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44話

 陛下の就任パーティー当日。いつものようにロザリーさんに支度を整えてもらった私は、エマ先生と(しばらくは今まで通りエマ先生と呼ぶことにした。尤もご子息は何も知らないから当然なのだけれど)ご子息、そして赤ちゃんは乳母に預けて今日は奥様も参加なさるので、私を含め四人で王宮へと向かった。

 馬車の中でエマ先生が

「とっても素敵なドレスね。前回と同じ色だけど、デザインが大人っぽくてよく似合っているわ」

 と褒めてくださった。私は

「ありがとうございます。殿下ではなく陛下が送ってくださいました」

 と答えると

「やはりそうなのね。また陛下の瞳と同じ色ですものね」

 と言ってから微笑まれた。

 私は心の中で

『そういえば、そうなのかもしれないけれど、これはただの偶然ですから』と否定した。否定しながらも『だから今回もブルーなの?』と自問していた。


 そして王宮に着くと、なぜか馬車寄せのところでラナウド伯爵が待っていて、馬車から降りる私をエスコートしてくれた。それから

「先日はわざわざお越しいただき、ありがとうございました」

 と私とエマ先生にお礼を言われてから

「おかげさまで父も懐かしい彼女に会えた気がして嬉しかった、と言って領地に帰っていきました」 

 と笑顔で言われた。私もその話が嬉しくて

「少しでもお父様のお慰めになったのなら良かったです」

 と返した。すると伯爵は

「本日、陛下は就任式の主役ですからお忙しくてエスコートできないと思いまして、代わりに私が参りました」

 と仰った。私は従兄と分かってから、なんとなく親近感が湧いたのか、素直に

「ありがとうございます」

 と手を差し出した。

 そのまま王宮の中へと入っていくと、大勢の人々に囲まれている陛下がいらして、こちらに気づくとすぐに駆け寄ってこられ、伯爵に向かって

「どうして君が彼女のエスコートをしている?」

 と不機嫌露わに尋ねた。

 すると伯爵は

「陛下は本日の主役です。お忙しいと思いまして、代わりに従妹の私が務めさせていただいたのです」

 と答えた。陛下は

「何を言っているのだ、従妹だと?」

 と驚いた様子だった。伯爵が

「まだ彼女から何も聞いてはいらっしゃらないのですね」

 と言ったので、私は焦って

「陛下、そのお話は今度お時間がある時にゆっくりとご説明いたしますので、今はお戻りを。皆様、待っていらっしゃいます」

 と言った。流石に今日はまずいと思われたようで

「では近々公爵邸に行くので、その時に聞かせてもらう」

 と言って去っていこうとしてから、振り返り

「そのドレス、とても似合っている」

 と言われた。私は一言だけ

「ありがとうございます」

 と返した。

 その後、就任式も無事終わり、陛下は最後の挨拶で皆に向かい宣言をした。


【これから我が国は立憲君主制を貫く。国王は国の象徴であって、政治的役割は議会が果たす。よって、実質的な権力は議会にある。そしてその議会の人選は、選挙によって国民が選ぶ。皆、心して臨むように】


 とお言葉を述べられると、一同は割れんばかりの拍手でこれを歓迎した。

 こうして、無事全ての行事が終わった。

 私は帰りの馬車でエマ先生に今日の陛下とラナウド伯爵の件を相談したかったが、馬車には息子さんご夫婦がいらっしゃったので何も聞くことができないまま公爵邸へと送っていただいた。

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