13話
7月5日より毎日4話ずつ投稿させていただいています。
ルイス王弟殿下視点
何だか今回のこの作者の作品は、私に対する挑戦状のように感じるな。もっとも、真っ向から向き合おうとしている姿勢も感じるのだが。
この作者のペンネームは(アリーシャ・ポートランド)か。女性の名前だが、私のように性別を偽っているのかもしれないな。まあ、これだけの知識があるのだから、しっかりとした教育を受けた貴族といったところだろう。
相手は私のことを本当に女性と信じているのだろうか? 一応、私のペンネームは(ナタリー・スカバラー)なので、女性だと思わせているのだが。
どちらにせよ、書いていることはある意味正しいが、それは本当の王の真意を知らないから仕方ない。
今の王、つまり私の異母兄は、表向きは民のためを装っているが、裏では戦争の資金集めとして、少しずつ税を上げながら、有力貴族たちにも資金援助をさせている。
つまりは、貴族たちも領民からの税でそれを賄っているということだ。
今の王は領土拡大に異常なほど執着しており、隣国に戦争を仕掛けようとしているのだ。そんなことになれば、この平和が全て失われてしまう。そうなる前に、何としてでも今の王を引きずり降ろさなければならない。
王とはあくまで国の象徴であって、政治はあくまで議会や内閣が行うべきだ。
王族は国家の統合、伝統、文化の象徴としての役割を果たせばよいのだ。
この作家にそれを知らせて、何とか協力を求めたいが、誰が書いているか調べる必要があるな。
多分、来月行われる王宮舞踏会には参加するだろうから、その時までになんとか目星をつけられると良いのだが。
まずは私の出版先のライバル社からの出版だ。そちらから探らせてみるか。
数日後、件の出版社に数ヶ月前から頻繁に出入りしている女性がいるという。それも度々、貴族女性を伴っているそうだ。まずはその貴族女性から当たらせた。
すると、ルイノール子爵の母上だということがわかった。彼女なのか? それとも、一緒にいる女性か? 取りあえず、一緒にいる女性も調べてもらった。
すると、平民のような格好をしていて大きな黒縁眼鏡をかけた女性だという。しかし帰る先はウィンチェスター侯爵邸だ。
どういうことだ? 侯爵邸の使用人なのか? ただの使用人が書ける内容の作品ではない。もう少し探らせることにした。
数日後、彼女は侯爵家の馬車でルイノール子爵邸に入ったという。果たして使用人が侯爵家の馬車を使うのか? それとも、ただ使いを頼まれただけなのかが、わからないという。
だったら今度の舞踏会で直接、ウィンチェスター侯爵に尋ねてみるか。
なんでも黒縁の大きな眼鏡をかけた女性だという。
侯爵の反応を見てみるか。もしかしたら侯爵自身がその作家で、彼女を使っているだけかもしれないしな。
そしていよいよ舞踏会当日を迎えた。
私はウィンチェスター侯爵に近づき、世間話をしながら政治の話もしてみたが、まるで期待したような回答は得られなかった。
私のことは王弟として認識していたようで、私に話しかけられたことに緊張したままだった。
この男ではないと思い、黒縁眼鏡の女性について尋ねると、かなり驚いた様子で最近結婚した妻だと言い、なぜ知っているのかと不思議そうに尋ねられたので、不味いと思った。なのでルイノール子爵の知り合いだと言うと納得していた。
だがなぜ、その妻を同伴していないのか聞くと
『妻は身体が弱く、屋敷に閉じ籠り気味なんです』
と答えた。私はその場を離れながら、お大事にと伝えた。
何かがおかしい。頻繁に出版社やルイノール子爵のところへ出向いているのに。
これはもっと調べなければと思い、いつもの者に頼んで調べを続けてもらった。するとウィンチェスター侯爵はかなり見栄っ張りな性格で、女性を外見でしか見ないという。なので妻を恥ずかしくて人前には出さないという。酷い話だ。だとしたら何故、結婚などしたのだろうか? 何かがあるのは間違いなさそうだ。




