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008:姦し会談

ここまで読んでいただいた皆様申し訳ございません。

更新する順番に不備がありましたので、008~010を本来予定していた順に更新し直させていただきました。

変更内容は以下の通りです。


008:隠し部屋調査 → 008:姦し会談

009:姦し会談   → 009:隠し部屋調査

010:隠し部屋調査 → 010:隠し部屋の攻略


あらためてお読みいただければ幸いです。引き続き、よろしくお願いいたします。

「ほら、美玖っち行くよー。はい、立って、立ってー」

「行きますわよ」


 四時限目終了のチャイムと共に、私は颯希ちゃんと玲ちゃんに両脇を抱えられながら、屋上へと連行される。もう! 完全に捕まった宇宙人みたいじゃない。


「そんなに引っ張らないでよー。ちゃんと着いて行くってば」


 二人とも超早歩き。特に怜ちゃんなんて、いつもはどんな時でも優雅に歩いているイメージなのに、こんなに早く歩けたんだって感心しちゃうよ。


 終始引きずられるように屋上まで連れていかれると、いくつか設置されているウッドベンチのうち、一番奥の方に設置されているベンチの中央に座らされ、颯希ちゃんと玲ちゃんは私を挟むように両脇に座る。


 このベンチはゆったりめの二人用サイズだから、女の子同士でも三人で座ってもギリ座ることはできる。だけどね、やっぱりちょっと窮屈。二人は完全に私に密着しちゃってるんだもん。そんなに密着しなくたって逃げないってば。

 しかもランチミーティングって言ったよね。誰もお昼ご飯を持ってないよ。


「あのぉ、ランチミーティングのはずじゃあ……」


「お昼を買いに行くのはあとあと。買ってからじゃ、他の生徒も来ちゃうっしょ。他人に話聞かれちゃったらマズくない?」

「そうですわね。それに、わたくしは長時間日差しの下で過ごすのはご遠慮しますわ。話を聞かせていただきましたら、教室へ戻りますので」


 うんうん、そうだね玲ちゃん。今日は日差し強いもんね。颯希ちゃんもナイス判断!


「で、美玖っち。何があった?」


 両脇から、興味津々に私の顔を覗き込んでくる二人。超至近距離まで接近してくるから、同性なのにドキドキしちゃうよ。


「え、えっと……」

「何もなかったなんて言わせないよ。朝の二人の様子は、完全にいつもと違ってたからね」


 うーん、どこまで話していいんだろうか。

 輝からは、さっきスマホに「パーティーメンバーには、スキルの内容を共有していいよ」って、連絡が来ていたんだけど……。あーん、でも二人が知りたいことって、スキルのことじゃなくって、私たちの間に何かあったんじゃないかってことだよね……。


