23話
ウィンチェスター侯爵視点
全く何なんだあの王弟殿下は、この間から知り合いでもないのに話しかけてくる。
確かルイノール子爵の知り合いだと言っていたから、わざわざ嫌味を言いにきたのか? そういえば隣にいた令嬢は、いつだったかルイノール子爵の母上と一緒にいた女性だったが、娘ではなかったのか? それにしても美しい女性だったな。あのような女性が妻だっなら一緒に社交界へ連れていき周囲からの注目を浴びるだろうと勝手な想像をしてしまった。
それはそうと、領地にいる両親は、いざ婚姻無効の報告をすると、やはり諦めきれないのか、養子を迎える前にもう一度結婚して今度こそ子供を作れと言ってきた。
そして子爵家の令嬢と会ってみないかと言われ、まあ、会うだけならと会ってみたら、これがなんとも私の好みにぴったりのご令嬢ではないか。私はすぐに返事をしてしまい、その後、婚約者となったのだが、マリアのことをどうすべきか考えていた。
婚姻は半年後となったのだが、前回のように金の力でどうこうして、今回の彼女にバレてしまっては元も子もない。何といっても私の好みで、前回の女性とは大違いだ。今度こそ跡取りを作り領地にいる両親を納得させなくてはいけない。
そろそろマリアにも飽きてきたことだし所詮は平民だ。婚姻なんて考えられるはずもない。早く何とかして手を切らなければいけないのだがどうするかだ。
あの気の強いマリアがあっさり引き下がるはずはない。頭の痛いところだ。
今はまだ気付かれていないが、もしわかったら何をしてくるか? 最近はやたらと子供を作ろうとしてくる。なんとかかわしてはいるが、これ以上は怪しまれてしまう。金の力でなんとかマリアを説き伏せられないかと思案する。
そうだ、領地から両親が戻って来ることになったと言って、とりあえず屋敷から出てもらうか。そうだ、それがいい。どこかに適当な部屋を探さなくては。早速明日にでも話してみるか。
そして次の日の朝、食事の後に部屋でお茶を飲みながら、実は領地から両親が屋敷に戻って来ることになったので、部屋をどこかに用意するから、一旦この屋敷を出てほしいと告げた。すると、思い切り疑いの目を向けられたが、それにも怯まず対峙した。
他に好きな女でもできたのかと言われたが、断じてそれはないと言い聞かせた。
渋々だったが、とりあえず納得はしてもらい、なんとか思惑は成功した。
そして半月後、部屋も決まり、ついに屋敷を出て行くことになり、馬車で新しい部屋へと送り出した。
「ああ、これでやっと一安心だ」と独り言ちた。