表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/85

11話

 第二作目が出版されてから半月ほどが経つ。初めての時のような反響は、今のところ感じられない。

 やはり、旦那様へのメッセージとして無理に組み込んでしまった部分が、ストーリーに少なからず影響を与え、不自然になってしまったのかもしれない。

 このままだと、ラミナさん達出版関係者の方々にも迷惑をかけてしまう。かといって、既に出版されてしまった以上、何の手立てがないのも事実だ。

 せめて次回作は、本当に自分が書きたいものだけを、私利私欲なしで書かなくてはと思っていた。

 すると丁度そこへ、扉がノックされて、リサがお茶を持って入ってきた。そして勢いよく

「奥様聞いてください、この本なんですが、リンドン伯爵邸で働いている私の友人から借りたんです」

 と言って渡された本に、私は驚いた

『私の書いた本……』

 と心の中で呟いた。リサによると、リンドン伯爵には外に愛人がいて、その方に子供ができたということで、リサの友人のメイドが、奥様に可愛がられていたこともあって、参考までにとこの本を、そこの伯爵夫人に勧めたという。

 そして夫人はその本を、ご主人である伯爵様に見せたところ、青ざめていたらしい。なぜなら夫人には、まだ子供がいなかったのだ。

 思わず私は

『貴族って、当たり前のように愛人がいるのかしら?』

 と錯覚してしまう。そして、少しでもお役に立てたなら良かったと、嬉しくも感じた。

 その友人は恋愛小説が大好きで、お給金が入ると本に注ぎ込んでいるという。

『大事なお給金をありがとう』

 と心の中で感謝した。

 一通り話し終えたリサは

「この本、侯爵様に進めるように、メイド長に渡しておきます」

 と言ってくれた。

 私はただ、苦笑するしかなかった。なぜなら、リサが私の書いた本の内容を、まるで自分のことのように熱心に説明してくれたからだ。そして、その一生懸命さに申し訳なくも思った。


 それから一月経った頃、何とか二作品目も在庫を抱えない程度には売れたと聞いて、ほっと胸を撫で下ろしていた。

 そして、旦那様の方はというと、今一つ分からないままだ。本は読んだようだが、態度を見る限りでは、見当もつかない。

 もしかしたら、子供ができないように気をつけているのかもしれない。

 だとしても、このまま侯爵家の跡取りを作らないわけにはいかないだろう。

 何せ領地にいるご両親からは、たまに手紙が届いているようだと、リサから聞いていた。いずれは遠縁から養子を取るしかないだろう。しかしそうなれば、私はその時には用済みになる。その日が来た時の為にも、小説家として早く自立しなくてはと思うのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