 昨日の状況が私の中で整理も消化もできてないから、どう説明すればいいのやら……。最初から順を追って話してみようかな。


「えっと……昨日、輝とダンジョンに行ったんだけど……」

「うんうん」

「あっ、その前に駐輪場に黒原がいて、輝が絡まれたんだけど、それが傑作でさぁ……」

「ちょ、まって、まって、まって。美玖っち、話下手か! そのペースはないない」


 いきなりのダメ出し。何がダメか私にも分かる。黒原の話なんていらないわよね。


「ごめんー。だって、どう話していいか分からなくって、私だってパニックなんだよぉ」

「颯希様。美玖様は昨日起きた現実を、頭の中が整理しきれてない様子。颯希様から、質問形式でお聞きするのはいかがかしら」


 どうすれば得たい情報を素早く引き出せるのか、居住まいを正し意見を述べる玲。


「お! さすが玲っち。そだねー。じゃあ端的に聞いちゃおうかな」


 颯希は、自分の手をマイクに見立てて私に向けてくる。


「ではでは質問! 美玖っちは、昨日輝っちとエッチしましたか」

「な、な、な……い、いきなり?」


 超ドストレートな質問に、昨日のことが頭に浮かび、顔がどんどんと紅潮していく。


「なんか今朝の二人、いつもと違ったんだよね……。ほらほら、時間は有限。回答ぷりーず!」

「え……と……し、しま、しま、しま、しま……」

「ウマ? どうした美玖っち、ほらほら、回答~」

「ち、ちが……しま、した?」


 急かされて、追いつめられて、混乱する私……。誤魔化すとかも考えられなくなっちゃって、素直に白状しちゃったよ。いやーん、恥ずかしい……。

 あれっ? 二人ともどうして無反応? 私の回答にぽかーんと口を開けて、こちらを見呆けてる。

 特に怜ちゃんのそんな顔は、とても新鮮だけど他のクラスメートには見せちゃいけないやつ。


「ちょ、ちょっと、二人とも?」

「えっ、あっ! お、驚いたー。マジか~。急転直下!! み、美玖っち、いきなりの初体験? お、おめー。幼馴染くんのこと、スキ言ってたもんね。とりま、よきー」


 フリーズから復帰すると、喜びながら私にハグ! いや、そんなにギューッとされたらキツイって颯希ちゃん!

 颯希ちゃんだってかなりのスキル持ちなのを自覚して。これはハグを通り越してベアハグだからね。

 その傍らで、生暖かい目で見守る玲ちゃん。


「念願が叶いましたわね。おめでとうございます。式の日取りが決まりましたらお知らせくださいませ」

「いやいや玲ちゃん、気が早いからね!」


 私が輝のことが好きってことは二人とも認識済み。

 輝が私の中で、ただの幼馴染から異性に昇格したのは、中学校二年生になったころだったかな。

 二人の関係を拗らせたくなくて、この気持ちは心に閉まっていたけど、高校に進学してから仲良くなった颯希ちゃんと玲ちゃんに隠し通すことはできなかった。というより瞬殺だったわね。あっという間にバレちゃったもん。

 とは言っても特に何かするってわけじゃなくて、二人は私たちのことを今まで見守っていてくれたんだけど、それがついに念願かなったことで、私以上に二人は喜んでくれてるみたい。


「じゃ、じゃあ次の質問は、いつ、どんな感じでそんな甘々な状況になったの?」


 その回答なら悩まないわよ。


「うーん。甘々っていうのじゃなかったかな……。昨日ダンジョンで、輝が新しいスキルを手に入れたから?」

「「ん?」」


 ちょっと戸惑い気味の颯希ちゃんと玲ちゃん。ここに吹き出しがあったとしたら、二人の吹き出しには「???」って浮かんでいるんだと思う。


「どゆこと? 初スキルゲットおめー。お祝いでエッチしちゃおーって感じ?」


 多分颯希ちゃんは、ラブラブな雰囲気からのエッチな流れへ……って予想しているのかな? 


「うーんと、ちょっと違くって……。ダンジョンで手に入ったのが『スキル操作』っていうスキルで……」

「そんなスキルは今まで聞いたことがありませんわね。それはそれで興味深いですわ……」


 やっぱり珍しいスキルなのね。玲ちゃんでも聞いたことがないスキルなのか。


「その場で輝がスキルを使用したら、当然その内容がどんなものか分かるじゃない? そしたらそのスキル、自分や他人のステータスを上げたり、持ってるスキルを強化できることが分かったんだって。ただ、そのスキルを使うには、ちょっと特殊で……」

