048:決着
大変遅くなりました。
ストーリーの落としどころを試行錯誤してしまいした。
お読みいただければ幸いです。
今年最後の更新となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします!
サイドアームのハンドガンをホルスターから取り出し、ヒールスパイダーに向けてトリガーを絞り、ワンチャージ分の10発を叩き込む。
10発のうち半分の5発がクリティカルヒットとなり、鑑定眼で確認すると、5ポイント分ダメージを与えていた。うん。予想通り効率が悪い。しかも、10発連射しただけで、腕の筋肉が張ってくる。
この調子で討伐まで体力が持つのか分からないけど、他にいい案が浮かばない状況では、とにかく撃ち続けるしかない。
「ヒメ、頼む」
「どうぞ」
全弾を撃ち終えた、本来はヒメに渡していた魔銃を、左手に持って自分の背中へと回すと、後ろで待機しているヒメが受け取りながら、右側から本来オレが使用している魔銃が差し出され、その魔銃を受け取る。
それを五度ほど繰り返したとき、ようやくHPの半分が削れたようで、ヒールスパイダーは二度目のヒール回復を行いはじめる。
本当は、回復中にも追撃するべきなんだけど、腕の筋肉がパンパンなので、オレの腕の筋肉も休憩させながら、左腕の腕の筋肉を軽く揉み解す。
「ヒメの残りMPはまだ大丈夫か?」
「問題ありませんわ。魔銃への注入だけなので、少し余裕がございます。火魔法も若干嗜みますので、隙があれば少し攻撃を試みます」
「ん? いや、それは……」
ヒメの火魔法は確か+3でかなり高いから効果もあるとは思う。恐らくは魔銃のダメージよりも高い。
討伐するまで畳込めるのであれば問題ないんだけど、まだそのタイミングではない。むしろ、この攻撃でヘイトがヒメに向かいかねないから、今はまだ早いから攻撃を控えてもらうことを伝えようとしたのだが、その前にヒールスパイダーの回復が終わり、こちらに攻撃をしようと近づき始めたスピードが想定よりも早かったため、ヒールスパイダーへの攻撃を優先させて、トリガーを三度引いた時、後ろで待機しているヒメの魔法を詠唱する声が聞こえる。
「ファイヤーボール!」
火球がオレの脇を通りヒールスパイダーめがけて飛翔していき、ヒールスパイダーに着弾し爆煙が上がる。
かなりの効果があったようで、ヒールスパイダーはしゃがみ込むような動作を行う。少しひるんでいる感じに見えるが、すぐに立ち直りファイヤーボールが放たれた方角へ身体を向ける。
「まずっ」
魔法一発でヘイトがヒメに向かった。たった一発の効果でも、瞬時に切り替わってしまうほどの威力だと判断したようだ。
ものすごい速さでヒールスパイダーがヒメに近づこうとする。ヒールスパイダーに遠距離攻撃はないため、これまでの位置関係ならもう少しだけ猶予はあるが、もし被弾すればヒメの体力では数発で致命傷になりかねない。
ヒールスパイダーはオレの脇をすり抜けようと移動していくので、自分の身体にヒメを隠すようにヒールスパイダーに向き合うように位置関係を微調整しながら、後退していく。
「ヒメ! オレの真後ろに隠れるようにしながら、少しづつ後退!」
「り、了ッ!」
ヒメを背後に隠し、後退しながらも魔弾を撃ち続ける。
これで少なくとも、ヘイトはオレへと戻るか、ヒメに向かっていたとしても、オレに向かって移動してくるはずだ。
とにかく魔弾を撃ち尽くしたらヒメと魔銃交換を繰り返しダメージを与え続ける。これを繰り返していき、ヒールスパイダーがヒールを使用してから、十回ほど魔銃を撃ち尽くすと、再びヒールスパイダーが自身にヒールを掛け始める。
「やった! あとはダメージを与え続けるだけだ」
夢中で攻撃をし続けていた為、ようやく自分たちのポジションを確認すると、生き埋めになりかけた辺りまで追い詰められていたため、ポジションを入れ替えて、今度は最初に岩を滑落させた場所へ後退しながらの戦闘だ。
撃ち尽くした魔獣をヒメに渡し、MPがチャージされた魔獣を受け取りながらヒメに問いかける。
「あと一息だ。がんばろう」
「はい」
滑落した位置までは約50M弱か……。ギリギリ何とかなるはずだ。というよりも何とかするしかない。
ヒールスパイダーが自身のHP回復を行っているうちに、10M程距離を取る。これで退路限界まで残り40M。
「ヒメ、そろそろ来る!」
ヒールスパイダーの回復が終わり、動き出す気配を感じたため、それをヒメに伝えながら再び魔弾を撃ち続ける。魔弾の単発攻撃のため、ノックバックは起こせていないが、ダメージが起きるクリティカル時には少し躊躇しているのか、これ以上ヒールが出来ないことが分かっているのか、こちらに向かってくる速度は明らかに遅くなっている。
それでも、魔銃3回交換、つまり三チャージ分の魔弾を与えている間に、オレ達は6M程後退している。これで退却できる距離は残り34M。
ヒールスパイダーのHPは、おそらく100HP程度。
1チャージ分の攻撃で5回前後クリティカルヒットになっているので、1回の攻撃で5HPほどダメージを与えているので、6Mの退却でHPを15程度削っている計算だ。このままでは、少しだけHPが残ると思われる。
「ヒメ、退路がなくなった時点で、ファイヤーボールの使用は可能?」
「遣うことは問題ございませんが、対象との距離が近いとこちらにもダメージを受ける可能性がございます」
「なるほど……」
退路がなくなった時点でのヒールスパイダーの巨値はかなり縮まっていそうなんだよな……。
思考を巡らせながらも攻撃を続ける。
魔銃3回分の攻撃が終わる時点で、退路は残り28M。
次の魔銃3回分の攻撃を終え、退路は残り22M。
次の攻撃で退路は残り16M。
次の攻撃で退路は残り10M。まだヒールスパイダーの討伐が終わらなかった時点での対応はまとまらない。
バールかつるはしで殴ってみるか?
できる限り遠くへ行くように殴り飛ばせば、もしオレが倒された場合、ここまでヒールスパイダーの残HPを考えれば、ヒメの魔法でヒールスパイダーの討伐できるかもしれない。
次の攻撃で、ついに退路は残り4M。ヒールスパイダーも目の前だ。魔銃交換を諦め、異空間からバールを取り出そうとしたその時、上部からそこそこ大きな岩が大きな音を立てながら転がってきたかと思うと、何かが射出された音がするとともに、ヒールスパイダーへと何本かの弓矢が降り注ぐ。
何発もの矢がヒールスパイダーへと刺さると同時に、ヒールスパイダーは断末魔を上げながらその場で倒れた後消滅し、そこには【魔石LV5】【攻撃+3】の魔石とスキルジュエルへと変わる。
こ、これが九死に一生を得るってやつか。平和ボケしているといわれている日本国内で、これを実感できるとは思わなかった。
積み上げられた岩の上を見ると、穴から身を乗り出し弓を構えているアイさんの姿。
「玲様、輝様、御無事でなによりです」
そうか。イレギュラーな魔物の出現で、救援隊が送られていたのか。オレは生き延びた安心からか、その場で大の字で寝転び、その横でヒメも膝を付いて一息入れる。
よかったー。何とか生き延びることができたぜ!!




