27話
王宮にて
「大臣、資金集めはどうなっているのだ? 思ったほど集まっていないと聞いたぞ」
「陛下、申し訳ありません。努力はしておりますが、貴族や商人たちが出し渋っておりまして、どうすべきか考慮中でございます」
「だったら税をもっと上げればよいではないか」
「いえ、これ以上は民衆の反感を買ってしまいます」
「そんなもの上げてしまえばどうにでもなる」
「いいえ陛下、今そんなことをしては、民衆は国に対して不信感を抱いてしまいます。私の妻から聞いたのですが、今巷で流行している恋愛小説がありまして、その内容が問題なのです」
そして国王は大臣からその小説について説明を受けた。
それは、国王が隣国に対し領土侵攻を行い、その戦費を賄うための増税で国民は苦しみ、若者は戦場に駆り出され、愛する人が命を落としてしまうといった内容だという。
それを読んだ者たちは
『我が国は平和で良かった』
といった具合で、そんな時に税の引き上げなどを行えば戦争が起こるのではと不安を煽ってしまいます。と大臣が国王に説明した。
しかしそれに対して国王は不満顔だ。
「なぜそのような本の出版を許可したのだ? 検閲官は何をしているのだ!」
「そんなことを申されましても、国で定められた法規制の範囲内のものでしたので、検閲には引っかからなかったのです。それに全てが抽象的な表現でしたし、ただの恋愛小説としての出版許可を出したとのことです」
「だったらこれ以降、その手の出版物は全て禁ずる」
「それこそ民衆の反感を買うだけです。今や民衆はその手の本の発売を心待ちにしているのですから」
国王は物凄い勢いで大臣に言った。
「だったらその作者は誰なのか探させろ! そしてこちらの都合が良いものを書かせろ! これは命令だ」
大臣は渋々うなずいた。
「承知いたしました。すぐに手配し、探させます」
その後、大臣は手を尽くしたが、なかなか見つからなかった。大手の出版社ではないのでなおさら見つけにくかった。
やっと見つけることができたと思ったら、そこの編集長は言う。
「作者が勝手に原稿を送りつけてきて、面白いものだったので出版に踏み切ったら、たまたま当たった作品だ」
それでは原稿料はいつどうやって払っているのかと聞いた。
「その都度、代理人が取りに来ていて、毎回違う者が取りに来ています」
そういうことだったので、次回支払う日時が決まったら、必ず前もって報告するようにと告げてきたと部下から報告された。
しかし、次回の作品がいつ送られてくるかは先方次第なので分からないと言われた。
陛下にそう報告したが、陛下自身も独自に探る影の存在がいて、そちらの話では作者が別にもう一人いるという。そういうことなので、もう一人の捜索も依頼されてしまった。
『やれやれ』
と大臣はため息をついた。しかし陛下の本気度が伝わってきて大臣もなんとかしなければと思い直していた。しかし、本当に戦争にでもなったなら我が妻に何と言えばよいのかと頭を悩ませた。
国家の一大事にまず妻の心配とは、自分もどうかしているなと反省をする大臣だった。