「うんうん、それで?」

「なんか、エ、エッチした状態じゃないと強化できないとかで、それで輝にお願いされて……」


 衝撃の内容に再び二人ともぽかーーん顔。


「へっ? なにそれ。告られてとかじゃなく? それでエッチしちゃったと?」

「いささか驚きましたわ。美玖様はそれでご納得されたのでしょうか」


 あれ? なんか二人共憤慨って感じ? 颯希ちゃんは眉間にしわを寄せて、玲ちゃんの顔からは感情が消えてる……怖っ。

 それからすぐに声を上げたのは颯希ちゃん。


「なんか納得いかない! ぶん殴ってやるー。輝っちをすぐ呼んで!!」

「わっ、違うの、違くないけど、ま、待って颯希ちゃん。私も最終的には納得したことなんだから……」


 颯希ちゃんのものすごい剣幕に、私、戸惑いまくり。うーん、どうしようどうしよう。


「こ、こ、こ、ここは一旦冷静になりまして、お話をお聞きいたしましょう……」


 こ、こ、こって、いつも冷静な玲ちゃんの言葉まで乱れて、颯希ちゃんのすごい剣幕に、ニワトリみたいになっちゃってるし。


「エッチしたことは、納得してのことだからいいの。ただ、輝がスキルを使った直後、いきなり「美玖さん、オレとエッチしてみませんか」なんていうから……」

「うんうん……」

「その言葉にビックリしちゃって、思いっきり平手打ちしちゃった」

「美玖っち!」「美玖様?」


 今日一驚きの声。

 輝のエッチしないか宣言よりも、スキル持ちがスキルなしの人に対して、思いっきり平手打ちしたって方が衝撃的だったらしい。確かにスキル持ちの私が思いっきりビンタするのはちょっとヤバかったかも。


「輝っちは死んでないよね? あ、朝教室にいたから大丈夫だったか。美玖っち、スキル持ちがスキル持ってない人に、思いっきりはないから……」

「ひ、輝様の首が捥げず、良かったかと存じます」


 あはは……それほどだよねー。私もさすがに少しは反省してるけど、玲ちゃんの発想はちょっと怖いって。


「でもね、スキル操作をする前で良かったんだよ。スキル操作の後だったら、私が所持している攻撃スキルは【攻撃+2】から【攻撃+3】に上がっていたからね」

「「えっ!?」」


 わー、すごく驚いてる。

 それはそうだよね。一応はさっき説明したけど、多分頭の中は追いついていないはず。私だって今までの知識では、そんなことが可能だなんて思ってもみなかったんだから。


「しかし、どのようにしたら、そのようなことが可能なのでしょうか」


 さすが玲ちゃん。『ダンジョンのアイザワ』のご令嬢なだけはあるわね。

 同じスキルを使用しても、数値が合算される訳ではなく、もし【+2】から【+3』に数値を上げるとしたら、【+3』のスキルを新たに使用する以外は方法がないことを把握している故の疑問よね。


「私が初めて攻撃スキルを使用したのが【攻撃+1】だったんだけど、【+1】だと心許ないって聞いたママが、後から【攻撃+2】を買ってきてくれて渡されたんだよね。

 それで私のスキルは上書きされて【攻撃+2】になったんだけど、輝が言うには上書きされた過去のスキルも体内に残っていて【スキル操作】の能力で体内に残っているスキルを今のスキルの加算することができるんだって」


 玲ちゃんは、驚きの表情の後、冷静に分析しているようで、頭の中で纏まるとその疑問を投げかけてくる。


「なるほど。つまりは、先日輝様が手に入れたスキルで、美玖様の持つ【攻撃+2】に、過去に所持していた【攻撃+1】を合成のような行為を行って【攻撃+3】にしたということなのですね……。過程はどうあれ、何と素晴らしいスキルなのでしょうか」


 良かった。玲ちゃんの中では、輝のスキルがどんなものか消化できたみたい。

 思いのほか玲ちゃんの目が好奇心でキラキラしている気がする……。もしかして輝のスキルがビジネス的に有益性を見出したとか? さすがは、ダンジョン関係の大型チェーン店『ダンジョンのアイザワ』経営者のご令嬢だけあるわね。念のため、ステータスについても話しておこうかな。


「それと、レベルって概念があって私は今レベル3だって言ってた」

「レベル……まるでゲームじゃん」


 戸惑いながらもつぶやく颯希ちゃん。私もそうだと思う……。


「だよね。しかも、レベルごとに経験値っていうのがあって、ステータスに割り振って強化できるとかなんとか……。私はよくわからないから詳しくは輝に直で聞いてほしいんだけど、経験値で貰えた数値を割り振って、私のステータスうち、たしか【筋力】【敏捷力】【耐久力】を強化したっていってたよ」

