052:ダンジョンの秘密
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今週は予定通り更新できました。
「……」
「……る……」
「……るん……」
気持ち良く寝ている中、微かに女性の声が聞こえる。なんだ、どこから声が聞こえてくるんだ? その声は耳障りが良くて、むしろ子守歌のようで心地よい。
「輝っ! いい加減起きなさい!」
「んぁっ?」
突然の怒声で、オレはビクッとなり飛び起きると、ベッドの脇に少しお怒りモードの美玖と千堂さんが私服で立っていた。
何故にお怒りモードかと聞いてみると、優しく起こすこと約10分。全く起きないためモードを切り替えたとのこと。
「いやーゴメン、ゴメン。昨日は相当体力を消耗していたようで、爆睡しちゃったよ」
子守歌っぽい感じが心地よくて起きれなかったって言うのが少し気恥ずかしかったので、爆睡って体で説明しながら、半分しか目が空かない状態のまま、服に着替えてダンジョンへと出かける準備を進めていく。
「ダンジョンに行く途中でコンビニに寄らせて」
「もしかして朝食?」
「うん、そう」
「それなら!」
むぐっ! 突如、口に何かを入れられた。ほのかに甘い香りと香ばしくも磯の香が混ざり合う感じ。こ、これはっ!
「おにぎり作ってきたから食べて。輝が好きな梅のおにぎりだよー」
「ぶびばど(ありがと)」
うまっ! 一旦着替えの手を止めて、手作りおにぎりを味わう。サイコーかよ!!
一つ目の梅おにぎりを完食した後、衣服を整え追加のおにぎり二つを食しダンジョンへと向かう。川越ダンジョンまつりの獲得魔石でちょっと稼ぎがあったので、たった歩いて15分程度の距離なのに、タクシーという贅沢品を使用して移動した。
神条ダンジョンで藍澤さんとも待ち合わせをしているので、迎えに来てもらうって選択肢もあったんだけど、それはさすがに悪いからね。
☆☆☆
タクシーで神条ダンジョンに到着すると、既に藍澤さんが乗車していると思われる高級ステーションワゴンが三台停車している。
タクシーからオレたちの下車を確認すると、セキュリティーたちと藍澤さんも高級ステーションワゴンから下車しこちらへ向かってくる。
「皆様おはようございます。本日もよろしくお願いいたします」
藍澤さんの、このお嬢様然とした会話も大分慣れっこになってきたな。オレの中では、藍澤さんの個性と認識するようになってきているな。
合流後、オレたちの装備は異空間に閉まったままなので、ドレッシングルームで準備を整えてから、合流した藍澤さんとダンジョン入口へと向かう。
「あれ? ひっくん?? 今日は平日だよ。みんなで学校さぼりなの?」
今日の受付はねえさんに声を掛けられる。今日はねえさんなのか。ラッキー!!
「今日は、振休だよ。オレたちは昨日『川越ダンジョンまつり』に参加したからね」
『川越ダンジョンまつり』は公共のイベントだったので、公立高校のうちの学校は休み扱いになっている。そのことを説明すると、ねえさんも素直に納得する。
「ああ、なるほどね。それじゃ、いってらっしゃい~」
軽い感じでねえさんに見送られながら、オレたち4人はダンジョンへと入っていく。とはいうものの、神条ダンジョンは最低ランクダンジョン……というか、タイニーハムスターしか出現しないので、気を張ることなく目的地である祭壇があった場所への入口に到達する。
その場所を軽く拳で殴ると、明らかに他の壁よりも軽い音が響く。
「アネゴ。この場所を魔銃のフロントでスパイク攻撃してみて」
「了解」
スキル操作のスキルを入手した経緯は、既にみんなへ説明していたので、壁を破壊して隠し通路へと侵入した説明は済んでいる。なので、詳しい説明をすることなく、アネゴは察してすぐに行動する。
ガツンッ!
アネゴが所持する魔獣のフロントを、対象の壁に当てスパイクを起動すると、激しい衝突音と共に、スパイクで打撃した箇所を中心に50センチの範囲にヒビが広がる。
この一回でこの威力……。オレがバールを使って穴開けしたときは、何回振り抜いたんだったっけ? スパイクのパワーに、ちょこっとだけ嫉妬。いやいや、そんなことを考えている場合じゃないな。
ここからはオレのターン! バールを使って最後の仕上げ。人が通り抜けるだけの穴を空けたる……なんて思っているうちに、再度ガツンと打撃音。
アネゴがもう一発スパイクによる打撃を決めていた。と同時に、人が入り込めるだけの大きさの穴が開いた。
オレの仕事がっ!
「おお! 大成功じゃね?」
「これだけの大きさの穴でしたら、問題なく通り抜けられそうですわね。ところで輝様、この先には何がおありになるのでしょうか」
そういえば詳しい話はまだだったな。
今日このダンジョンに来た目的は、隠し通路でスキルジュエルを探していた際に見つけた祭壇がある隠し部屋へ入り、様子を確認することだ。
オレは、このダンジョンに隠されていたスキルジュエルが、何らかのカギになっているのではと考えている。
おそらく隠されていたスキルジュエルは、すべてを回収したと思っているので、再び祭壇に入れば何かが起きると踏んでいる。
そのことを三人に伝えると……。
「なるほどね。でも、何が起きるって予想してるの?」
「それは全く想像できてないんだよ。更に珍しいスキルジュエルが出るとか?」
「うーん……。おっきい宝箱が出て何個が詰まってるとか?」
「ははは……」
本当にその程度だと、苦労の割にショボいと思ってしまい、ついつい乾いた笑いが出てしまったが、それはさておき先に進もうか。
アネゴが明けてくれた穴の淵に、少し張りが残っていたので、その部分を取り出したバールで叩き落とし、侵入する際、障害になりそうな部分を排除し中へとオレは進み、みんなもそれに続く。
中に入ると、全開の侵入時と当然変わらずに、部屋の中央に祭壇っぽいものがある。
「へえ、こんな部屋があったんだ。あれが輝が言っていた祭壇?」
ミクが祭壇に向けて指を向けるので、オレは無言で頷き、その祭壇へと近づいていく。
特に何も起きない? と考えながらも近づいていき、祭壇まであと50cmまで近づいた時、祭壇の中央が光り、そこから微かな擦れる音を出しながら何かがせり出してくる。
「なっ!」
驚いて声を上げるアネゴ。ミクとヒメは驚きの表情で息をのんで立ち竦んでいるが、オレは逆に意気が上がり、祭壇からせり上がったものを確認しようと近づいていく。
せり上がったものを見ると、画面? 操作パネル? なんか液晶パネルのようなものが見える。
画面を見ると、何故か日本語の文字が、点滅しながら表示されている。しかもその内容は……。
「みんな! この画面を見て!!」
オレの掛け声に、ミク、アネゴ、ヒメの三人も駆け寄ってきて、表示された画面を見て驚愕する。
画面最上部には、このダンジョンの位置を示しているのか『狭山』の文字がある。
そうか、ダンジョン名はダンジョン省で命名して管理しているのだったっけ。
ダンジョンの位置名の下には、何やら説明文が続いている。
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『条件が達成されました!!』
『当ダンジョンのダンジョンマスターに四名が任命が完了しました』
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と……。
そして、その下には任命されたであろう人物の名前が表示されている。
表示されている名前は……。
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【天真 輝】
【紅月 美玖】
【千堂 颯希】
【藍澤 玲】
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つまり、オレ達四名全員が任命されたということだ。
「ダンジョンマスター……」
何だよ。ダンジョンマスターって!




