表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/85

5話

 次の日の朝、私に付いてくれることになったリサは、一九歳になった私よりも二つ年下の十七歳だという。

 こちらの侯爵邸に来て二年が経つというが、最初はマリアさんに付いていたという。

 しかし、あまりにも横暴な態度に我慢できず言い返したら、すぐに外され、解雇を言い渡されたが、メイド長が侯爵様に執り成してくれたという。

 何だか嫌な予感しかしない。

 出来る限り関わらないようにしなければと強く思った。

 そう考え事をしていたら、リサがじっと私の顔を見つめている。

 咄嗟に顔を触り、眼鏡をかけ忘れていることに気づき、慌てて眼鏡をかけると

「奥様ってとっても瞳が綺麗だったんですね」

 と言われ、焦ってしまった。そして

「どうしてそんなにお綺麗なのに前髪で隠されているのですか?」

 と言われてしまったので、思わず

「このことは見なかったことにして、二人だけの秘密よ」

 と、お願いした。

 すると全てを察したようで

「お任せください」

 と言ってくれた。

 そして、応接セットのテーブルの上に朝食を並べながら言い難そうに

「旦那様が、奥様の朝食はこちらに運ぶようにと仰いました」

 と言って用意してくれた。私は

「気を使わなくていいのよ。

 全て分かっていることだし、正直この方が気楽でいいのよ」

 と言った。

 するとリサは

「それもそうですね」

 と納得していた。

 二人して思わず吹き出してしまった。そして、リサは何事もなかったように

「では失礼します」

 と出て行った。

 ほっとした私は、朝から品数の多い食事に舌鼓を打ったのだった。


 その後、私は持ってきた数少ないドレスの中から普段使い用のドレスに着替え、出版社へ行こうとし、階段を降りると旦那様と出くわしてしまった。すると旦那様は

「何処へ行こうと構わないが、その眼鏡と髪型は何とかならんのか」

 と怒り口調で話しかけてきたので

「申し訳ありません、これがないと目が見えないもので」

 と言い返し、その場を後にした。

 そして、侯爵家の馬車で出版社の近くまで送ってもらい、帰りは一人で帰るからと御者には引き取ってもらった。


 出版社に着くと、担当編集者のソラさんとエマ先生の親友のラミナさん二人がいたので、今日までのことを全て話すと、二人共、大笑いをしてラミナさんは

「この事はエマに伝えておくわね」

 と言って、これからについて話し始めた。

 私の処女作は順調に売り上げを伸ばしているという。

 それを聞き少し安心したが、問題は次回作だ、初めての作品が順調だと、読者の次回作への期待感が増す、そのプレッシャーに飲み込まれないように次の作品について自分なりに考えを巡らせていた。

 するとラミナさんが、今度の作品の内容について、初めての時とは少し視点を変えて、今、巷で流行っている貴族の恋愛事情について書いたら、当たるのではないかと言ってきたので、実は私も同じ事を考えていたと話した。

 そしてその情報収集の為、今度エマ先生を誘って、王宮で行われる陛下の生誕祭へ出席したらどうかという話しになった。


 エマ先生は私の父の友人のルイノール子爵の奥様だったが、元々は伯爵家のご出身で、お姉様は侯爵家へと嫁いだが、私の父と同じ当時の流行病である黒死病でその姉とご両親をほぼ同時期に亡くされたという。若くしてそんな不幸に見舞われた先生は誰にでもお優しい。なので、人望の厚いエマ先生は当然お顔も広い。

 私は後日、エマ先生のお屋敷で社交界へ出席する為の支度を整えてもらい、久しぶりに眼鏡を外し、髪型も前髪を上げ後ろ髪はハーフアップにしてもらった。

 完成した私を見た先生は

「全くの別人だわ、とっても素敵よ。でもこれでは目立ちすぎてしまうわね」

 と笑顔を向けてくれた。

 そしてエマ先生のご子息と一緒に、いざ王宮へと向かった。

 因みにご子息の奥様は妊娠中なので今回の出席は見送られた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