『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』06
~~~チャコ~~~
「ログイン~」
四角くて何もない真っ白な部屋でログイン~。部屋の一か所に扉があるので、その扉を開けると地上は遥か下に見える。
地上はほとんどが森か平原で、その先を眺めると雪山が見える。
蜜柑先輩が居るんじゃないかな~と思われる雪山だけれど、あの雪山から見える景色で、特徴ある物はなんだろう。というか、雪山の上から見える景色が雪山しかないって時点で、かなり絶望的じゃないかな~?
山の違いは~、ここから右の山は尖ってて、隣がなだらかで、その隣がふたこぶみたいに見える。ふたこぶの山が手前にあるかな?
一度ログアウトしてそれを蜜柑先輩に伝えると、尖った山が何とか見えて、ふたこぶの山がはっきり見えるそうなので、なだらかな山に居るんだろうってことになった。
もう一度山を眺める。奥からなだらかな山、尖った山、ふたこぶ山かな~? もう一度ログアウトしたけど、蜜柑先輩に会えなかったからログだけ残して戻ってきた。
さて、雪山がない山だけど~、見えない。ギンガやキリ先輩が雪のない山らしいんだけど、ここから見える景色で該当する山がない。
遥か向こうにある、かすんで見えない山なのかな? あの山だと雪山なのかどうか判断がつかないから、あり得そう。
この下の森はどこまで続いてるんだろう? 未黒先輩と紫帆先輩が森スタートらしいけれど、ここから探すのは至難の業だ。
「ま~、どうにかするよね~。先輩たちすごいし~」
そうつぶやき、扉を閉めて部屋の中に入る。部屋の中には何もない。
「とりあえず、ステータス~」
ベータの頃の快適空間を取り戻すのは後にして、まずはステータス確認~。成長具合は同じでいいかな。不便なかったし。1年の仲間が戦闘や魔法を頑張ってくれるから、あたしはいつもの役割がベストだね~。自分でもその役割好きだしね。
ということで、ぽちぽちとステータスを決定~。
名前:チャコ 種族:妖精 年齢:15 性別:女
レベル:5 職業:探索者 状態:正常
HP:65/65
MP:135/135
筋力:1
体力:5
耐久:8
敏捷:19
器用:14
精神:13
知力:9
魅力:8
感知:6
ステータスポイント:0
A:1 B:5 C:3
武器:なし
防具:厚手の上着 普通の服 普通のハーフパンツ 普通の靴
スキル:探索1 開錠1 罠解除1 回避1 高速飛行1 妖精魔法1 精神魔法1
固有能力:飛行
特殊能力:無限飛行 妖精の消失 妖精の隠れ家
ストレージ
ナイフ ショートソード
武器や防具はサイズが自動変更するので、探索者の初期装備である厚手の上着をサイズ変更して着たけれど、身長20センチ程度の妖精サイズに小さくなった武器は意味が無いので全部ストレージに収納~。
妖精のピクシーへの転生条件は早々にわかったから~、茜が必死に猫に変身する特殊能力を手に入れている間は暇だったんで転生ガチャをずっとやってたら、特殊能力が3つも引けたのでこれで完了~。初期ボーナスとしてのステータス上昇はなかったけれど、こっちのが断然よかった~。
無限飛行(通常飛行における疲労値消費無し)
妖精の消失(10時間以上拘束されたら10秒間の全物質無敵透過)
妖精の隠れ家(本人と妖精種の友人だけ利用可能な隠し部屋)
無限飛行はピクシーだとわりと良く手に入る能力らしくて、歩きでは他のプレイヤーに追いつけないから必須スキルって言われてる。
消失は捕まえた妖精がいつの間にかいなくなるって寓話の再現らしい。レアスキルなんだけど発動条件が限定的で10秒しかないから人気は低いとか。でも、10秒あれば50メートル突き進めるから、逃げるだけなら便利だと思う。
隠れ家は全然情報がないから手探りだけど、好きな場所で自分だけの部屋が作れるのが便利~。今も上空に部屋を作ってそこで周辺を眺めている。
どんな場所で開いても同じ部屋に入れるから、時間経過のあるストレージって感じかな~? 部屋はレベルが上がると広げたり分割したりすることが可能なのでかなり自由に遊べる。
窓が無いから外を見るためには扉を開けっぱなしにしないと無理だけど、十分破格だよね~
「けど、ここにずっといるわけにもいかないよね~」
マップ転送が行われて、ついさっき部活のみんなで集まったんだけど、誰も一緒になっていないみたい~。部活の目標アチーブは、全員集合。あたしの場合は、移動も簡単だから大きな町にすぐにたどり着けるだろうけれど、他のみんなは大変そう~。
今できることは、大きな町に行って地図を入手することかな~?
