異変
2024年7月20日 九州
前々日から沿岸部には霧が発生し、通信障害も発生し、船や飛行機・鉄道さえも運行することができず、九州の経済はマヒ状態となっていた。
そして20日、午前10時ごろ北九州市藍島付近を震源とする最大震度4の地震が発生。この地震は九州全域で震度1以上を観測している。
その直後霧が晴れるもGPSやらなんやらが反応せず、結局変わらなかった。
それよりも重大なことが発覚した。
九州と本州をつなぐ関門トンネルが無くなり、関門海峡大橋だけになっていた。
また、対岸である下関市は今まで門司港から見えていたはずの水族館、ビル、工場、それがすべてなくなっていたのだ。
ネクスコ西日本と警察が関門海峡大橋を渡り、対岸の下関市へと上陸するのだが本来あるはずの高速道路がなく、道が山にめり込んでいた。
その様子がライブ配信された(テレビ・ラジオは復旧)
九州の人々は驚愕し、この問題が解決するまで沿岸部に近づかないように各自治体が市民に要請した。
一方で九州を除く日本国内との連絡が取れないだけでなく、世界とも連絡が取れず、海外サーバーサイトにもアクセスできなくなっていた。福岡にある各国の領事館は本国と連絡が取れず、福岡県庁への問い合わせが多発した。
一方で自衛隊と海上保安庁は臨時で福岡県庁に臨時で司令部を設置し第七管区、第十管区を統合した。航空自衛隊芦屋基地よりT-4練習機2機を離陸させ下関上空と松山市上空へと向かわせた。
門司海上保安部より巡視船くにさきと巡視艇もじかぜ、さとざくらを出港させ海峡警備へとまわした。
「なんだと、九州と連絡が取れないだって?」
内閣総理大臣である広田弘毅は部下からの連絡によって頭を抱える。
「またクーデターなのか」
「分かりませんが。下関より関門海峡に大きな白い橋が架かっていて、門司側には大きな建物がいくつも並んでいるとか、白い船がありえない速度で航行しているとか…」
「どうせ嘘であろう。念のため偵察に行かせろ」
「はっ。小月飛行場から九三式中間練習機を飛ばして偵察に行かせております」
T-4機より
「こちらT-4ワン、下関上空に到着」
「T-4ツーも到着。下関市街地は事前に確認した航空写真と一致しない」
「こちら管制塔了解。偵察を継続せよ」
「了解」
「こちら築城基地管制塔、2時の方向よりunknown2機、これよりF-2をスクランブルさせる。すぐに退避せよ。繰り返す、2時の方向よりunknown、すぐに退避せよ」
「了解。unknown視認、プロペラ機だ。日の丸がついている」
「こちら了解」
「偵察中のT-4より対象はプロペラ機とのこと。武装は不明。日の丸があるとのこと。武装は不明。撮影および警告せよ」
「こちらブラボー1了解」「ブラボー2了解」
2機のF-2は築城基地から飛び立ち、レーダーはプロペラ機と思われるものへ向かう。
目標を見つけ、無線で呼びかけを行うも反応なし。
スピードの差からギリギリで並走を行い写真を撮り、手で合図をする。相手と目が合うが、相手はこちらを2度見し、方向を転換するが、そちらも九州上空であるため、前方へ行き、フレアを発射する。
相手はびっくりしたのか急に高度を下げ下関側へと逃げていく。
F-2のパイロットは迷った。下関側にいっても日本領空である。このまま追跡するのかそれとも諦めるのか。パイロットは管制に質問する。「目標機、下関方面への旋回を確認。指示を求める」
「追跡終了せよ」
「こちらブラボー1了解」「ブラボー2了解」
F-2のパイロットは追跡をやめ帰投する
海上自衛隊
佐世保港には第5護衛隊を除く第2護衛隊、第8護衛隊、第13護衛隊の12隻が集まっていた。第5護衛隊は警備のために佐世保にはいなかった。
そして佐世保から第13護衛隊が関門海峡に派遣された。
陸上自衛隊
以下が九州にいる部隊である。
西部方面総監部(熊本県熊本市東区:健軍駐屯地)
第4師団(福岡県春日市:福岡駐屯地)
第8師団(熊本市北区:北熊本駐屯地)
第2特科団(大分県由布市:湯布院駐屯地)
第2高射特科団(福岡県飯塚市:飯塚駐屯地)
第5施設団(福岡県小郡市:小郡駐屯地)
西部方面混成団(福岡県久留米市:久留米駐屯地)
陸上自衛隊九州補給処(佐賀県神埼郡吉野ヶ里町:目達原駐屯地)
水陸機動団(長崎県佐世保市:相浦駐屯地)
第4師団第40普通科連隊より第4普通科中隊が出動し門司区及び北九州市内の沿岸部警備を開始
遅れて第4師団第4偵察戦闘大隊が関門海峡大橋の警備に派遣された
閣僚会議にて
「海軍機からの報告によりますと、とてつもなく早い飛行機に追われたとのことであります。飛行機には人が操縦しているのを確認済みで、火の玉を放出していたとのことです。海軍機が小月方面に向かうと追跡をやめたとのこと」
「そんなものは九州に配備されておらんぞ」と陸軍大臣の寺内寿一は話す
「海軍にもないぞ」と海軍大臣の永野修身が話す
「それについて何か情報はないのか」
「報告によりますと主翼には日の丸があったとのことです。速さは200キロを大きく上回っていたようで、並走時間もとても短かったようです。火の玉を放出してきた以外に行動は起こしていないそうです」
「とりあえず下関に陸軍と海軍を派遣しよう」
「了解しました」
「海軍ですが予備艦隊以外の佐世保鎮守府に所属している艦隊とは連絡が取れていますので、一旦佐世保に向かわせます」
「分かった」
下関
下関には日本中(九州を除く)の新聞社やマスコミが集まり、対岸の街(門司)の写真を撮影したり地元住民にインタビューしていた。中には関門海峡大橋に登ろうとしてたが山の斜面が大きく、地面もぬかるんでいたため到達は不可能であった。
そんな中、一人の新聞記者が地元の漁師の漁船を借りて、対岸に渡ろうとしていた。
巡視艇もじかぜ
第七管区に所属する巡視艇で関門海峡を監視していた。船体は漁船ほどの大きさで攻撃能力はない。しかし、乗船している海上保安庁職員はもしもの時ように64式7.62mm小銃を装備していた。
「なっ!」
「せ、船長!前方から不審船!」
「電光掲示板点灯!総員ものに捕まれ!」
もじかぜは向かってくる船の横を通り過ぎた後、全速で急旋回し、並走する。
「こちらは日本国海上保安庁。ここから先は警戒区域である。今すぐ引き返せ。繰り返す・・・」
電光掲示板にも同じような内容を表示する。念のため英語・韓国語・中国語でも表示してみるが効果なし。
関門海峡から少し離れたところを警戒していた巡視船くにさきがこちらに来ている姿が見えるが合流してからでは遅かった。船員の一人が64式7.62mm小銃を船体前方へ向け威嚇射撃として発砲を開始した。
びっくりしたのか不明船は急旋回し、下関であろう側へと引き返した。