009:隠し部屋調査
ここまで読んでいただいた皆様申し訳ございません。
更新する順番に不備がありましたので、008~010を本来予定していた順に更新し直させていただきました。
変更内容は以下の通りです。
008:隠し部屋調査 → 008:姦し会談
009:姦し会談 → 009:隠し部屋調査
010:隠し部屋調査 → 010:隠し部屋の攻略
あらためてお読みいただければ幸いです。引き続き、よろしくお願いいたします。
午後の授業を終え、いつもより長く感じた授業からようやく解放され、放課後は安定の『神条稲荷ダンジョン』へと向かう。
美玖は昨日の疲れを引きずってるということで、今日は珍しくソロ活だ。
神社に到着すると、すごい勢いで駆け寄ってくるメグミ姉さんに捕まった。
な、なんだ?
「ひっくん、ひどいよー。中途半端で帰っちゃうんだもん。お姉ちゃんプンプンだよー」
「えー? ゴメンなさい?」
あれ? メグミ姉さんって、こんな感じのキャラじゃないよね? 今までのイメージは誰も手が届かない憧れの先輩……高嶺の花って感じだったと思うんだけど、どういう理由か今日は甘えん坊キャラに転身?
「ひっくんの代わりに、ハムハム退治をお姉ちゃんがやったんだからねー」
ほっぺたをぷーっと膨らませながら、自分がやったアピールをしてくる。もしかして過労でキャラ崩壊?
「あざっす……ってあれ? メグミ姉さんって戦えたっけ?」
「みくびらないでー。これでも風魔法の使い手なんだからー」
「ほう、な、なんと……。おみそれしやした」
演技がかった返答をしながら、直角に腰を曲げてメグミ姉さんにお辞儀をする。
「くるしゅうない。面をあげよー」
なんだろうな。このキャラは……。昨日、変なアニメでも観たのかな……。
「今日は、昨日みたいに中途半端にしないでね」
メグミ姉さんに両肩をがっしり掴まれて念押しされる。目が真剣過ぎてちょっと怖いと思いつつ、親指を立てて返事をする。
「大丈夫。今日はガッツリ倒してくるんで。ダンジョンの開錠よろしくお願いします!」
「はーい!」
調子が狂うなー。まあ可愛らしいから有りってことにしておこうか。ドレッシングルームで準備を整え、早速ダンジョンにインする。
今回は、昨日のお詫びに大量のハムハムを退治するんだけど、それと同時に、他にも隠し通路があるか調査してみようと思っている。ダンジョンの構造から、昨日のジュエルボックスと同じような隠し通路は、まだあるような気がしてるんだよね。全部で七ヵ所、見当をつけている個所があるので、その場所を一通り回ってみる予定。
早速行動開始だ!
M92Fのカスタムガンを手にし、出現するハムハムを次々に倒していく。一匹、二匹、三匹……これで五匹目。入り口からまっすぐ突き当たるところまでで、ハムハム五匹か。なかなかの数が発生していたんだな。メグミ姉さんホントごめん。
それと魔石が三つ手に入った。ハムハム五匹で魔石三つとは、運の数値を上げた影響はなかなか大きい気がする。今日のハムハム退治は目標五十匹としよう。それなら、かなり正確な確率のデータが取れるはず。
まずは突き当たりを左折してから直進し、右へ九十度道が曲がる箇所まで、倒したハムハムの魔石を拾いながら到着。ここが最初の目標場所だ。曲がった道の先に数匹のハムハムが見えたので、ハンドガンで軽く片付ける。遠距離攻撃って、やっぱり便利だな。ただ、魔物がもっと強いダンジョンだと、ちょっと火力が足りない気がする。それは追々考えていかなければ……。
周囲にハムハムの姿が見えなくなったので、ハンドガンをフォルスターに収納し、つるはしに持ち返る。この場所は、昨日見つけたジュエルボックスとは対角線上になる所の壁だ。
大体の見当をつけた辺りをつるはしの先で軽く叩くと、明らかに軽い音がする箇所があることが分かる。その場所へめがけて、今度は力を込めてつるはしの先を叩きこむ。
五回ほど叩き込むと、そこには小さな穴が開き、覗くとその先が空間になっていることが分かる。よっし! 予想通り、この先は隠し通路になっている。テンションが上がったオレは開いた穴を起点に、いつもよりも少しだけ力を込めてつるはしを打ち付け続けると、さほど時間が掛からずに、隠し通路へ人が通り抜けられる程度の穴を開けることができた。
念のため周囲を探り、近くに魔物がいないかを確かめたあと、開けた穴から隠し通路へと自分の身体を移し、背のうから折り畳み式たも網を取り出して、通路の先を確認すると、昨日の隠し通路と同様で、先に進むほど天井が低くなっていた。
とりあえず歩いて行けるところまで進み、途中からほふく前進に切り替えて行けるところまで進み、そこから先の方を確認すると、前方には……やっぱりジュエルボックスらしきものが置かれているのが確認できた。その両脇も昨日の場所と同様、落とし穴になっているようだ。
その場で携帯していたたも網の柄を伸ばし、ジュエルボックスに網を被せる。ジュエルボックスは横幅二十センチ程度しかないので、余裕で網に収まり、つるはしで引き寄せた時と違い、簡単に手前までたぐり寄せることができた。
よっしゃー。二つ目のスキルジュエルをゲット!
