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《完結》とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢  作者: ヴァンドール


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19/85

19話

 その後、私は殿下からのアドバイスをもらいながら執筆作業に没頭していた。

 そんなある朝、リサが私を呼びに来た。


「旦那様がお呼びです」


「珍しいこともあるわね、旦那様が私を呼ぶなんて」


 そう言いながら旦那様のいる部屋へ行くと、そこには満足げな顔の旦那様がいた。


「父上と母上からの許可が出た。君とは離縁する。悪いが君のことはどうしても女性としては見られない」


 話を聞くと、年の離れた従兄弟を養子として迎えることになったそうだ。

 

『要するに私はお払い箱ということなのね』

 と心の中で呟いた。そして私の書いた小説は役に立ったようで何よりだわと思った。それならばと私は言った。


「でしたら婚姻の無効ということにさせていただきます」

 

 夫婦として機能していないのなら教会裁判所に申し出れば認められるはずだ。

 旦那様はそれはどちらでも構わないと言った。

 むしろ離婚というより婚姻の無効の方が許可が得やすいはずだ。


この時代、余程の事情がない限り離婚ということは難しいのだから。

 もっとも旦那様のことだ、両親には、子供が産めない女だったくらいのことを言ったのだろう。

 その上、旦那様は私に、社交界にも恥ずかしくて連れて行けない女性など、婚姻していても意味がないとまで言ってきた。

 内心では、かなり腹がたったが、狙い通りとも思っていたのでそれ以上は言い返すことはしなかった。


「では早速、手続きを行います」 


 そう言って部屋を後にした。


 私は一刻も早く、その手続きと部屋探しをしなければいけない。 

 『忙しくなるわ』と覚悟した。今は執筆を少しでも早く進めたいのにと思いながら。


 部屋の外で待っていたリサは、悲しそうな顔をしている。申しわけないと思っても今の私にはどうすることもできない。


「そんな顔、しないで。リサ」


 そのあとの言葉が見つからなかった。



 その後、私はすぐにエマ先生と殿下に報告の手紙を書いた。

 直ちにエマ先生のお屋敷で話し合うことになり、今、二人で殿下を待っているところだ。

 まもなくして殿下もいらっしゃった。するといきなり殿下は言った。


「部屋は、我が公爵邸に用意しよう」

 

 私は驚き口にした。

 

「そこまでご迷惑をおかけしたくはありません」

 

「何を言う、それが最善だ、その方がかえって守りやすくて安心だ」

 

 するとエマ先生まで賛成している。


「うちでも構わないと思っていたけれど、確かに安全を考えるなら殿下の側が一番安心だわ」


 私は真剣に考えた。確かに安全を考えるなら、この先まだまだ長いのだから、それが一番の選択なのかもしれない……。

 私は思い切って、お言葉に甘えることにした。



 その後、面倒な手続きも全て終わり、無事、婚姻無効が成立した。


 ついに公爵邸に移る日がやって来た。

 殿下は公爵邸の馬車を回すと仰ってくれたが、変な勘ぐりをされたくなかったのでエマ先生のお屋敷から馬車を回していただいた。 


 本当ならリサを連れて行きたかったが、国家という大きな渦に巻き込みたくは無かったので諦めざるを得なかった。

 そして最後にエマ先生へ貸してもらっていた小説を返しながら、今までのお礼を言って、心ばかりの品を手渡した。

 リサには知り合いのお宅でしばらくお世話になると告げ、侯爵邸を後にした。


 旦那様はお屋敷にいるのに顔すら出さない。まあ、期待はしていませんが。

 そして最後に後ろを振り返り、屋敷を見ると二階の窓から微笑んでいるマリアさんと目が合った。

 感傷に浸って振り返ったわけではないが振り返ったことを後悔した。



 そして公爵邸に着くと殿下が直接、出迎えてくださった。

 殿下は私の姿を見ても、誰だ? といった顔をなさっている。


 (確かにこの姿でお会いするのは舞踏会以来だし、その時の女性と、私は一致してないようなので仕方がない)


 私はこちらに来る前に、エマ先生のお屋敷に預けてあった荷物を取りに行き、もう変装の必要がなくなったので本来の自分の姿で向かうことにした。なので私は殿下に会釈したあと謝った。


「すみません、騙すつもりではなかったのですが、前の旦那様から身を守る為に変装してましたが、これが本来の私です」


 すると殿下はキョトンとしたお顔をなさっている。


「君が、本当にあの黒縁眼鏡の作家なのか?」


 とまだ信じられないという感じで見つめていた。思わず

『お気持ちはお察しいたします』 

 と心の中で呟いた。

 そして殿下は思い出したように口にした。


「確か君は舞踏会の時にエマ殿と一緒にいたご令嬢ではなかったか?」

 

「はい、重ね重ね申し訳ありません」


 私は頭を下げた。






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