001:運命の日
初投稿作品になります。
しばらくは週2回の更新ペースでの投稿予定です。
皆様、よろしくお願いいたします。
どうしてこうなった?
午後八時半過ぎ。
幼馴染の紅月美玖は、淡いピンクのキャミソールに白のショートパンツというエロっちい姿で、オレの部屋にあるパイプベッド上で両膝とお尻をペタンとくっつけて座る姿……いわゆるぺたんこ座りで占有している。
生まれてから今日まで約十六年は、まるで姉弟のように過ごしていて、これまでは意識してなかったけど、目はパッチリでふたえまぶた、まつ毛も長く、口角が上がり少しプリッとした唇。あらためて意識すると、美玖ってかなり整った顔つきで、しかもオレのタイプだったりするかも。なんで今まで気付かなかったんだろうか……。
近すぎる関係だったからって、オレの目はとんでもなく節穴だったのかもな。今なら、校内の可愛い娘ランキングで三本の指に入るというのも納得だ。
しかも、庇護欲抜群の百五十センチにも満たない小柄なボディとはうらはらに、Dカップはあろうかってほどの豊満なバスト、キュッとひきしまったヒップ。身長とスタイルとのギャップは破壊力抜群すぎる。
美玖とオレとは生まれた時から家が隣同士。しかも、美玖は8月4日生まれ、オレは翌日5日生まれ。状況的には運命の糸が絡み合っているといっても過言じゃない!
とはいっても美玖の家はセキュリティ万全の大豪邸。うちはその隣にたたずむ安アパート住まい。しかもその安アパートは紅月家の不動産の一つだってんだから、ヒエラルキー的に全く釣り合いが取れていないのに、幼馴染ってのは色々超越するんだな。
話を戻して……
何故、美玖がエロっちい姿でオレのベッドに居るのか。
それは日課にしているダンジョン探索で、偶然にも隠し通路を発見して、そこでとんでもないスキルジュエルを手にしたことがことの発端だ。
スキルジュエルとは、直径5センチ程度の大きさで球状をしていて、使用するとそこに保有されていたスキルが使用者へと譲渡され、それ以降スキルジュエルに保有されていた能力を授かることができるという不思議なアイテムで、ダンジョン探索者にとって、非常に価値あるアイテムの一つだ。
そんな中【スキル操作+1】というスキルを手に入れてしまった。
これがどんなにすごいことなのかというと……。
通常流通しているスキルジュエルは、ダンジョン省の管理下でその内容は広く共有されるんだが、今回発見したスキルジュエルにはどこにも情報が開示されていない。つまりこのスキルは、これまでは誰も流通させていないスキルか、もしくは何らかの理由で秘匿されたスキルだと思われる。つまり、レア中のレアなアイテムってことだ。
通常のスキルであれば【+1】は大して価値があるスキルではなく、専門店に行けば数万程度で入手が可能だけど、未知のスキルであれば話は別。もしこのスキルジュエルをオークションに出品したとしたら、間違いなく高額での落札が約束されていると言っても過言ではない。
過去に、初見スキルがオークションに出品された時には、当時の最高落札価格を更新した経緯がある。
生活の足しにダンジョン探索をしているオレとしては、本来ならオークションでかけるとか、換金しちゃいたいところなんだけど、このスキルだけは手放しちゃいけないと感じるんだよね。
おそらくだけど、このスキルはその名の通り身体強化が行えるスキルじゃないかと推察している。だとしたら、今はまだ生活の為だが将来はダンジョン探索を生業にしようと考えているオレとしては、間違いなく役立つスキルになるはずだ。
今回に限って言えば、目先のお金よりも未来を見据えるべき。将来への投資と考えれば、ここは決断の時だ。問題があるとしたら、ダンジョンに同行した美玖がどう思っているか。もし美玖が、このスキルジュエルの所有権を主張したら、お互い納得するまで話し合わなければならない。
所有権で揉めないために、覚悟を決め美玖に相談したところ、心配は全くの杞憂であっさり所有権を放棄した。
美玖曰く、今回のダンジョン探索にはほとんど貢献していない。今日もいつも通り同行しただけだし……なんだって。だから、今回ゲットした全てのアイテム類の処遇についてはオレに一任、というより今回入手した全てのアイテム類の所有権はオレにあるって考えているらしい。なんともイケメンな娘なんだ。
でも、いずれこの恩はのしをつけて返すからなと心の中で誓い、今回はありがたく使わせてもらおう。
スキルジュエルの使用するためジュエルを手に持ち、事前に調べた使用方法の通り使用するイメージを頭に浮かべる。
すると、オーブがジワリと発光しはじめたかと思った瞬間、その光が広がりながらオレの身体全身を包み込んでいく。
知識としては持っていたけど、実際に自分に起きてみると少し驚くな。美玖はと言うと……さすが美玖。これまで何度もスキルを使用した経験があるからか、慣れたものって感じで、全く動じる気配がない。
次第にスキルがオレの身体に馴染んだようで、身体全体が書き換えられて別物に変貌していく違和感と【スキル操作】の情報が流れ込み、頭の中にその内容が頭に浮かぶ。
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所持者:天真 輝
■スキル名:スキル操作
■スキルの操作方法
・各スキル横の[▲][▼]で数値変更できます
生●器を接続すると自身と接続先のスキルが表示されます
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なるほど、なるほど。[▲][▼]でスキルの数値を変更するなんて、何だかまるでゲームだな。
それで変更したいスキルの表示は、なになに、●殖器を接続すると……自身と接続先のスキルが表示され……ます?……は、はいっ?
