7話
侯爵邸に戻ると早速に旦那様がやって来た。
「それでどうだった?」
「きちんと口外はしないようお約束はしていただきましたが、王宮はいくらなんでも不味いと仰ってました」
と言うと、確かにご自分でもそう思われていたようですが、どうしてもとマリアさんにせがまれて断れなかったようです。
「そういえばそのエマ先生という方には娘さんがいるのか?」
「どうしてそんなことを?」
「いや、昨夜王宮で隣りにいた女性がだな、いや、なんでもない」
何だか歯切れが悪くて苦笑してしまった。
そんな会話をしていると、怖い顔をしたマリアさんがやってきた。
「随分と楽しそうね」
「分かってるだろ? 私がこんな外見の女性に興味がないことくらい」
するとマリアさんは満足気に微笑んだ。
「はいはい、承知致しております。では私はこれで失礼致します」
扉を出るとリサが控えていて、私室に戻りながら悔しそうに言う。
「旦那様に、その眼鏡と前髪をとったお顔、見せて差し上げたいです」
私は苦笑した。
「リサが、分かっているだけで十分よ」
私室に戻るとリサに叱られた。
着替えをする時は声をかけてくださいと。
私のドレスは普段使いの物ばかりだから一人で大丈夫よと言うと、それでも声をかけて下さいと言われてしまった。
どうやら今朝、一人で着替えて出かけたのがいけなかったのかしら? と思いながら、何だかこちらに来てから全てが変わってしまい、まるでお父様が生きていらした時のようだわと懐かしく思い出していた。
その後、私は執筆活動に励みながら、先日ラミナさんが口にした貴族らしき作家さんの書いた本を手渡されたのを思い出し、鞄の中から取り出した。
そして、休憩を取ってる時にどんな内容なのかと読み始めた。
『何々、題名は{公爵令嬢の裏事情}もしかして本人が書いてたりして』
と心の中で呟きながら読み進めた。
しばし、集中してあっという間に読み終えた。
短編小説なのだが、とても読み応えのあるものだった。素直に面白いと思えるもので、思わず主人公に自分がなった気分にさせられた
『勉強になるわー』
と一人言を言いながら、自分の作品に取り掛かかった。
暫くするとリサがお茶のご用意をしましたが、いかがなさいますかと聞いてくれた。
「ちょうど喉が渇いていたの。ありがとう」
「いつも何か書かれているようですが、小説ですか?」
「暇つぶしに書いてるだけよ」
「出来上がったら是非読ませてください」
「駄目よ、恥ずかしくて人に見せられるようなものではないもの」
「残念です!」
ひとことだけ言われた。
何だかリサとの会話は心が和むわ。と言うと、顔を赤らめて喜んでくれた。
そして私は、先ほどまで読んでいた小説をリサに見せた。
「これでも読んでみる?」
「やだー奥様もこの本読んでいるんですか?」
そしてリサはこの作家の本は全て読んだと言って、その為に働いているようなものですと、冗談か本気か分からない受け答えをした。
私は心の中で思った。
『そうかーそんなに人気の作家さんなんだ』
そして私も頑張らなくてはと気合いを入れてまた書き始めた。




