表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あちーぶ!  作者: キル
66/247

『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』36

キリ:固定金属の操作に関して、外部のプログラマーに依頼したみたい。


 天井から降りる最中に、先輩から連絡が来た。


チャコ:パルトって名前ですか~?

ミカン:名前まではわからないな。そいつ工事のやつだっけ、プログラマーなのか?

アカネ:工事の人です。こっちでは部外者っぽいプログラマーさんしてますね。

キリ:その人はどんな依頼を受けてるの?

アカネ:詳細はわからないです。何か事件にかかわってそうではあるんですけど。


 天井から降り、ピザ窯がある会議室へ向かう。会議室に入ると、多少は人が増えていて、ピザの需要も増しているようなので、ピザ作りに参加する。


キリ:こっちのプログラマーは、依頼達成に必要な物として、黄色の制御装置を要求したらしく、それで結果を出したようだね。

チャコ:それって、証拠のようなものありますか~?

ミカン:まだ聞き取り調査だからな。書類まではわからん。

アカネ:何でもいいので証拠があると助かります。

キリ:了解、見つかったら持っていくよ。

アカネ:おねがいします!


 ピザ作りは、そこまで忙しくはない。大ベテランのラネークさんなら、ひとりでも対応できそうだけど、目的はピザ窯の周辺を探索することだ。

 とはいえ、じろじろ見てても何もわからない。ごく普通のピザ窯だからなぁ。


[アカネ]チャコ、わかった?

[チャコ]仕組みはわかったよ~。あとはコントローラーかな?


 すごい。さすが茶子だ。どこを見たらわかるのか全然思いつかない。


「ちょっと離れますね~」


 茶子だけ厨房を離れて、廊下に出ていった。きっとどこかへ確認に行ったのだろう。私はラネークさんと一緒にピザを作り続ける。


[チャコ]床下、けっこう汚い~。

[アカネ]そっちなんだ!?

[チャコ]配線確認のためにね~。


 なぜ床下なのかわからないまま、ピザを作り続けていると茶子が戻ってきた。数分しか経ってないけどもう良いのかな?


[チャコ]奥にある冷蔵庫と壁の隙間の、下の方にボタン発見~。

[アカネ]よく見つけたね! それで、すぐ押すの?

[チャコ]リーマトさんと、あと数人来てくれると良いかな~。

[アカネ]力仕事になるの?

[チャコ]証人のため~。

[アカネ]信用できる大人は必要だよね~。


 そうでなければ、逆に私たちが疑われる可能性もあるからね。

 今度は私が場所を離れて、隣の小会議室でリーマトさんに電話をする。『下位の話』って伝えたら、こっちに来てくれた。3人ほど人を引き連れている。


「この3人は信用できるから大丈夫です」


 との言葉に、私たちの推測と、茶子から聞いた事前準備の説明をする。

 一応、32階の天井から行けるのか聞いてみたら、制御装置を探すときに天井を調べたが、コントロールルームの奥の壁はそのまま天井も壁になっているようだった。


 分担は、私とリーマトさん、職員ふたりが天井の煙突部分へ移動。残ったひとりが、茶子の場所へ移動。

 茶子が操作するときに、念のためボディーガードとして向かう役割なので、ちょっと強そうな男の人が向かう。危険なのは、意図しないタイミングで操作をすることらしい。筋肉質な若い男の人……茶子の好みだろうか?