なっ、なんだこのスキル???
推察通りスキルの操作が可能なスキルだった。それは問題ない、そこは予想通りだったよ。だけど、オレの予想を遙かに超えたトンデモナイスキルだったよ。
生殖●を接続するってなに? そ、それってエッチするってことだよね? 陰キャを拗らせてるオレをなめるなよ。最近コミュニケーションをとったことがある女性なんて、うちの母ちゃん、美玖、美玖のお母さんくらいとしか覚えがないんだから、完全に無理ゲーだってば。
いや、そういえば美玖の友達数人となら、コンニチワーとか、ヨロシクーくらいは喋ったぞ。部活動の都合上、同じパーティメンバーに入ってもらった女性たち……たしか千堂さんと藍澤さんと顔合わせしたときにだ。いやー、あれってコミュニケーションを取ったうちに入るのか? そもそも千堂さんや藍澤さんにエッチなことをお願いするってありえない。
「ちょっと輝、どうしたの? 使えそうなスキルじゃなかった?」
おっと、思考の渦に吞み込まれてたわ。
「……あ、ゴ、ゴメン。スキルの内容が、あまりにも規格外すぎて……」
「やったね! そんなにすごいスキルだったんだ。もっと喜びなよ」
「あ、うん……すご、かった……」
歯切れが悪いオレに対して、美玖は完全にハテナ状態なんだけど、オレがなんでこんなに戸惑っているか勘違いしていると思う。初スキルゲットで、自分でもすごいって言ってるのに、喜ばないの? って顔だもんな。
あ……そうだ、美玖なら……。
支離滅裂な思考を廻らせているうちに、ごちゃついた思考の中で何を思って口にしたのか今となっては全く思い出せないんだけど、気が付けばまるでいつも通り他愛もない会話をするように、自然に美玖へトンデモナイ言葉を発してしまう。
「美玖、オレとエッチしてみないか……」
「はい?」
一瞬何を言われたのか理解できずにキョトンとする美玖。次第に美玖の表情から感情が消えたと思ったその直後、オレの頬に衝撃が走ると同時に意識を手放した。美玖の平手がオレの頬を打ち抜いたことを認識する間もなく……。
勘違いしてほしくないのだが、オレは陰キャを自負しているが決して貧弱ではない。身長175センチ、体重68キロ前後でほぼ平均的な体格をしているのだ。それが何で小柄な女性の平手程度で意識をなくしたのか。
それはすべて美玖自身にある。
オレが高校に入学したら、ダンジョン部に所属してダンジョン探索に専念する意思を伝えると、美玖もオレと共にダンジョンへの同行を決めた。
その時、さすがに可愛い一人娘が幼馴染のオレと同行するとはいえ、危険なダンジョンへ行くことを心配した両親が、初心者には不相応なランクの強化系スキルジュエルを渡されて使用したので、すでに美玖は【攻撃+3】【防御+3】のスキルを所持している。
今のところダンジョン探索の貢献度が満たないため、ダンジョンに入るために国から発行されるDーライセンスのランクはオレと同じ最低ランクのFランクだけど、美玖が持つスキルがあれば、最低でもDランクまで取得していてもおかしくないくらいなんだ。
ここで詳しくは語らないけど、Dランクを所持している場合、一日の収入平均十万円を見込める中級ダンジョンで活動することができるので、現時点ですでに成功が約束されているレベルで、単純な強さも一流の格闘家と同等以上と言っても過言ではない。
ちなみに、正確な計算はしてないけど、美玖が使用したスキルジュエルから考察すると、単純な攻撃力だけでも、かよわい女性の体形にもかかわらず余裕でオレを超えている。
その平手打ちのクリーンヒットを食らって一発KOは、さもありなんって感じなのは分かっていただけるかと……。
しばらくして昏倒から復活したオレは、ご立腹の美玖に対し、取得したスキルがどんなものだったかか、スキルジュエルの優位性やメリット、配慮が欠ける言動に対する謝罪諸々を行い、無事入手した【スキル操作】を実証するためにエッチ……もとい、実験につきあって貰える運びになったのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。