「それは、どのような効果があるのでしょう……」


 半信半疑だけども疑問を投げかけてくる玲ちゃん。


「詳しくはよくわからないって。今度検証のために輝とダンジョンに行く予定だから、詳細が分かったら教えるわね。ただ、輝の予想だと最低でも、筋力=攻撃力。敏捷力=回避。耐久力=ダメージ。辺りには影響あるんじゃないかって」


 二人とも唖然としてる。相当驚いたみたい。今までそんな情報なかったもんね。


「ただ、スキル変更した後に確定するまでの過程がエグくって……。ステータスとかスキルの数値を変更した分だけの時間、性欲と性感度が二倍になるとかで、それが終わるまでとにかくヤバかった……」

「うわ……どんだけその状態だったの?」


 説明しようと昨夜のことを思い出してみる。

 うわっ、昨日の出来事ってかなりすごい状況じゃない?

 思い浮かべるとあまりにも淫らなまぐわりだったことを思い出して、ぷしゅーっと音が鳴っているんじゃないかってほど、私の顔が瞬時に赤面したのが分かる。んんんっ……顔だけじゃなくて、身体全体が羞恥で火照ったみたい。なんか脇の下まで汗ばんでるし……。


「美玖ッち、大丈夫?」

「う、ん。だいじょび……」


 それで、二人が聞きたいのは、性欲と性感が二倍になった時間だったっけ。


「えっと……輝は三十五分間、わ、私は輝よりも少しレベルが低かったから、その時間は輝よりも少し短めだったらしいんだけど……激しすぎたから? 途中から記憶が曖昧なのー」


 曖昧な記憶を辿りながら、昨日の出来事を思い出して説明したんだけど、昨日の行為の説明はさすがにまだ恥ずかしすぎる。何とか説明してみたけど、そろそろ羞恥の限界かも。


「うわぁ、確かにエグいけど、美玖っちは昨日のことを赤裸々に思い出しちゃったでしょ? お顔真っ赤っ」


 うひゃー颯希ちゃん、もう勘弁して……。

 あっ! そういえば一つ気になってたこと……これも伝えないと。


「あとね、なんか不思議なことがあって……」

「なに、なに?」

「今朝起きた時、昨日に比べて輝のことがもっと好きになっている気がしたんだけど……」

「はい? ここへ来て惚気?」


 惚気じゃないのよって伝えたくて無言で私は首を振る。


「そうじゃなくって、何故かわからないんだけど、二人にもスキルの強化を試してもらいたいと思ってる……」

「「えっ……??」」


 驚くよね。言っている私もどうかしてると思ってる。だけど、どうしてか、これが私の正直な気持ち。


「二人とも、もし能力を強化したいなら試してみる? 二人なら、私、全然お勧めする


 スキルを強化するってことは、輝とエッチすることを容認することだもんね。

 常識で考えたら、それを進めるなんてありえない。

 なんでそんな気持ちになっているんだろう。

 おかしいなと思っているのに、輝と二人がエッチするって状況が、そんなに嫌じゃないって思えている。というより、むしろ同じ体験を共有したいと思っている?

 なんか、三人で変な空気になっちゃったよ。ちょっとこの話は先送りにしちゃおうかと、別な話で場を濁してみる。


「あ! そうだ、輝から伝言があったんだった。近いうちに川越ダンジョンへ行こうと思ってるから、みんなに都合をつけてほしいって」


「あ、そ、それは、おっけー」

「か、川越でしたら、もちろんわたくしも参加いたしますわ」


 私の無茶ぶりに、平静を装いながら答えてくれる二人。話が変わってほっとしている感じがハンパないな。


「それで、それはいつ頃になりそう?」


「輝が今、準備でいろいろ仕込んでいるらしいから、あと一、二週間ってところかな」

「了解! 私たちもそれに備え、準備しておくよ」

「じゃあ、そろそろ教室に戻ろうか。その前に私と颯希は購買だね!」


 こんなところで会話を閉め、今日の姦しい会議は終了と相成った。


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お読みいただきありがとうございました。 初投稿作品です。お手柔らかにお願いします!
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