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《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢  作者: ヴァンドール


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54/85

54話

 あれから随分と日が経つのに、ルイス様は公爵邸を訪れることはなかった。

 ただお忙しいだけなのかもしれないが、あれ以来、私は負の感情に囚われてしまっている。


 私が落ち込んで小説を書くことさえ手につかないなんて……あれほど『大好きな小説さえ書ければあとは何もいらない』と長く思っていた日々は、どこへいってしまったのかしら。


 そんなふうに考えごとをしていたら、ロザリーさんがお茶を持ってきてくれた。


「最近、元気がないようですが、何かありましたか?」


 心配そうに聞かれた。私はごまかすように話した。


「なんか最近、筆が進まず、何も頭に浮かんでこなくって」


 するとロザリーさんは励ますように言ってくれる。


「そんな時もあります。寧ろ、今までスラスラ書かれていた方がすごいのではないですか。気分転換に観劇でも行かれてはいかがですか? 作品の参考になるかもしれませんよ」

 

 私も、あまりお屋敷に閉じこもっていてはただ悪いことばかり考えてしまうと、思っていたところだった。

 だけど私は、観劇に一人で行くのもどうかと思い、安易な気持ちで従兄のラナウド伯爵を誘ってしまった。


 先触れを出すと、すぐに返事が返ってきて、ちょうど今、王都で流行っているという演目があるので二日後に馬車で迎えに来てくれることになった。


 正直、従兄と分かってから親しみを感じているのは事実だが、相手が私に婚姻を申し込んできたのに断っておきながら誘ってしまったことに、多少の罪悪感を感じた。


 これでは期待を持たせてしまうだけなのでは? と。


 だけどこの時、私のとってしまった浅はかな行動は、陛下に対する当てつけの意味があった気がした。


 なので心の中で『ラナウド伯爵、ごめんなさい』と謝った。


 そして当日、ラナウド伯爵は嬉しそうに迎えに来てくださった。  


 私はやはり勘違いをさせてしまっていると思い、伯爵に言い訳をした。


「ごめんなさい、今、作品に行き詰まっていて、従兄として軽い気持ちでお誘いしてしまいました」

 

「それでもいい、私のことは利用でも、なんでもしてくれて構わない」


 と言ってくれた。やはりいつかジョンが言っていた通り、本当に優しい良い人なんだと思った。


 その後、私達は馬車で王都の街へと向かった。

 馬車を降りる時も自然にエスコートしてくださり、今日の演目も調べてくださったようで、見どころなども教えてくれた。


 途中、簡単な軽食を取りながら伯爵のお父様の昔話を聞かせていただき、お父様から聞いたという、エマ先生のお姉様、つまりは伯爵のお母様のお話も聞かせてくださった。思った以上に楽しい一日が過ごせて、本当に気分転換ができた。

 帰りもお屋敷まで送ってくださった。


「また気分転換がしたくなったら、いつでも声を掛けてください」


 そう言って去っていかれた。私は本当に優しい方だなと改めて思った。

 そしてお屋敷に着くと、ロザリーさんが笑顔で声をかけてくれた。


「良い気分転換ができたようですね。でも陛下が知ったらきっと怒り出しそうですね」


「それはないです、だってこんなに放っておくくらいですから」


 私は思わず口にしてしまった。するとロザリーさんは意味深に言った。


「恋とは駆け引きも大切です。でも恋愛小説を書いている方に失礼しました」

 

「そうだ、これだわ!」


 と思い、すぐに私室に行き筆を取った。なんだか今なら書けそうな気がした。そして夜通し書き続けてしまった。


 朝になり、机の上で突っ伏して寝てしまった私を起こしに来てくれたロザリーさんは呆れたように言う。


「やっと元に戻りましたね、果たしてこれが良いのかは疑問ですが」


 それを聞き、思わず笑ってしまった。


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