014:パーティーメンバーで神条ダンジョンへ
今朝、神条ダンジョンで、吸収アイテム【M92F(魔銃化)】を無事手に入れることができたので、再度パーティーメンバーを招集することにした。ついに念願の川越ダンジョンへ行く日程を決めるためだ。
ホームルーム前に軽く打ち合わせしようかと思い、早々、美玖、千堂さん、藍澤さん三人に声を掛けたんだけど、千堂さんの様子が明らかにおかしい。オレに対する距離感が完全にバグってるんだ。
そもそも声を掛ける前に、教室に入ってオレを見付けるなり、挨拶しながらオレに近づいたかと思うと、オレが座っている椅子に強引に座って半分を陣取ると、オレの身体に身を委ねてくる。
いやいや、近い近いって! 千堂さんから香る、女の子のいい匂いで酔いそうだから
。
「なんか輝っちのそば、昨日のあのあとから何故か心地いいんだよねー。美玖っちが言ってたこと、分かる~」
「千堂さん? 美玖? そ、それって?」
「えっ、それは~」
千堂さんが周囲を見渡しながら、美玖にアイコンタクトする……。
「ここじゃ言えない、ね、美玖っち!」
「だ、だねっ」
みんなには聞かせられないってことなのか? 美玖も控えめに否定してるってことは、なんか恥ずかしいこと? 千堂さんが昨日のあのあとって言ってるから、スキル操作にかかわることなのかもしれない。
んっ、もしかしてあれか。ステータスに追加されていた【依存協調】の効果なのか?
「そ、それで川越ダンジョンに行く件なんだけど、今週の土曜日、みんなの都合はどうかな」
「あーしはいいよ」
オレに密着したまま即答する千堂さん。
「わたくしも問題ございません」
「もちろん私もね」
藍澤さんも美玖も問題なし。
「じゃあ、出来れば今日の午後、神条ダンジョンでみんなの装備を確認したいんだけど、都合はどう?」
「承知しました。一旦帰宅してから直接ダンジョンへは赴きますわ」
「あーしも帰宅後装備を持って直で行くわ」
おおっ! 思った以上にフットワークが軽いな。超、助かる。
「それじゃあ今日の放課後、神条ダンジョン前に十六時集合で大丈夫そう?」
「問題ありません」
「りょっ!」
早々に放課後の活動方針が確定し、そろそろホームルームの時間が近づいてきたので、いったん解散しようとしたその時、邪魔者が侵入してきた。
「おいおい、そんな奴に無駄な時間を使って大丈夫なのか!」
朝から黒原のカットインかよ。
美玖と千堂さんはめっちゃ不快そうな顔をしている。藍澤さんは、無表情で完全スルーの体勢だ。
「スキルなしと川越ダンジョンに行っても、何の成果も得られないだろ? そいつのチームなんて、さっさと見切りつけた方がいいんじゃねーか。へへへっ。三人なら、いつでも俺らのチームに迎えてやるぜぇ!」
なんなんだ。こいつの自信。
三人とも、完全にお前には興味ない感、丸出しなのに……。
そもそも千堂さんと藍澤さんは、しっかりとしたチームに所属しているんだから、お前のチームじゃ役不足だろう。
「だいたいお前が普段行ってるダンジョンと違って、本物のダンジョンじゃ命の危険だってあるんだぜ。お前は、まさか三人に守られながらダンジョンに入るつもりか?」
「いやいや、そんなつもりないから」
「そうなるんだよ! このスキルなしが!!」
そう言いながら、座っているオレの肩を思いっきり突き飛ばす。
「いてっ、何すんだよ!」
「なっ!」
今までならば、黒原に突き飛ばされた時点で吹っ飛ばされていただろう。だけど、そうならなかったことに驚く黒原。
先日手に入れたスキル【攻撃+2】【防御+2】の効果で少し衝撃を受けた程度で済んだみたいだ。まあ、痛かったので思わず声は出ちゃったけどね。
「へっ? いったいどうして……」
この状況にガチで驚きを隠せない黒原。何かをオレに言いかけようとしたところで、ちょうど担任が教室へ入ってきた為に、ウザ絡みは強制的に終了した。
「ちっ! 覚えてろよ」
お約束の捨て台詞。おつー。
☆☆☆
放課後になり、帰宅前に黒原がまた絡んでくるかと思ったら、奴は早々に下校していったようで絡まれることはなかった。なんか珍しいことがあるもんだな。
今朝のことがあったから絶対執拗に絡んでくると思ったんだけど、まあラッキーってことで。
オレはいつもの装備、美玖も安定のジャージ姿……。よく考えたら、美玖の装備は考えないといかんな。川越ダンジョンもジャージ姿なんてありえないし。もう少し考えてみるか。
取りあえずオレ達は、いつも通り自転車で神条ダンジョンへ向かった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次の更新は月曜日21時を予定しています。




