『テラパレット』05
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黄里先輩が持ってきた手作りクッキーが絶品でした! 10分程度で戻る予定が、思わず30分雑談しちゃったよ。
ゲーム内時間は、だいたい昼。あ、蒼奈が羊さんの小屋を作ってる! 一緒に作ろうよー。
小屋づくりの途中で、茶子が麦の干し草を餌箱に入れているのが見えた。羊さん1頭なら、餌箱に満タンで現実10日は持つらしい。もちろん、慣れてくると多頭飼いするから、餌箱1つでは賄えないけれど、それはまた別の方法で餌やりの効率的な方法があるのだとか。
先輩たちは、多少の助言はするけれど、今できる範囲で頑張れとのこと。
助言といえば、石装備から鉄装備で正常進化らしい。また、制作時の技術や道具で、成功率や魔法付与の効果が変わるようだ。将来的には金属の種類も増えるみたい
石の採掘に向かった銀華が戻ってきた。石窯をもう一つ増やして、生産効率を上げるためだ。石を石材に変化させ、石窯を追加で作る。その後、木炭と赤石をそこへ使うと、鉄材が完成だ!
「ここから武器ってどうするの?」
出来上がった鉄材を持って、銀華が蒼奈に問いかけた。
「金床が必要。それには、まだ鉄が足りない」
となると、みんなで取りに行く方がいいのかもしれない? いや、筋力の問題もあるか。
さっきログアウトしたときにステータスの話をして、私と銀華が近接戦闘、蒼奈が魔法、茶子が弓やナイフの探索寄りで成長させることにした。そのため、鉄を掘れるようになる筋力2まで上げるのは、私と銀華だけなのだ。茶子の場合は、レベルの高い弓を使う場合は筋力が必要になるそうだけど、今は関係ないらしい。
「じゃあ、明日から私とギンガが掘らないとね!」
「僕たちも運搬でそっちに行けばいいと思うよ?」
「松明があれば洞窟内探索できるぞ!」
「じゃあ、作っておくね~」
それから、翌日は鉄掘りと洞窟探検をした。探検といっても、入って割とすぐに行き止まりだったけれど、いくつかアイテムがあってレシピ解放した。探検は一瞬で終わったから、その後ずっと鉄掘りをしていた。
そのあとで、ゲームをログアウトして一度帰宅。家に帰ってからも遊ぶかどうか相談したんだけど、このゲームは学校だけで遊ぶと決めた。
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次の日、また午前の授業のあと、放課後は部活動!
さっそくログインして、今日はついに武器造り!
鉄の剣は、蒼奈と茶子の共同制作。レベルが6にあがり、蒼奈が知性5、茶子が技術5まで上げた。ふたりが揃っていれば、技術5知性5の鉄の剣がなんとか作れるようになったのだ。
最初に金床を作り、そこから鉄の剣を作り始めた。
時間がかかるようなので、銀華と一緒に農作業と、羊さんの世話だ。ちなみに、羊さんの名前は『わたがし』になった。ペットの名前変更アイテムがあるようで、名前を正式に変更した場合、名前を呼んだら返事をして寄ってきてくれるから、入手するのが楽しみだ。
「あ、今日もドロップして偉いねー」
羊さんから、羊毛がドロップしていたので、羊さんの頭を撫でてほめる。羊さんからは、高確率で羊毛がドロップする。低確率で羊の皮と羊の肉がドロップするけれど、だからと言って羊さんが消えるわけじゃない。謎な理由で皮と肉がドロップするのだ。
同じ理由で、豚や牛を飼った場合も、肉やミルクをドロップする。ミルクは、柵の中に液体を入れる容器を作っておくといつの間にかミルクが入っているのだ。まだ見つけてないけれど、動物が増えるのは大歓迎!
集めた羊毛を糸にする。石や丸太もそうだけど、自然から取れた材料を加工しやすい素材に変更するのは、技術も知性も必要ないみたいで、私でもどんどん作れる。もちろん、木材から木炭にすることもできるし、家だって建てられるから素材制作だけじゃないけれど、自分にもできることがあるのは嬉しい。
糸は衣服、袋、丈夫なロープに変えられる。他にも使い道が沢山ありそうなので、率先して作っておきたい素材だ。
小麦の種を植えて、樽から水をすくい水滴マークに水を上げる。この樽は、洞窟の奥に進んだときに発見した樽のレシピから、蒼奈達が作ったものだ。どうやら何者かの古い隠れ家だったようで、壊れた酒樽、古い鉄のダガー、折れた木の弩、崩れた皮の胸当て、ボロボロの布ケープ、割れた毒瓶、焦げた火口箱が見つかった。道具としてはダガーと火口箱が使えるから回収し、残りはレシピ解放をして、そのまま置いていった。
「できたよ~~!」
茶子の声に振り向くと、蒼奈が鉄の剣を持ち上げていた!
