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《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢  作者: ヴァンドール


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67話

 数日後、ジョンが公爵邸に訪ねてきた。

 私がなぜこのお屋敷で暮らしているのかは、エマ先生のご子息であるルイノール子爵から大体のことは聞いているという。彼は少し焦ったように話し出した。

 

「父上が護ってきた伯爵領がこのままでは凋落してしまいます」


 私はジョンに詳しい状況を聞くと、かなりの数のブドウの木が壊滅状態だという。


 伯爵領の収入源の三分の一はワイナリーからの税収なので、確かにこれは深刻な問題だった。


 この事態は、やはりクリス様が取り組まれているフィロキセラという害虫の被害で間違いないと思った。


「ジョン、今、国を挙げてこの問題に取り組んでいます。議会でもちょうど、その対策が話し合われているところなの」


 そして私はジョンに、その解決策は見つかりはしたが、肝心の台木が足りてないのでもう少しだけ待ってほしいと告げた。

 そしてその台木が手に入った時にすぐにでも対応ができるよう、ブドウ農家の人達を集めてクリス様の所へ連れて行くから、対策のための接ぎ木の仕方を覚えるようにと指示をした。


「姉上、ありがとうございます。少し気持ちが楽になりました」

 

 そう言って、僅かにホッとした様子を見せた。


 私はルイス様に、手紙を書いた。

『どうかクリス様の元で伯爵領の農家の人達に接ぎ木のやり方を教授してほしい』という旨の手紙だった。

 そして私はジョンお願いをした。


「どうかお父様の護ってきた伯爵領を、今度は貴方が頑張って護りぬいて」 


 すると、ジョンは私に感謝の気持ちを伝えてくれたあと、決意のこもった眼差しで言った。


「全力でやれることをやります」 


 すっかり逞しくなったジョンを、私は誇らしく感じた。

 そうして彼は公爵邸をあとにした。


 残された私は、本当はなんの血の繋がりもないジョンに申し訳ない気持ちになっていた。


 ジョンは私のことを本当の姉だと信じて慕ってくれているのに、と。

 でもこれは育ててくれた父やその妻が望んだことでもある。


 私とエマ先生は話し合って、このことは墓まで持っていこうと決めたことだった。

 だからせめて恩返しができるなら、少しでもジョンの手助けをしなければと強く思っていた。


 その後、ルイス様はジョンのことを受け入れてくださり、伯爵領の農家の人達に色々なアドバイスをしてくれているそうだ。


 早くこの問題が解決することを願いつつ、私はふと思ったことがある。

 この害虫の被害は我が国だけではない。多くの人達が困っているのだから、対策を本にして各国にその本を流通させれば、どれだけ多くの人が助かるか。

 クリス様の研究はフィロキセラだけではなく、多くの害虫駆除にも精通している。だったらそれらをまとめて発表できないかと。

 本とは小説だけではない、そういう専門書があったなら、多くの人の助けになる。

 私は早速ルイス様とオリビア様、クリス様に相談をすることにした。


 その夜、宮廷で四人揃っての夕食が叶った。私は昼間に思いついた害虫駆除や、クリス様が取り組んでこられた実用性のあるものを専門書として出版したらどうかと提案してみた。するとクリス様がおっしゃった。


「ある程度のことは書類としてまとめてあるが、それを読んでもきっと私にしか分からないと思います」


 するとオリビア様が得意そうに答えた。


「私だったらそれをわかるように文字に起こせてよ」

 

「では、完全に解明できたものだけでも発表しますか」

 

「世の中に役立つ研究結果がたくさんあるのに、クリス様ったら、ご自分が納得するとすぐに次の研究に取り掛かってしまうから、わたくし、いつももったいないって思っていたのよ」 


 するとルイス様はニヤリとした顔で言った。


「それを発表して専門書として各国に流通できたら、きっとオリビア嬢とクリス殿の結婚の後押しになるな。

 オリビア嬢の兄上も認めざるを得ないだろう。もっとも、本心ではクリス殿のことは認めているように感じたがな」


 と仰った。そしてこれが一番大事な事だと言った。


「まずは本として出版する前に、今は特許制度があるのだから自国の特許法に従って届け出を済ませてからだ」


 するとオリビア様が自信満々で返した。

 

「それは私に任せて」

 


 その後、オリビア様はその作業をしながらピアノのレッスンと忙しくなさっていたが、クリス様は相変わらず研究一筋だった。

 なんと対照的な二人なのかしらと、私とルイス様は笑い合った。


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