61話
全ての誤解が解け、私は早速公爵邸へと連れ戻されてしまった。先日お屋敷を去ってからまだいくらも経っていないのでなんだか、ばつが悪く苦笑していたら、皆さんは温かい眼差しで出迎えてくださり
「お帰りなさいませ、お待ちしておりました」
と言ってくれた。
そしてロザリーさんは
「いずれはお戻りになると思っていましたが思っていたよりもお早いお帰りでよかったです」
と言われ私は何故そう思われていたのか分からないまま
「お騒がせしました」
と答えた。そして早くエマ先生へも報告をしなければと思い、その日のうちに先触れを出した。
二日後、私はエマ先生のお屋敷へと行きルイス様が私の部屋を尋ねて来てくださってからの一連の話しを詳しく伝えるとニンマリ顔でエマ先生は
「だから前にも言ったでしょう?
陛下も貴女を好ましく想ってるって」
と言われてしまった。私は返す言葉もなくただ苦笑していた。そして今は元通り公爵邸で暮らしていることも報告した。
そしてエマ先生が突然
「ラナウド伯爵、まあ甥でもあるのだけれど彼には公爵邸に戻ったと伝えておくわね」
と言われた。続けて
「流石に一人暮らしの貴女の住まいは教えることは出来ないと言っておいたわ」
と言われた。
そういえばエマ先生が一人暮らしの私の部屋を訪れたきっかけはラナウド伯爵だったことを思い出した。
伯爵とは気晴らしの為、観劇に付き合ってもらってからは会っていない。やはりあの日のことは誤解させてしまったようで気が引けた。
今度会う機会があったらきちんとルイス様のことも伝えなくてはいけない。
その後報告を終えた私は公爵邸へと戻ると、目の前にルイス様が現れて
「エマ殿の屋敷へ行っていたそうだな」
と言われたので
「はい、きちんと報告して参りました」
と答えると
「私とのことも全て伝えてくれたのかな?」
と仰ったので
「勿論ありのままをお伝えしてきました」
と言うと満足気にしていらした。
暫くルイス様と最近あった色々な話しをしていると、突然、ルイス様の従者の方がいらして
「陛下、直ちにお城にお戻りを。先王が北の塔から脱走して東の国に向かっているとの報告がありました」
と言った。ルイス様は
「何んだって! 手助けした者がいたということか!」
とかなりの勢いで怒っている。
そして私に
「すまない、そういうわけなので至急城に戻る」
と言われた。私は
「お気をつけて」
と言って送り出した。そして思わず独り言で『また忙しくなってしまわれるのね』と呟いた。
それが聞こえたロザリーさんは
「大丈夫です。陛下は何があっても必ずお戻りになりますから、今度こそ安心してお待ちください」
と言ってくれた。私は思わず
「ごめんなさい聞こえてしまったのね」
と言うと
「お気持ちはお察しいたします。お気になさらず」
と笑ってくれた。




