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《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢  作者: ヴァンドール


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61/85

61話

 全ての誤解が解け、私は早速公爵邸へと連れ戻されてしまった。

 先日お屋敷を去ってからまだいくらも経っていないので、なんだかばつが悪く苦笑していたら、使用人の皆さんは変わらぬ温かい眼差しで迎えてくださった。


「お帰りなさいませ、お待ちしておりました」


 そしてロザリーさんがにっこりと微笑む。


「いずれはお戻りになると信じていましたが思っていたよりもお早いお帰りで安心しました」


 私は胸の奥がじんと温かくなり、ぺこりと頭を下げた。


「本当に、お騒がせしました」



 その日のうちに、エマ先生にもきちんと報告をしなければと思い、早速先触れを出した。


 二日後、私はエマ先生のお屋敷を訪れ、ルイス様が私の部屋を訪ねてくださってからの一連の出来事を、包み隠さずすべて話した。

 話し終えると、エマ先生は案の定という表情で、にんまりと微笑まれた。


「だから、前にも言ったでしょう? 陛下も貴女を好ましく想っているって」


「……はい」


 返す言葉もなく、私は苦笑するしかなかった。

 そして、今は再び公爵邸で暮らしていることも伝えた。


 すると、エマ先生がふと思い出したように言った。


「そういえば、ラナウド伯爵、わたくしの甥でもあるのだけれど。彼には、あなたが公爵邸に戻ったことを伝えておくわ」


 その言葉に、はっとした。

 そういえば、エマ先生があの部屋を訪ねて来られたきっかけは、ラナウド伯爵だった。


 気晴らしに観劇へ付き合ってもらって以来、伯爵とは顔を合わせていない。

 あの日のことは、やはり誤解を招いてしまったようで、そう思うと、少し胸が痛んだ。


『今度お会いする機会があったら、きちんとルイス様のことを伝えなくては……』



 報告を終え、公爵邸へ戻ると、ちょうど目の前にルイス様が現れた。


「エマ殿の屋敷へ行っていたそうだな」


「はい。きちんとご報告して参りました」


 そう答えると、ルイス様は少し含みのある笑みを浮かべた。


「私とのことも、すべて伝えてくれたのかな?」


「もちろんです。ありのままを」


 その言葉に、ルイス様は満足そうに頷かれた。


 しばらくの間、他愛ない話をしていたが、突然、慌ただしい足音と共に従者の方が現れた。


「陛下、直ちに城へお戻りください。先王が北の塔から脱走し、東の国へ向かっているとの報告が入りました」


「何だって!」


 ルイス様の声が低く響く。


「手助けした者がいるということか!」


 その表情には、はっきりとした怒りが浮かんでいた。


 そして私の方を振り向き


「すまない。急ぎ城へ戻らねばならない」


 と告げられた。


「どうぞお気をつけて!」


 そう言って見送ると、思わず小さく呟いてしまった。


『また、お忙しくなってしまわれるのね……』


 それを聞いたロザリーさんが、優しく微笑んだ。


「大丈夫です。陛下は、どのようなことがあっても必ずお戻りになります。今度こそ、安心してお待ちください」


 私は少し驚いて


「ごめんなさい、聞こえてしまいましたか」


 と言うと


「お気持ちはお察しいたします。どうぞ、お気になさらずに」


 と、再び優しく笑ってくださった。


 その笑顔に、私は静かに頷いた。

 今度こそ、信じて待とう。そう、心に決めながら。



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