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41話

7月5日より毎日4話ずつ投稿させていただいています。

 こうして平和が戻り、殿下は公爵邸から王宮へと移られた。

 何故か私は、公爵邸でそのまま住んでも良いと言われ、それに甘んじている状況だ。だからといって、いつまでもここでお世話になりっぱなしというわけにはいかない。どこかに部屋を借りなければと思っていた。

『そうよね、殿下の為の小説も書く必要がなくなってしまったわ』

 と独り言を呟いた。

 そして私はラミナさんの出版社への作品に取り掛かることにした。これからは生活費もかかるのだから、本格的に仕事として自覚を持って取り組まねば、と思いながら。

 書き始めてから感じたのは自由だった。そう、今は何にも囚われず、自分の好きなように書いてもいいのだ。前のように検閲も気にすることなく、本来の自分が思ったことを素直に文章にできる喜びを感じながら筆が進んだ。

 午後になり、食事を終えた頃、ラナウド伯爵から先触れが届いた。

 それには、どうしても会ってもらいたい人と、見てもらいたい絵があると書いてあった。

『先日もきちんとお断りをしたはずなんだけど』

 と思いながらも、決して悪い方ではないことはわかるのだけど、一人で会って誤解を与えるのもよくないので、私はエマ先生に相談することにして先触れの返事は後回しにした。

 その後、エマ先生に相談するため、ルイノール子爵邸を訪れることになった。

 先日エマ先生にできた初孫のお祝いもまだだったので、王都の街で赤ちゃんのお洋服と皆さんへのお菓子を買って、公爵邸の馬車で送っていただいた。

 お屋敷に着くと、ちょうどエマ先生が赤ちゃんを抱いてお庭にいらっしゃるのが見えたので、すぐに駆け寄った。笑顔を見せてくれる元気な男の赤ちゃんに頬が緩んだ。

 先生は

「そろそろ中に入りましょう」

 と言って乳母に赤ちゃんを預け、私達は客間へと移り、ラナウド伯爵の件を相談した。先生は

「だったら私も一緒に付き添うわ」

 と言ってくださったので、申し訳ないと思いながらも付き合っていただくことにした。

 その後、先触れの返事にもエマ先生とお邪魔させていただくことを書いて返信した。

 そして伯爵邸へと伺う当日、エマ先生が馬車で私を迎えに来てくださり、二人でラナウド伯爵のお屋敷へと向かった。

 お屋敷に着くとすぐに伯爵自身が出迎えてくださり

「本日はわざわざありがとうございます」

 と挨拶をしてくださり中へと案内をしてくださった。そして客間へと入った瞬間、エマ先生が

「シャルロットお姉様」

 と、一枚の大きな絵を見て呟いた。そこには何故か私によく似た女性の肖像画が飾られていた。そして伯爵の後ろには素敵な老紳士の姿があり、その方が私を見るなり

「シャルロット!」

 と声を上げた。驚いた私にラナウド伯爵は

「すまない、君が亡くなった母上にあまりにも似ていたので」

 と謝られた。そして伯爵のお父様も

「本当にすまない。つい大きな声が出てしまった」

 と仰った。隣りを見るとエマ先生がじっと肖像画を見たまま固まっていた。しばらくしてエマ先生は伯爵のお父様に

「もしかして、シャルロットお姉様の恋人だった方ですか?」

 と尋ねた。するとそのお父様は

「君はシャルロットの妹さんですかな?」

 と逆に尋ねてきた。

 そうして長い長い昔話が始まった。


 

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