16話
相変わらず旦那様は明日は王宮での舞踏会だというのに、その話には一言も触れない。
そんなに私のことを恥ずかしいと思っているのかと、毎回同じ会場にいるというのに思わず苦笑してしまった。
私は心の中で呟いた。
『では、明日会場でお会いしましょう』と。
そして舞踏会の当日、いつものようにエマ先生のお屋敷へと伺った。
最近では原稿料が入ったので新しいドレスを数枚買って、エマ先生のお屋敷に置かせてもらっている。
支度はいつものメイドさんに手伝ってもらい、エマ先生とご子息の三人で王宮へと向かった。
ご子息の奥様は、いつも通りご出産前なのでお留守番だ。
王宮に着くと、華やかな装いのご婦人方が相変わらず噂話に花を咲かせている。
参考のために聞き耳を立て、聞かせてもらう。
その後、バルコニーの側で三人で談笑していると、王弟殿下がいらしてエマ先生に挨拶をなさっている。
驚きを隠しながら側にいると、話の内容にびくりとした。
ウィンチェスター侯爵夫人に会わせてほしいと言うのだから。
何を探っていらっしゃるのだろうか? 明日、王弟殿下が、エマ先生の屋敷の方へいらっしゃると話されていたが当然私も行くのよねと思いながら聞いていた。
王弟殿下が去った後、私達は前回ラミナさん達と集った時のことを思い出していた。
やはり件の作家に関係があるのかしら? もしかしたら王弟殿下の恋人では? とエマ先生に尋ねた。
「可能性はあるかもしれないわね。だって王弟殿下はまだ独身のはずだもの」
私はそんな大物を相手に何と言えば良いのかと考えたが、向こうの出方が分からない以上無駄だと思い、どんなことになっても自分の考えは曲げず率直に話すしかないのだと思った。
さあ、明日に備えてそろそろ、おいとまするとにしますか。