急いで近寄って、鉄の剣を見せてもらう。飾り気はないけれど、すごく綺麗な剣が完成してる!
「綺麗だしかっこいいね!」
「うん。腰か背中に自動でくっつくみたい」
受け取った剣は重さはあるけど重すぎもしない。とりあえず、少し持ってから、すぐに銀華に渡した。銀華は両手に持った後、背中に剣をくっつけたら、ぴったりとくっついた。ゲーム的な要素が面白い。
「このまま鉄の剣をもう1本作るけど、ふたりは時間があったら木材集めてほしい。4人分の木の盾を作るから」
木の盾は、知性を上げたら解放されたレシピらしい。もちろん、戦闘に盾は欲しいから、頑張って集めてこよう!
筋力3まで上げたので、木の伐採も順調に進む。一度に運べる量も増えたし、もう少し筋力を上げたい。でも、HPがレベルを上げても上昇しなかったから、こちらもポイントを振らないと上限が変わらないので、戦闘をするのならHPの上限も上げる必要が必ず出てくる。そのあたり見極めたいので、HPも1ポイント使って最大HPが今20になっている。前の倍になってるから、ゴブリン戦でも何度か耐えられそう。
今は銀華とステータスをぴったり合わせているけれど、タンクかアタッカーでそのうち役割が変わるかもしれない。
切った丸太を持ち帰ること2往復。その後木材に変えたところで、鉄の剣の2本目が完成したみたい。それぞれ、私と銀華用の武器として渡された。もう少し装備の準備ができたら、いよいよゴブリンと勝負。
「あ、読める」
夕方、就寝のために部屋に入ると、蒼奈が例の本の表紙が読めると言ってきた。『魔法:【ヒール】取得』のようだ。使い切りで、誰かが『読む』のボタンを押すと本が消えてしまうらしい。
「読めるのがアオナだけなら、アオナが読むしかないよね」
茶子と銀華も、同じ意見のようで頷いている。
「ありがと、じゃあ、読むね」
蒼奈が本を開いて、ボタンを押す。すると一瞬だけ蒼奈がぴかっと光って、手元にあった本がなくなっていた。
「……覚えたと思う。本の中身は、システムに、『【ヒール】、消費MP5』とだけ通知が来た」
「あっさりしてる!」
「だよね~。それと、消費も大きい~」
「使いたかったらMPのステータス上げなさいってことだよね」
「回復量も距離もわからないし、いろいろ試す必要がある」
試しに使ってみようってなったけど、HPが減ってない相手には使えない仕様だ。かといって、HPをわざと減らすこともできない。自分で自分にダメージを与えることができず、PTを組んでいる相手にもダメージ判定がない。かといってPT解除してダメージを与えると、一時的なPT拒否状態になってしまい再度PTを組むのに時間がかかってしまうため、これも現実的ではない。今は何もできないので、みんなで眠って翌日以降にしようって気持ちを切り替えた。
翌日、生産組は防具生産で、私と銀華の探索組は、ポーションの材料となる赤ハーブと青ハーブを探すこととなった。緑ハーブは、草原の草を刈れば出てくることが分かったけれど、まだ赤と青は出てきていない。
「イメージとして、MP回復の青ハーブは難易度高い場所にありそうだよねー」
「うん。赤ハーブはすぐ手に入りそう!」
「チャコが、花畑って言ってなかった?」
「いってた! でも、さっぱりない」
確かに、見渡す限り草原だ。どこまで見ても緑の草しか見えない。馬が居た草原とは別の場所を探索しているが、見える景色は大きな変化がない。片側が海岸で、もう片側が森林。その真ん中を草原が大きく広がっている。
「何か白いのが見えるね?」
その見えている草原の先に、緑色ではない違和感がある。
「また羊か!?」
「ちょっと小さいような……」
そっと近寄ると、白い鳥が居た。小さくて赤いとさか……鶏さん?
もしそうだとしたら、卵と羽毛チャンス!
「小麦はあるよね?」
「もちろん! 試してくるね」
銀華が、草原の中を慎重に、それでいて素早く進む。鶏さんにかなり近寄ったところで、小麦を振っている。
うん、おもったより早く餌に食いついた。羊さんは距離が縮まるのに時間がかかったけれど、鶏さんはあまり迷わずに小麦に近寄ってついばんでいる。
ほどなくして、銀華が鶏さんを捕まえようとするが、するりと躱し、そしてまた小麦をついばむ。もう一度試すが、また躱す。
私も小麦を出す。銀華と挟み撃ちだ!
