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《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢  作者: ヴァンドール


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22/85

22話

 こちらの公爵邸に来てから一か月が経った。私はまだ執筆の途中だが、半分ほど書いている小説の内容を、こんな感じで書き進めても良いものか殿下に見てもらうことにした。

 殿下は真剣な顔で読んでくれた。すると


「上出来だ」


 と満足気で言ってくれた。そして、いくつかの補足をつけてほしいと言われ、私はそれを考慮しながら策を講じた。そして、いくつかの展開を提案しながらどれが良いのか、話し合いを重ねた。

 そんな会話に楽しさも感じ、充実した毎日を送れていることに感謝をしていた。

 殿下は、私やエマ先生を巻き込んでしまったことを常に気にしてくれたが、私はそれでも満足していた。


 そうしてまた半月が経った頃、、殿下の作品を出版している会社の編集長がお屋敷にいらしていた。

 殿下が私の作品をその方にお見せし、感想を求めた。

 私はその方が読み終えるまで私室に戻り、ドキドキしながら待っていた。

 しばらくしてロザリーさんが呼びに来てくれたので、殿下達の待つ客間へと向かった。

 すると編集長の方が満足気におっしゃった。


「なかなかよく書けている。内容も期待以上の出来だ。むしろリアル過ぎて少々危険ではないかと心配なくらいだ」

 

「確かに、それなりの者が読んだら誰が書いた物かと探られそうだな」

 

 殿下は心配をしてくれた。でも逆に私も殿下を心配した。

 

「男性のペンネームを使うとして、その場合殿下が疑われたりしないでしょうか?」

 

「その時はその時だ、君は心配しなくていい」


 そう言ってくれたが、私はそれでも気になっていた。

 いくら継承権を放棄したとはいえ、疑い深い方だと聞いている。殿下に何かあってからでは遅いのだ。


 そんな私の話をよそに、今度知り合いの侯爵邸で舞踏会があるのだが、作品の方も一段落したのでよかったら一緒に参加しないかと誘ってくれた。


 私もずっとお屋敷に籠っていたので気分転換に参加させてもらうことにした。


 舞踏会の当日、私はロザリーさんに支度を整えてもらい殿下の待つ階下に降りた。私を見た殿下は、とても驚いた表情をなさった。


「よく似合っている、とても綺麗だ」

 

「殿下もとても素敵です」


 本当に殿下の正装姿は目を引くほど目立っていた。

 そして私達は公爵邸の馬車で知り合いだという侯爵邸へと向かった。


 侯爵邸に着くと、周りの視線が一斉に殿下と私に集まってしまい、戸惑っている私を殿下は気遣うようにエスコートをしてくださった。 

 そしてさりげなく皆さんに知り合いの伯爵令嬢だと紹介をしてくださりながら、注目が集まる輪の中からバルコニーの方へと誘導してくださった。

 すると驚いたことに、どこかのご令嬢をエスコートしているウィンチェスター侯爵、つまりは私の元夫、いや、婚姻の無効が認められたのでそれさえもなかったことになったのだが、その方の姿があった。


 突然、殿下はニヤリと笑い、私を連れていった。


「ウィンチェスター侯爵、先日ぶりですな。こちらがお身体が弱いと仰っていた奥方ですか?」


 嫌味たっぷりに尋ねている。


「いや、彼女は身体が弱く子が望めなかった為、婚姻そのものがなかったことになったんです」


 と言ってのけた。すると殿下はまたも嫌味を含んだ言葉を返した。


「これは失礼した。ではこちらが新しい奥方ですかな?」

 

「いや、まだ婚約の段階です」


 侯爵は気まずげに、そそくさと去って行った。

 私は心の中で考えていた。

『マリアさんはどうなったのかしら?』

 でも、まあ今更ね、とすぐに考えるのはやめた。そして私は殿下にニッコリ微笑んで言った。


「殿下は結構、意地悪なのですね」

 

「いやー、あの慌てぶりは見ていて楽しかったな」


 と嬉しそうに笑っていらした。その様子はまるでいたずらが成功した子供のようだった。


 その後、私は殿下に促されてダンスを踊っていると、会場の人達から羨望の眼差しを向けられた。


「こんなに目立ってしまったら勘違いをされてしまいます」

 

「別に私は構わないのだがな」


 『モテる方は違うのね』と心の中で思った。


「それとも君は迷惑なのかな?」

 

「そういうわけではないのですがあまり注目されるのは苦手です」


 すると殿下は不満そうなお顔をした。


「女性にそんなふうに言われたのは初めてだ」

 

 私はやはりかなりの自信家なんだわと心の中で思いながら、こういうタイプの男性には騙されては駄目よと自分に言い聞かせた。

 そしてそんな私の気持ちも知らずに殿下は続けて二曲目も踊り始めた。

 流石に、羨望の眼差しが、突き刺さるような嫉妬の視線に変わったのを感じた。


 こうして束の間の気分転換は、他の貴族女性からの嫉妬の嵐に巻き込まれてしまった。

 それなのに殿下はどこ吹く風と私のことを離してくれなかった。



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