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21話

7月5日より毎日4話ずつ投稿させていただいています。

ルイス王弟殿下視点


 今日、私の屋敷にやって来た彼女は、先日ルイノール子爵家で話していた彼女と同一人物だという。

 確かに声や話し方はそうなのだが、あまりにも違う外見に一瞬我が目を疑ったほど、別人に見えた。

 確かに彼女は、陛下の即位十周年を記念した舞踏会の時に、私がルイノール子爵のご夫人と間違えた女性だった。そうか、あの時既に彼女は私の目の前にいたのだ。 

 そういえば自分の身を守るために変装をしていたと言っていたが、なるほど、確かあの侯爵は女性を外見でしか見ない男だと言っていたから、それであんな髪型と大きな眼鏡だったのかと妙に納得させられた。なんだろう、この気持ちは? 初めての感情に戸惑っている自分に驚いた。


 次の日の朝、私は侍女に言って、アンリ嬢を朝食に誘った。そして現れたアンリ嬢に

「昨夜はよく眠れたかな?」

 と聞くと

「はい、おかげさまで早い時間から寝てしまいました。なので朝早くに目が覚めてしまい、今まで集中して執筆ができました」

 と答えが返ってきた。そして

「それは済まなかった、執筆の邪魔をしてしまったな」

 と言うと

「いいえ、ちょうどお腹が空いていたのでありがとうございます」

 と返してくれた。

 そしてその後、執筆についての色々な話をしながら楽しい朝食を終え、仕事へと向かいながら、誰かとこんな風に食事をするのは随分と久しぶりだなと思った。

 そういえば、亡くなった母上が生きていた頃は当たり前だった楽しい食事の時間が、いつの間にか失われていたことに今、気づかされた。


 私の母は、隣国の第二王女だった。

 この国の先王の王妃様が、出産時の難産がもとで体調を崩され、そのままお亡くなりになり、その後、私の母との間に婚姻の話が持ち上がったという。

 先王であった私の父と母は、私が十七歳の時に慰問に行った帰り道、馬車が崖から転落し、二人とも亡くなってしまった。

 当時その事故に現国王、すなわち私の異母兄が関わったのではと疑いがかかり、私は両親の仇を討ちたかったが、証拠もなく有耶無耶に終わった。

 そして先王が崩御したのちすぐに、異母兄が弱冠二十歳で国王に即位した。

 その時、次は自分の命が狙われるのではと警戒した私は、公爵となり実質、継承権を放棄した。

 元々、王位という立場にこだわりなどなかったのでそれでよかったのだが、ここに来て、他国との戦争、ましてやそれが私の母が王女だった国、つまりは母の生まれ故郷との戦争を考えているなら話は別だ。

 なんとしてでも阻止しなければならない。今はそのための準備をしているところだ。

 そのためにも彼女の力が必要なのだが、今の彼女との生活がこれから先もずっと続けばいいのにと願っている自分に

『私は何を考えているのだ?』  

 と心の中で自問した。

 だが、今はそんな時ではない自分の気持ちを切り替えて、それよりも、これから待ち受けている困難から彼女を守りながら、立ち向かわなければと気合いを入れた。



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