しばらく奮戦した結果、なんとか銀華が鶏さんを捕まえた。あれだけ逃げ回っていたのに、抱え上げたら急におとなしくなった。
「じゃあ、ギンガが連れていくね!」
そういって、銀華がひとり拠点へと戻っていった。後で撫でよう。私はというと、ハーブ探しの続き! せめて花畑のヒントでもあればいいのに。
草を刈って緑ハーブを集めつつ、ぐるっと歩き回るけど、見つからないー!
アカネ:新ハーブ見つからないから一度戻るね。
ギンガ:わかった、拠点で待つ!
収穫らしい収穫も……いや、鶏さんは良かった。それでも、目的達成できずに戻ることになるとは。
拠点に戻ると、茶子が矢を作っていた。
「チャコって、矢つくれたっけ?」
「さっきまではむり~。鶏ちゃんが来たから、知性に1振ったの~。矢を自作できると便利だからね~」
矢には鳥の羽が必要で、これまで作れなかった。弓を使いたい茶子は、さっそく矢を作るために知性を割り振ったんだね。
「でも、よくそんなにすぐ羽根がドロップしたね?」
「さっきアカネと捕まえるために暴れたから、羽根を落としてたぞ!」
「ええ! 気が付かなかったー」
「すぐギンガが拾ったからな!」
胸を張って威張る銀華。かわいい。でも、そんな方法でもドロップするんだね。
「わたがしと同じ柵でも問題ないみたい。動物同士はケンカしない」
蒼奈が柵によりかかって、中の羊さん……わたがしと鶏さんを眺めながらそういった。しっかり調べて、問題ないとわかったのだろう。これから牛さんや豚さんが増えても、同じ柵でいいのは助かるね。
「アカネ、ギンガ、これ見て~!」
茶子が手をばっと前に出して何か見せてきた。この布は……まさか?
「スカート!?」
「惜しい~」
「むむ……ケープか!」
「あったり~!」
「「ヤッター!!!」」
ついに初期衣装から脱却! Tシャツとハーフパンツで何日頑張ったことか! ケープの色は、白しかない。着色に染料が必要だとか。それでも、初期装備の色はそれぞれ違うから印象は違うし、ケープだけ全員同じ色なのも、お揃い感があって良い。
「服も欲しいけど~、まだ糸が足りない~」
「靴も欲しいよー」
ゲーム序盤だから、まだ快適な生活とは言えない。それでも、一歩一歩進んでいる感じがする。
「盾も4人分作れた。ということで、今日の夜試してみる?」
「そうだね~。装備も揃ってきたことだし、戦ってみよ~」
「ゴブリンリベンジ!」
作戦としては、周辺を明るくして、木の土台を1つ建築。その土台の上に茶子が弓矢を持って待機。私と銀華は近接メイン。蒼奈は、盾の防御主体で、いざとなったら【ヒール】を使う。
ステータスについても話し合った。アオナは、MPを増やす。チャコは余りポイントがない。銀華は筋力を5まで割り振った。私は、筋力を4まであげて、残り1ポイントを技術。技術は、回避や命中率に関係がある重要ステータスだけど、どこまで効果が出るのかは試してみないとわからない。前回と今回のゴブリン戦で比較することにした。
全員レベル6 スキルポイント1
アカネ HP20 MP10 SP10 筋力4 技術2 知性1
アオナ HP10 MP20 SP10 筋力1 技術1 知性5
チャコ HP10 MP10 SP10 筋力1 技術5 知性2
ギンガ HP20 MP10 SP10 筋力5 技術1 知性1
「私だけ最大ステータス4どまりだー」
「ステ振りのあるゲームは難しいね。僕も、攻撃魔法を覚えたら技術に振らないと当たらないと思う」
「スキルポイント、振るところないね~」
「SPは建築だと気にならないな!」
レベル5でスキルポイントを手に入れたけど、スキル振りの項目がない。戦闘や探索のスキルがあるのは知ってるけれど、覚える方法はわからない。
SPも、銀華の言う通り建築するだけなら振らなくても問題ない。ただ、戦闘だとどれだけ減るんだろう。最初は無我夢中で戦ってたし、死んじゃったから残りがどれだけあったのかわからない。
とはいっても、先輩からステータスリセットのアイテムがあることを聞いたので、今は好きなようにやるのが良さそうだ。
それから、ゴブリンの迎撃準備を整えていたら夜が来た。最初は、土台を1つだけのつもりだったけど、2つにした。ゴブリンが来るまで茶子が上にひとりで居るのは暇になるので、みんなで一緒に過ごすために4人が上に登っても座れるくらいの広さを確保したからだ。
技術を上げた茶子の生産速度はすさまじく、土台の組みあがる速度が前とは比べ物にならないほど速かった。
