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53話

 宰相と王領へと視察に行き、ワイン用のブドウ畑に到着するやいなや、栽培を手がけてくれる領民たちとの話し合いが持たれた。

 彼らによると、やはり他の地域でのフィロキセラという害虫被害は甚大だという。ある地域では、今まで栽培していた畑の三分の二が壊滅してしまったといい、未曾有の事態に陥っているらしい。何でも、その害虫がブドウの根に寄生すると枯死してしまうとのことだ。

 我が国では、未だそれに対して有効な対策がない。これは早く手を打たなければ、ワイナリー経営どころの話ではない。

 やはり、これはオリビア王女に期待せざるを得ないと思った。すぐにでも呼び寄せると言っていたな。まずは、どんな対策があるのか確かめなければならない。

 これでは隣国の国王に借りを作ってしまうなと、思わずため息が出た。だが、自国のことを思えば仕方がないと諦めた。


 その後、王宮へと戻り、今聞いてきた現状を王女に話すと

「今、ちょうど手紙を書き終えたところなので、その手紙と一緒に陛下のお言葉もお書き添えください」

 と言われてしまった。確かに、私が直接手を貸して欲しいと言えば、事は早く動くだろうから仕方がない。

 私が書いた手紙を渡すと、王女は少し私と話がしたいと言ってきた。どんな話をされるのかとヒヤヒヤした気持ちで臨んだが、彼女は

「陛下、不躾なことをお伺いますが、陛下にはお好きな方がおられるのですか?」

 と尋ねてきた。どう答えるか考えていると

「そのご様子では、やはりいらっしゃるのですね」

 と言われてしまった。私は思わず

「何故そのようなことを?」

 と尋ねると、驚いたことに

「実は、わたくしにもお慕いしている方がおりますの」

 と言い、王女の話が始まった。


 彼女によると、隣国の王はその者との婚姻に反対しており、やはり私との婚姻を望んでいるという。そして、その者は侯爵でありながら研究者でもあると言った。 

 私は、もしかして今回こちらに呼び寄せた人物ではないのかと尋ねると、やはりそうだった。

 なるほど、どうりで、あの時嬉しそうにしていたわけだと理解した。

 彼女は私に協力して欲しいと頼んできた。私は内心喜んでいたが、それを隠し

「私は何をすれば良いのか?」

 と尋ねると

「彼がこの国でこれからすることへの功績を、兄王に伝えてくれるだけでいいのです」

 と言った。彼女は彼を認めさせたいのだと思った。そして彼女は

「お会いしていただければ分かりますが、彼が農作物の発展に多大な功績を残すのは確かです」

 と言い切った。自国でも散々農民たちを助けてきたからこそ、今の我が国の発展に繋がっていることを兄王は認めようとしないと嘆いていた。私は

「では、その者に期待しよう」

 と返した。彼女は嬉しそうに、必ず期待以上の結果を出す方だと自信をもって言い切った。

 私はアンリ嬢に早くこのことを伝えたくて、頭の中ではどうやって時間を作るか既に考えていた。 

 だが、どう考えてもやることが山積している。やっと作った今日の休みも、結局は仕事になってしまった。気持ちだけが焦っていた。

 そしてふと思った。私と王女二人共、普通ではない者を好きになってしまったなと。

『王女は研究者の侯爵で、私は女流作家の伯爵令嬢かと』なんだかお互い苦労をしそうだとため息が漏れてしまった。



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