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《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢  作者: ヴァンドール


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33/85

33話

7月5日より毎日4話ずつ投稿させていただいています。

 やはりどうしてもエマ先生と、あのウィンチェスター侯爵との婚約を破談にした子爵令嬢との関係が気になって仕方がない私は、思い切って今日、エマ先生のお屋敷にお邪魔する約束を取り付けていた。


 お屋敷に着くと、エマ先生はいつも通り、にこやかに迎えてくださった。

けれど私は、真剣な眼差しで切り出した。


「先生、ずっと気になっていたことがあって、お伺いしたかったのですが、なかなか聞きづらくて今日まで来てしまいました」


 すると先生は少し驚いたように尋ねた。


「どうしたの? そんなに深刻な顔をして」


 そこで私は、以前、たまたま目にしてしまった、お二人のことを打ち明けた。


 話を聞いた先生は、一瞬だけ目を伏せた。


「そう、見られていたのね」


 と静かに言い、ゆっくりと話し始めてくださった。


 その内容は、驚くことに、すべて、私のことを思い、許せないと感じた末に取った行動だった。


 愛人がいながら、金の力で貴族令嬢なら誰でもいいと娶って、その女性に愛人の子を産んだことにしようとしたこと。

 さらに、外見が気に入らないという理由で追い出しておきながら、気に入った令嬢ができた途端、長年連れ添った愛人まで切り捨てる。

 そんな振る舞いは、人として到底許せなかったのだという。


 だから、どうしても一度痛い目に遭わせなければ気が済まなかった。

 そう言って、子爵令嬢を呼び出し、すべてを話したうえで婚約を破談にさせたのだと教えてくださった。


 それは彼女のためにも、間違っていない選択だったと確信している、とも。


 確かに、あの男なら、同じことを何度でも繰り返すに違いない。

 それは、私にも容易に想像がついた。


 そしてマリアさんについては、最初こそ苦手な女性だと思っていたものの、新しい令嬢が現れた途端に邪魔者扱いされ、追い出されたと知り、哀れに思ったという。


 実際に会って事実を伝え、今後のための助言もしたそうだ。


 純潔を失い、侯爵に捨てられたという噂が広まっていた以上、自立して生きていくための道を示す必要があると考えた、と。


「それにしても、高級娼館だなんて驚きました」


 そう言うと、先生は苦笑した。


「それはね、マリアさん自身が言い出したことなの」


 と仰った。


 すべてを聞き終えた私は、胸がいっぱいになった。


「そんなふうに思ってくださる方がいるなんて、とても嬉しいですし、心強いです」


 と素直な気持ちを伝えた。


 すると先生は


「少し、やり過ぎてしまったかしらね」


 と仰ったが、私は思わず本音が口をついた。


「その程度で反省するような男ではないと思います」


 その言葉に、先生は噴き出すように笑われた。


 けれど私は、自分以上に腹を立て、行動してくれた先生の存在が嬉しくて、気づけば少し目が潤んでいた。


 その後、先生はふと思い出したように


「それより、殿下とは上手くいっているの?」


 と尋ねてこられた。


 私は少し考えてから、


「今のところ、新しい小説の出版は様子見の状態ですし、あとは陛下の出方次第ですね」


 と答えた。


 すると先生は呆れたように、


「そうじゃなくて、二人の関係性を聞いているのよ」


 と言われたので


「関係性、ですか?」


と聞き返すと


「まあ、もういいわ。あなたらしいわね」


 とため息交じりに言われてしまった。


 正直、何のことかよく分からなかったが、

ずっと気になっていたことが解決したおかげで、気持ちはすっかり晴れていた。


 その後、先生のご子息ご夫妻が入ってこられ、挨拶をしてくださった。

 来月がご出産予定だと伺い、私は笑顔で声をかけた。


「元気な赤ちゃんが生まれますように。楽しみにしています」


「ありがとうございます。では、ごゆっくりしていってください」


 そう言って、お二人は仲良く散歩に出かけられた。


「これで、先生にもお孫さんができるのですね」


 と言うと、先生は嬉しそうに微笑んだ。


「そうね、とても楽しみだわ。でもね、世間では、息子の孫も可愛いけれど、娘の孫はもっと可愛い、なんて言うでしょう?」


 私は思わず


「先生、それは贅沢というものです」


 と返した。


すると先生は、少し寂しそうに俯かれた。


「……そうね。私が望んではいけないことね」


「先生には、ご立派な跡継ぎがいらっしゃるのですから」


そう言って、私はエマ先生のお屋敷を後にした。


帰り道、『きっと先生は、女の子のお子様も欲しかったのね』

 そんなことを思いながら、公爵邸へと戻った。


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