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二.車掌

お待たせいたしました。(待ってくれていた人いるのかな…)第二話になります。今の私としては高校生の時に書いていたものを適宜訂正しながら書き写してるだけなのですが、これを高校生だった自分が書いていたのかと思うと少し複雑な気持ちになります。わざわざストーリーを書き直そうとは思いませんが読んでるとイタイところがちらほら、、、まぁ、楽しんでくれたら幸いです。


男は外に出るタイミングを見計らうために扉に耳を当てた。

薄板一枚の向こうからはぶつぶつ何かを言っている声が聞こえてくる。

声からして女性のようだ。

車掌だと思っていたがやってきたのは客らしいと男は思った。


(客なら何とかなるか)


この時、男は固定観念に囚われ、とあることを失念していた。

それは、女性が普通あのような靴音を立てないことであった。


男が扉の外に出ると、そこには肩にかかるほどの長さの滑らかな黒髪をもち、全身を黒の制服でかためた、自身よりも少しばかり背が低い女性の後ろ姿があった。

その姿格好からしてどうやら女性は客ではなく、この列車の車掌らしかった。

しかし、そんなことを差し置いて重大だったのが、まだ顔を見ていないはずなのに男がその女性車掌を目にとめた瞬間、彼女が間違いなく美しいという確信を抱いた、、、抱かされてしまったことであった。


車掌が扉の音か何かに気づいたのか、男の方を振り向くと男の確信は現実に変わった。

振り向く時の所作、異国の女性でも見られない白磁のような肌、均整の取れた顔立ち、それでいて万物を飲み込みそうなほどの漆黒に包まれた瞳、男の捉える彼女の全てが神聖さと犯しがたさをもった天上の美しさであった。


男が全てを忘れ、車掌に見惚れていると、彼女の方が先に声をかけてきた。

どんなに美しい声が聞けるのだろうと無意識のうちに思っていた男だったが、次の瞬間、男は現実へと呼び戻された。


「これ、貴方がやったのですか。」


少し後ろを見るようにした彼女から発せられた声は確かに美しかったが、無表情かつその言葉にはらんだ怒気は男を震え上がらせるのに十二分のものであった。






「分かりました。そういうことにしておきましょう。」

「ふぅ」


車掌の物分かりが案外よかったことに男は安堵する。


あの後、車掌に問い詰められた男は何故か言い逃れる気も起きず、あったことをありのまま話した。

目が覚めたら貨物室にいたこと、床に落ちていた誰かさんの荷物を戻そうとしたら棚が崩壊したこと、自分の責任にされたくなくて隠れたことなどなど。

何か弁償を求められるのではないかと男はびくびくしていたが、経緯を聞いて納得してくれたのか、車掌が男をそれ以上問い詰めることはなかった。

そして、今に至る。


「それにしても、こんなに濃いお客様は初めてです。もしかしたら、、、」

「濃い? あと、もしかしたら、何だ?」


車掌が唐突に妙なことを言ってきたので男は、どういう意味か分からない、と首を傾げた。

それがどれほど異常なことなのかも分からないでいる男に対し、彼女は男の疑問に大層驚いたような表情を浮かべたが、すぐさま感情を消してしまった。

先ほどのも含め彼女が基本的に無表情なのはどうやら素ではなく、取り繕っているものらしいことが男にも分かった。


「貴方がそれらを知る必要はありません。とりあえず、私についてきてください。」


車掌が極めて事務的に男へ言い伝えた後、少し憂鬱げな目をしたが、男は自分が気にすることでもないと思ったので気にしないことにする。


特にこの列車の勝手も分からないので車掌に誘導されるがままについていった男であったが、ふと気になったので男は聞いてみることにする。


「そういえば、この列車どこに向かっているんだ」

「それも、あなたが知る必要はありません。」

「それすら教えてくれないとは、やっぱり、さっきのこと俺のせいだと思ってるだろ」


行き先すら教えてくれない車掌に少し苛立った男は語気を強めてしまう。

男の言葉に反応したのか、車掌が足を止め、振り返った。


「愚人は口を慎め。」


先ほどまでの丁寧な口調はおろか、男の想像を遥かに超えた彼女の悪口に男は言い返そうとするが、不思議と身体震えて声がうまくでなかった。

その実、男は今まで経験したことのない恐怖に心を縛りつけられていた。

彼女に逆らったら死ぬどころか、己の魂が消滅する、そんなことを覚えるほど恐怖であった。


「すまなかった。出過ぎた真似をした。」

「、、、わかったのならよろしい。」


いつの間にか男と車掌の立場は逆転していた。

それほど酷いことを言っただろうか、と男は思ったが再び話しかける勇気は男になく、言われるがままに動いた末に食堂車らしき場所についた。


「此処に座れ。」


彼女は異国風のバーカウンターらしきとこの高椅子を引くとそのように命令してきた。

相変わらずその所作一つ一つは稀にすら見ないほど洗練されていたが、先ほどの恐怖がまだ心に巣食っている男にとっては怒らせないことの方が肝要でさほど気にならなかった。

言われるまま男が席につくと、


「いずれ別の人が来る。何か飲み物を注文しろ。なんでも出してくれるから好きなものを頼むといい。」


そう言ったきり彼女は無言で出ていってしまった。

心なしか去り際の彼女の眼には涙が浮かんでいるように見えた。


二話目まで書いて思ったことがあります。端的に言えば、こう言うので一話1万字書いてる人凄くねと言うことです。これが文才の差か、、、まぁ、自分の話が短いのはノート一面が一話分だったからですけど。多分次回の更新も来週の土日になると思います。あと、言い忘れていましたが、暇ができた時に書き写しているので投稿時間はブレブレです。ご容赦ください。あと、相変わらず誤字等ありましたら教えていただけると幸いです。

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