『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』23
~~~アオナ~~~
ミク:そんじゃ、フローベールで待ってるんよ。
シホ:お願いします。
モエギ:【祝】☆島・脱・出☆
コガネ:ヒャッハー!!!!
ミク:キターーーーーー!!!
シホ:おめでとうございます。
アオナ:無事出れて良かったです。
ミカン:おお、良かった!
チャコ:脱出おめでと~。
アカネ:おめでとうございます! ほっとしました!!
ギンガ:よかったね!おめでとう!
キリ:安心しました、お疲れ様です!
モエギ:ありがと~!!! アオナちゃんありがとうね!
アオナ:いえ、役立って何よりです。
キリ:広い廃墟に到着。ここはどこだろ?
アオナ:丘はあります? あるならそこに居ます。
キリ:あるね、向かうよ。
ログインして城跡から街が見えるところまで移動する。高台から見下ろし、あるものを見て確信する。
待つまでの間、特にすることもないので、瓦礫に座って本を読もう。
「[ストレージ]」
ストレージから、先ほど回収した日記を取り出す。
あの部屋にあった宝飾品はすべて回収できた。時空魔法に、ストレージと同等の魔法が存在し、収容できる容量はこれで無制限になった。その代わり使い勝手が悪く、時空魔法を使用してストレージを開くには、該当するページを5ページほど読み上げなければ開かない。
緊急性の低い装飾品は全部そちらに移動したため、個人ストレージに余裕ができたのは助かった。
戦争の経緯がある程度書かれている。あいにくこの王弟に文才は無いようで、所々話が明後日の方に飛ぶので読みにくいけれど、筆まめなので情報量は多い。
覇者の王笏をめぐって各国が戦争をしていた背景には、魔物の被害が多くなったからだそうだ。
そんな時に何をのんきに戦争と思うけれど、覇者の王笏が完全に機能したら魔物を弱体化させる効果が発揮するそうだ。少なくとも、地上の魔物は活動にかなり制限がかかる。
じゃあ、それぞれの国家が協力して発動させればいいかというとそうではないらしい。影響があるのは、覇者の王笏を手にした王が支配する範囲だけ。その他の国は範囲外となる。
一番良いのは話し合いによって国家を統合し、覇者の王笏を発動。もちろん、各国の王はそれを承諾しない。
当時は領地の拡大と同時に、覇者の王笏の発動条件を満たす争いをしていたようだ。
領地内に魔力溜まりを内包した状態で発動させると魔物の弱体化の効果が高まるようなので、出来るだけ数多く魔力溜まりが国内にある方がよいそうだ。そのための他国への侵略戦争。
……なるほど。おおよそゲームの仕組みが分かった。念のために歴史書を取り出してこの国の周辺地図が書かれたページを探す。
地図を見ていると、砂利の音が聞こえたので黄里先輩かなと顔をあげたら――魔物だ。
人の背丈ほどもある、筋肉質な相手が3体。顔は尖ってるけど耳が見当たらない。サイズが大きいからか、気持ち悪い。
「ストレージ」
距離があるうちに歴史書をストレージに入れると、マジックワンドを手にして魔法に集中する。
相手は数が多いからか、こちらへゆっくりと近づいてくる。
魔法完成。発動させずにダッシュで場所を移動!
背中を向けて全力で城側に戻る。僕の目的地はすぐ近くだから間に合うはず――よし!
「[ダークネス]」
闇魔法の範囲魔法ダークネス。指定した場所を闇で覆う魔法だ。直径2メートルの半球の闇を作り出し、その中に飛び込む。本来なら闇に覆われたこの中だけど、闇視を持つ僕ならただの薄暗い球体だ。
そのうえ、この場所は地下への入口を隠した場所。隠した石をどけて隙間に飛び込む。それから隙間から外を見ると、魔物は困惑してダークネスの周囲を囲んでいる。
「[ファイアボール]」
闇の球体の中で火魔法のスタンダードな攻撃魔法を発動。下から打ち上げると場所がばれるので、マジックワンドを穴の中から上に伸ばし、発動位置を地面から高くして射出!
闇の中から飛び出す炎の弾を避けることができず、1体に当たり燃え盛る。当たったら数秒間は炎が消えないのでかなりのダメージとなる。
1体が闇の中に踏み込んできてその太い腕を振るう。でも、僕はそこにはいないので、相手は闇の中を空振り。僕にとっては近寄ってくれただけのありがたい状態。
「[スタン]」
カゼ魔法が雷魔法と自覚したら覚えた、相手を痺れさせる魔法スタン。距離が遠いと成功率が下がるけれど、これだけ近寄ってくれたので、足首を掴んで直接発動。元の雷魔法レベルが低いので、1メートル離れただけでも成功率が20%にまで下がるんだけど、接触だから……失敗した。
それでも、相手は足を振り払うだけで闇の中から出る様子がない。
「[スタン]」
今度は成功! その場で倒れたのでしばらくは安全。
「[ファイアボール]」
何もしていない1体に向けて攻撃。警戒はしているようだけれど、闇の中からいきなり現れる魔法をよけることはできなかった。
最初にファイアボールを当てた相手は炎から復帰したので、もう一度魔法をぶつけようと思ったところで中断した。
背後から2体とも剣で切られて地面に沈んだ。黄里先輩だ。
僕は闇から出ると、スタンで倒れた魔物にナイフでとどめを刺す。魔物はそれぞれ魔石だけを残して消滅した。特に変わったドロップはなかったか。
「お待たせ。いい具合に穴があったんだね」
ダークネスの効果が切れたので、僕が隠れていた穴を眺めつつ黄里先輩が話す。
「ここが地下の脱出口だったんですよ」
出口を再度瓦礫で塞ぎながら返答をする。こういった使い方ができるから、穴を塞いだほうがいざという時助かる。
「なるほどね。それで、ここはどこかわかる?」
「はい。ここは王都マーキュラスです。コガネ先輩達が今集まってる場所ですね」
高台から見下ろした先に、壊れた噴水が遠くに見えた。あれはきっと待ちあわせに使った場所だろう。少し移動して、噴水を指さし、「あれが待ち合わせの噴水です」と告げる。
「いや……だったら、これは、この街は?」
「未来世界です」
「あー……。なるほど。戦争に負けたのか」
「戦争かどうかは、わからないところですけど」
そのあたり断言できない。僕は戦争に詳しいわけじゃないけど、戦争って住民をひとり残らず街から追い出すだろうか? 占領して、支配して、その土地から金銭を搾取するのが戦争だと思う。搾取は言い過ぎかな?