ジュエルボックスを手に入れた後、開けた穴の位置まで戻り中身を確認すると、スキル名は『鑑定眼』と表示される。おお、これもまた未発見スキルだな。もしかして壁の中のスキルって、レアなスキルばかりが隠されているのか? いや……『スキル操作』は別として、運数値を上げたことが影響している可能性も捨てきれないか。
まあ、ここで悩んでも仕方ない。検証は後回しにして次の目標に向かおう。スキルジュエルと網を背のうに収納し穴の外へ出ると、遠くの方にハムハムがちらっと眼に入る。少し時間を使いすぎたみたいだな。残りの場所は、隠し通路があるかどうかを確認するだけに留めよう。
次の目標は、この通路をまっすぐ進んだ突き当たりのT字路を、左折して突き当たった場所だ。途中遭遇するハムハムを刈りながら、目標の場所へと向かう。
目的地に到着すると、再びつるはしで軽い音の場所を探す。さすがに三ヵ所目では見当を付けるのがうまくなり、さほど時間をかけることなく空洞と思われる場所が見つかったので、小さな穴が開くまでつるはしを打ち付けていき、隠し通路の所在を確認すると次の北票へと向かう。
これを繰り返すこと七回。
予想した計七カ所を回った結果、合計四ヵ所に隠し通路らしき場所として認識できた。これは、かなりの勝率って言っていいだろう。
一ヵ所は今日ジュエルボックスを回収したので、他の三ヵ所は美玖の予定とすり合わせて、近日中に全てのアイテムを頂きに参ろうか。
☆☆☆☆
ダンジョンから出ると、メグミ姉さんが心配げな顔をして出入口付近に待機していた。あれ、お出迎えかな?
「ひっくん! よかったー無事だー」
ほぇ? いったい何事だ? メグミ姉さんに、すごい勢いで抱きつかれた。
「ダンジョンに入って三時間以上戻ってこないから、心配したんだよー」
そのあと体中を弄られたあと、若干涙目になりながら、超至近距離でオレの目を覗き込んでくる。おおおおっ? ち、近い近い。距離感バグってるってば。
「どこもケガしてない?」
ああ、そうか……。このダンジョンはシンプルかつ魔物が弱いため、一通り回っても約一時間程度で回り終わる。そのダンジョンに通常の三倍以上の時間入ったままだったから、心配になってもおかしくないか。
隠し通路の調査は、思った以上に時間が掛かっていたんだな。すげー心配かけちゃったみたいで、ホント申し訳ございません。
その後、神主さんからもコッテリ絞られてから、今日の成果であるハムハムから回収した魔石を換金した。その数なんと三十二個! ハムハムの魔石って最低評価の魔石で、当然買取価格も低く、一つ五百円にしかならない。でも、数が揃えば一財産。今日一日だけで、一万六千円にもなった。当然、これまでの新記録だ。運値を優先的に上げて正解だったな。
「ひっくん、本当にガッツリ稼いだんだね……」
「へへっ。約束したからね」
ちょっと卑屈に返事をした。でも、これだけ稼げるんなら、このダンジョンを毎日周回するのも悪くないかもな。
物思いにふけながら、魔石換金で頂戴した現金をバッグに収め、ホクホク顔で帰路に就くのだった。