りなく終わった。


 そして次の日の朝、リリアーナ王女が自国に戻られる前に、私はルイス様と一緒にお見送りに駆けつけた。

 

 遠ざかる王女に向かい、はしたないとは思ったが、大きく手を振った。


「リリアーナ様! お元気で!」


 するとリリアーナ王女も大きく手を振り返してくれた。

 王女様の馬車が見えなくなると、ルイス様はポツリと一言仰った。


「やっと嵐が過ぎ去ったな。いよいよ私たちの正式な婚約に向け、準備をしなくてはな」


 それを隣で静かに聞いていた。

 



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