どちらにしても、この規模の街の住人を戦争に勝ったから排除したり遷都したりするというのは考えられない。戦争以外の別の理由で、この街から消えたんだろう。
「となると、ログで見る限りほとんどのメンバーは過去に居るのか。……会えるのか?」
「そのあたりは、シホ先輩が頼りです」
「シホが? 何かあったっけ」
「僕は、シホ先輩がダンジョン内で時間を渡ったと思ってます」
「あぁ……確かに。出口が違ってるとか言ってたな」
「山も違う見え方でした」
ログに書き込んだ内容で不自然だったのは紫帆先輩だった。雪山が見えるって言ってたのに、合流したのは雪山ではない場所に出た銀華だった。
そうなると、一番怪しいのは途中で入ったダンジョンしかない。
「なるほどな。となると、全員で話し合いか」
「後は、モエギ先輩が未来組か過去組かです」
「とりあえず、その考えをログに書いた方がいいね」
「はい」
ログアウトして書き込み。もちろん、他のメンバーはゲーム中なので、見るのはもっと後になる。
「もどりました。後で見に行きましょう」
「了解。じゃあ、それまで周辺探索するか」
黄里先輩と丘を降りて街に出る。魔物が潜んでいるかと思ったけど、今のところ姿を見せない。
「もっと魔物が居ると思ってました」
瓦礫になった街並みを歩く。ほとんどの家は私の背の高さ程度にまで崩れていて、隙間から遠くが見渡せるけれど魔物の気配はない。
「食料もないし、生えてるのは雑草だけだからね。所々に木があるから、その木の実を取りに来るかどうかじゃないかな」
動物にとって、旨味の無い場所になっているのか。そして、その動物を目当てに魔物が来ることもほぼないと。
「先輩は、この街の状況どう思います?」
「普通じゃないね。執拗に破壊し尽されている」
時々2階建てと思われる場所もあるが、それもほぼすべて崩れ去っている。瓦礫が地上に積み重なり、燃えた跡と思われる汚れもそこら中にある。
残された物も少なく、街の崩壊後に長い時間をかけて物が取りつくされたと思われる。……その割に、城の地下はいろいろと見つかった。
「地下か?」
「ん? 何かあった?」
「いえ。城でのことですが、地下室は荒らされずに残っていたんですよね」
あれだけわかりやすい、移動しやすい瓦礫すら魔物は調べていない。年月が経っている場所とは思えないほど完全な状態で残されていたことに違和感がある。
「うん。あ、そうか。魔物とかは地下を探す習性がない?」
「はい。街に地下室がある場合、残っている可能性があります」
「確かに。探してみるか……いや、悩ましいな」
立ち止まって悩みだした黄里先輩。どうしたんだろ?
「仮に地下室があったとして、現状だとシュレディンガーの猫じゃないかな?」
「あ、そうかもしれません」
地下室の中を見るまでは、何があるか確定しない。これは、過去と連絡を取れる、あるいは戻れる可能性のある私たちにとっては、取れる手段が増える可能性がある。
過去世界で地下室にあることが分かっているアイテムを、未来で回収できる可能性がある。それが、今すぐに地下を見てしまって、中身を確かめてしまった場合、対象アイテムが存在しなかったら過去と今の途中でアイテムがどこかへ移動してしまったと処理される可能性がある。
「お城の地下室、見ない方がよかった気がします」
「それよりも、現在ここに存在しない地下室を作れる可能性のが大きいかもね」
「あ、そうですね!」
そんな方法もできそうだ。となると、過去で取れる手段も色々でてきそう。
「フフッ。アオナちゃんでも驚いた声出すんだね」
「え、出しますよ普通に」
「いや、部活で見たことないから」
「そうでしたか?」
意識したことがないな。まぁ、少ないのは自覚してる。
「それで、どうしようか。MMOだから他のプレイヤーが開ける可能性もあるから配慮しても意味がない可能性もあるけど」
「大型施設や貴族街は見ますか? 真っ先に開けられそうですし、既に中身がない可能性もありますが」
王族の隠れ家は見つからないことが前提なので、地下倉庫のように重要なものを保管する空間とは意味合いが違う。そのため、瓦礫などでしっかり蓋を閉じたからこそ、残っていた可能性がある。
一方でただの保管庫の場合、襲撃を受けたら重要な保管物は持ち運んで逃げ出す可能性もある。急いでいるときは丁寧に扉を閉めるとは思えないから、中身がなくなっていることもあるだろう。
「瓦礫だらけでどこが何の施設跡なのかわからないけどね」
「過去にいるみんなに聞くのが良いかと」
「そうだね、ログ確認ついでに聞いてみよう」
山でスタートした黄里が王都に到着するぐらいなので、他のプレイヤーも多少は王都に来ています。ただ、広いので遭遇していないだけです。




