047:サバイバルゲーム
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ヒメのスキル操作を終えて、目下賢者タイム中……なんだけど、未だにヒメは一糸まとわぬ姿で、仰向けで寝そべっているオレの胸に頭を埋め、うつ伏せ状態で体力回復に勤しんでいる。
「あの……ヒメ? あと数分でタイムリミットなので、そろそろ準備を……」
「……あともう少しだけ……。いけませんでしょうか……」
オレの胸に埋めた頭を上げて、上目遣いで切望するヒメ。
「いや……いけなくはないです?」
絶対断れないやつだよな。
そう思いながらヒメの背中に回している腕に力を加えて、ギュッと抱きしめると、オレを見つめながらヒメは、それに答えるように優しく微笑んでくる。
とりあえず、あと二分くらいこのままでいよう。
だけど、今回のことを考えると反省しかない。
神条ダンジョンで魔銃を簡単に入手でき、スキル操作で容易にスキルアップができるようになったことで、慢心? 過信? 驕り? 命のやり取りが行われるダンジョンで活動しているにもかかわらず、オレは少し舐めているところがあった。
そのせいで、今回はヒメを命の危機にさらしてしまい、ミクやアネゴにも今なお心配をかけているだろう。
このまま舐めプを続けるわけにいかないな。今まではアルバイト感覚で小遣い稼ぎ的に考えていたけど、これからはガチでダンジョン探索にいそしもう。
「ヒメ、今までゴメン」
「何のことでしょうか」
「うん……ダンジョンに向かう姿勢とか?」
何を言われているのか理解できず、きょとんとするヒメ。しばらくして理解が追いつき、納得した表情に変わっていく。
「いずれ覚醒すると思いを巡らせておりましたので、問題ございませんわ」
うん……そんな思考だったのか。
なんだろうか。同じ年齢のはずなのに、ものすごい敗北感……。いや、ヒメの方がダンジョンに関しては遥かに経験値が高いんだよな。これからは、その知識も積極的に吸収していきたいな。
そんな志向を巡らせているうちに、ついにタイムリミットを迎え、異空間から元のダンジョンへと移動する。
異空間からダンジョンへと戻ると、そこから十数メートル先にヒールスパイダーがいるのが確認できた。突然オレ達が現れたことに、ヒールスパイダーも一瞬だけ戸惑ったように見えたが、すぐにこちらを認識して攻撃態勢に入りこちらへ近づいてくる。
上位個体であるヒールスパイダーとの対峙する作戦は、既にヒメに共有済みだ。
ヒメがオレへ、ヘイスト、プロテクション、シールド、ブレス等の、できうる限りのバフ系魔法をかけてオレの戦闘能力を向上させ、ヒールスパイダーには、ポイズン、スロウ等のデバフ系魔法で能力を低下させる。
その後ヒメは、ヒールスパイダーからのヘイトを取らないように応報で待機し、魔法効果が切れれば再び魔法を使用するという算段だ。
異空間から川越ダンジョンのB3の落石があった少し脇に、ヒメとオレの二人は舞い戻る。復帰場所は数メートル単位で設定できるため、今回は落石地点よりも数メートルずらしてダンジョン内に戻る。
本当は、落石があった先へと復帰できれば良かったんだけど、距離的にほんの僅かに足りなかったため、ヒールスパイダーがいる側へと復帰した。
作戦通り、ヒメはオレへとバフ魔法を次々に重ね掛けしていく。
ヘイストでスピードが向上し、プロテクションで防御力アップ、シールドで更に防御力を上げ、ブレストで運値が向上する。
更にヒールスパイダーへは、ポイズンで毒状態にしスロウで行動力を低下させていく。
これで準備完了だ。
オレの武器では攻撃力が低いため、クリティカルにならない限りヒールスパイダーにダメージ与えられない。逆に言えば、ブレスの効果で運が上がるため、クリティカル値が50パーセントを越えたため、グレネード型散弾18発中9発分のダメージが与えられる計算なので、一定数の効果は必ず得られると考えられる。
あとはMPを持つかどうか。
オレの中ではある程度目算はあるので、あとは対峙するヒールスパイダーが予想通りかどうか。これは戦ってみるしか分からない。
ヒメによるヒールスパイダーへのデバフ魔法が掛け終わったタイミングで、オレが本格的に攻撃を開始する。
ヒールスパイダーのHPは、100〜250までの間で、ここまでのダメージを考えると、オレの考えでは何とか討伐可能な目算だ。
グレネード型散弾をヒールスパイダーへと発射しMPをチャージ、そして再度グレネード型散弾を発射。これを繰り返していく。
一度の攻撃で、おおよそのクリティカル率が10発前後。クリティカルでようやく最低ダメージが通るので、一回の攻撃で10前後のダメージを与えている計算か。これを、オレがダメージを受けずに20回強上与えれば、討伐が見えてくるはずだ。
ヒールスパイダーの攻撃をかいくぐり、何とかヒールスパイダーに二度のヒールを使用させる。恐らくは、これが最後のヒールになるはずだ。あとは、HPがゼロになるまでダメージを与え続ければ討伐完了だ。
もう一息のところで、特に油断したわけではない。
ただ、ここでヒールスパイダーは、今まで行った行動とは違う動きでこちらへ攻撃を行ったのだ。
それがフェイントとなり、オレは攻撃を防ぐことができなかった。
いや、直接のダメージはなく、ヒールスパイダーの攻撃を何とか所持している武器で受けることができた。
しかし、このために武器が破損してしまったようで、グレネード型散弾も通常の魔弾も発射することができなくなってしまったのだ。
くそっ。ようやく討伐が見えたところで武器が破損してしまうとは。
修理ができるかどうかは分からないけど、二十式小銃のストラップを邪魔にならないように背中へ行くように調整し、サイドアームのハンドガンを取り出す。
あともう一息、これでなんとかなるのかどうか……。
とにかくベストを尽くすしかない。