土台の上でおしゃべりしてたら、森の方からゴブリンがやってきた。前と同じく、ゴブリン3体と、ゴブリンシーフ1体。周辺を見回しても、他にはいない。
茶子を残し、3人が地上へ降りる。
「それじゃ、アカネがきついかもしれないけど、予定通りいくね」
「大丈夫! そっちも頑張ってね」
ゴブリンシーフは、前回の銀華がひとりで戦って負けたことを考慮して、蒼奈と銀華のふたりで対処することにした。ゴブリンシーフは、ゴブリン3体を先頭にして、少し離れた後方からついてきている。銀華と蒼奈は、お互い左右から挟むように大周りをしてゴブリンシーフへと向かった。
残り3体は、私と茶子の担当。
ゴブリンシーフに向かったふたりに気を取られているゴブリンが2体いるから、そのうち右端の1体に向かって、鉄の剣を突き刺す。
「私が、相手だ!」
左手に盾を構えて、中央、私から見て左側に居るゴブリンからの防御のために構えていたが、攻撃は来なかった。一度ゴブリンを刺したら、深追いすることなく後退した。無事に3体とも注意を引けたようだ。
予定通り、3体ともこっちに向かってきたから、盾を構えつつ距離を取る。突き刺さなかった2体が駆け寄ってきたので、片方に盾を構え、もう片方は鉄の剣を相手の顔あたりに持ち上げて牽制した。剣を向けた方は一瞬ひるんで止まり、盾側の方はそのまま棍棒で振り下ろし攻撃をしてきたので、盾で受ける。
ひるんだ方へ茶子から矢の援護が飛んで、胴体に命中! 私も、盾で受けた棍棒を押し返してみると、筋力があるおかげか、容易に押し返せた。最初に刺したゴブリンが向かってきたから、追撃はできなかったけれど、ステータスの影響を実感できた!
向かってきたゴブリンに対して、鉄の剣で下から受けられるように構えたけれど、この構えも、前よりスムーズに動けている気がする。構える速度は、筋力と技術のどっちだろう?
縦に振り下ろしてきた棍棒を鉄の剣で受けて、すぐ後ろに下がる。矢を受けたゴブリンも同じように棍棒を振り下ろしてきたのが見えたからだ。
下がって避けたところで、矢を受けたゴブリンが倒れた。よく見ると、胴体に3本矢が刺さっている。胴体が赤色に変わっているので、立ち上がることはなさそう。
「チャコ、ナイス!」
あと2体! って、痛っ! 盾で押し返したゴブリンが足を狙って横薙ぎの攻撃してきた。実際の痛みはないんだけど、ぶつかった衝撃があるから思わず痛く感じた。
HPは少し減ったけれど、まだ半分以上ある。位置を移動して、2体が縦に並ぶような位置取りをする。横に広がられて挟み撃ちされると危ないからね。
正面のゴブリンに向かって剣を突き刺す。横や縦に振った方がダメージが大きいけれど、近寄らせたくないから、自然と突きばかりになってしまう。
もう1体もやってきて、2体同時に相手をするタイミングで、台から降りてきた茶子が
弓から、古い鉄のダガーに持ち替えてやってきた。矢を射つくしたから、近接に切り替えたみたい。
1体を任せて、目の前のゴブリンに集中する。ゴブリンは棍棒を振り下ろしてきたから、体を横に向けて、盾を前に突き出して防ぐ。棍棒が盾をかすって盾を避けるように振り下ろされたけど、あらかじめ横を向いて避けておいたから当たらずに済んだ。
「よっし――あたれ!」
そのまま盾で叩くように押し付けてバランスを崩し、鉄の剣で今度は斜め上から切り込む。うまい具合に肩に当たり、腕と胴体半分が真っ赤になって倒れた。
やっぱり、装備が強いと楽で良い!
茶子の方も、威力はないものの、盾で受けながらダガーを突き刺して、ダメージを与えている。
加勢に入ろうとしたところで、蒼奈と銀華もやってきた。無事にゴブリンシーフを倒したみたい。さすがに4対1ではすぐに決着がついた。盾で押さえて、茶子のダガーでとどめを刺した。
ゴブリンたちは、赤い粒子となって消えていった。最後のゴブリンがコインを1枚ドロップしたけれど、それだけだった。
「お疲れさまー! 何とかなったね」
「シーフにリベンジできた!!」
前回ゴブリンシーフに倒された銀華はすごく嬉しそうに鉄の剣を振り上げている。あのときは悔しかったからなぁ。
「ゴブリンシーフ、巻物をドロップした」
「スキルとかかな~?」
蒼奈がパラりと巻物を開いた。すると視界にUI画面が表示され、これが何の巻物なのかを教えてくれた。
【クエスト:ゴブリン拠点への襲撃】
この時代、午前中で授業は終わることが多いです。苦手な教科の勉強をした場合などは、午前で終わらない人も出ます。授業はシープ内の空間で受け、終了時間は人によって違います。