隠れ家を出て、山とは反対側へ向けて飛ぶ。高速飛行は疲労するから長時間飛び続けれないので、通常飛行で進む。
……村よりちょっと大きめの街が見えた~。あの街が最初のチェックポイント~。
高度をグッと下げて、街に接近する。城壁があるけれどそれを無視して入れるかな~? 街の上から侵入すると、するりと入れた。飛行タイプの魔物への警戒は大丈夫なのか心配になる。
上空から見ると川沿いに細長く伸びた長方形の街だ。川沿いなので、川が街の中を流れているわけじゃない。中央に長く伸びたやや広め通りに沿うように、木の柱に土壁や漆喰で塗られた壁をした家々が連なっている。お店もいくつかあるけれど、商店街みたいに並んでいるわけじゃない。必要最低限なのかな~?
大通りが見える家の屋根に降りて、様子を見る。まだ昼間だからか、あんまり賑わっていないな~。上空から見たときは、周辺にある畑に人が何人も居たから、まだ外で働いている人が多いのかもね~。
冒険者らしき人も居るけれど、それも数が少ない~。依頼を受けて外にいるのか、そもそも冒険者があまり居ないのかも。
冒険者ギルドはあるのかな? ……あった。遠くから見ると、男性2名がギルド併設の酒場で食事を取っている。この規模の街だと、NPCは畑で働くだろうから、そう考えるとあの人たちはプレイヤーかな~?
屋根から屋根を移動して、冒険者ギルドの中にこっそりと入り込む。堂々と入ればいいんだけど、情報収集って考えると、どうしてもこんな動きになるんだよね~。
「フレンドと全員別れてどうしようもねぇよ!」
「装備も初期装備だし、場所もよくわからないからなぁ」
薄い青髪で瘦せた男性と、濃い茶髪をした背の高そうな男性がテーブルで話をしている。青髪の男性は初期装備にマントのように見えるローブを着て、傍には杖をテーブルに置いている。茶髪の男性は初期装備に革の胸当てを身に着け、腰に剣を佩びている。魔法使いと戦士かな?
これ以外に冒険者は見当たらず、ギルドの受付に人はいない。酒場のカウンターに主人がいるけど、お金も何もないから本格的な情報を集めるのは難しいかもしれない。
あ、酒場の主人と目が合った。こっちに手招きしてる。さすがに冒険者併設の酒場の人は信用できるので、そのままふらふらと飛んで行った。
白髪で顔にしわが目立つ、けど体格はいいおじさんマスターが、小さな小皿の上にパンの欠片を乗せて差し出してきた。
「切って余ったパンだ。食っていけ」
欠片といっても、あたしにとっては一抱えほどもあるパンだ。これだけで3食はいける。
「ありがと~」
ニコニコ笑顔でお礼を言って、今食べる分だけちぎって残りは隠れ家に素早く入れた。そもそも、妖精にしか使えない隠れ家なので、人が隠れ家を認識することは出来ないから、素早く入れる必要があるかは疑問だけれどね~。
パンは黒パン。白パンより硬いけど栄養があって美容にもいいんだよね~。ふわふわのパンは現実ならその辺の店に行けば幾らでもあるけれど、硬くて密度のあるずっしりパンはゲームならではだと思う。
テーブルに座ってパンを食べていると、ミルクピッチャーにミルクを入れて差し出されたので、お礼を言ってありがたく頂く。うまうま。
黒パンはライ麦、エンドウ豆、大麦が同量あるそうなので、栄養はありそうです。さらにゲーム内の食事なので、美味しく補正されています。