 それと、移動する前に「ラネークさんは言葉が聞こえないふりをしています」と伝えるのを忘れない。……さすが大人だ、表情に出すことなく頷いている。これでさりげなく茶子の傍にいてくれるだろう。


 分担が決まったら、さっそく行動を開始した。ひとりは茶子の傍へ移動し、私たちは天井裏へ移動。目的地に向けて私が先導して誘導をする。距離はさほどないので、すぐに4人が煙突の周辺を囲むように移動できた。


[アカネ]こっちは配置についたよ。

[チャコ]は~い。隙を見て起動するね~


 しばらく天井裏で待機していると、突然煙突というか、ピザ窯全体がずり下がっていく。その結果、32階にくっついていた煙突部分に大きな隙間ができた。大人の男性でも余裕で入れそうだ。


 さっそく登ろうと手をかけたけど、リーマトさんに目線と手でさえぎられて、職員の2名が先に進んだ。その後に登ったリーマトさんに続いて登る。……意図しないタイミングってこれか。登ってる最中に作動して体が挟まれたら終わりだ。


 登った先には、細長い部屋があった。間違いなく32階のコントロールルームの裏側だろう。立ち上がってすぐ横の壁にはボタンがある。開閉用かな?


 先行して登った2名が先に探索したようだけれど、ほとんど物が無い部屋だった。床には機械がふたつ置いてあるだけで、他に何もない。機械は、ひとつが何らかの通信装置だ。マイクがあるからそうじゃないかと思う。もうひとつが黄色い箱。

 少し埃っぽい黄色い箱は、リーマトさんの家で見せてもらった制御装置の箱によく似ている。これが問題となる下位の制御装置に違いない。


 制御装置と通信装置は、壁の穴から伸びているコードにつながっている。この壁の穴、裏から見ると奥にパネルのようなもので覆われているので、きっと向こうからは少し大きめなコンセントのような物に見えるのかもしれない。


 職員のふたりが、何やら鞄から手袋と機械を取り出し、手袋をはめて黄色の制御装置を機械で調査したあと、小声で「外して問題ありません」と話した。

 それを受けてリーマトさんが頷き、制御装置が取り外される。もひとりの職員は、通信装置を持ち上げ、ふたりともこの部屋を出る。私もそれに続いて部屋から天井裏へ降り、リーマトさんが最後に部屋を出て、31階の小会議室に戻る。


「状況を見てきます」


 リーマトさんは急いで小会議室から外に出て、ここに残ったふたりは、上からおろした機械を袋に入れている。


 茶子の居る会議室に戻ると、ピザ作りは中断していた。ピザ窯の入口の位置が私の膝の高さまで低くなっているので、作るのが難しいといった理由もあるのだろう。


 ラネークさんは茶子を見ているが、その間にはリーマトさんと一緒に来た職員が入っている。私の姿を見た茶子は手を振ってきたので、茶子の居る場所に移動して、ラネークさんを見る。


「ラネークさん、黄色い制御装置は回収しました」


「話は、問題なく聞こえますよね~?」


 ラネークさんを見ながら、自分の服の襟をとんとんと叩いて、バッジで異他飯委員会の会員なのはわかってますよとアピールをする。

 私たちをじっと見た後、あきらめたのか近くの椅子に座る。


「よくわかったね。なぜ――いや、私が未熟だったんだろう。……それで、聞きたいことは?」


「ずいぶん諦めがいいですね?」


「私が設置した機械の影響で多くの人が不幸になっていると知れば、さすがにね。裏切りたくはないが、止めてほしかった気持ちもあった」


 異他飯委員会は人々の食生活が豊かになるのを望む組織なので、誰かを不幸にする出来事とは真逆の考えなんだろう。


「ラネークさんは委員の方ですよね。黄色い制御装置はどんな経緯で設置することになったんですか?」


「もともと、いや、今でも委員会の会員なんだが、センタービルがピザ職人を募集していて、そこの審査に通過してね。配属先が偶然この階だったので、会員の中から私に白羽の矢が立てられたのさ」


「制御装置について何か知ってますか~?」


「その制御装置を、誰がどう作ったのかは知らない。委員会から直接渡されて設置の指示をされただけだったな」


 耳が聞こえない振りをした理由は、ピザ作りの修行時代、集中しすぎて周りの声をシャットダウンした結果、耳が聞こえないのではと言われ、その状況がピザ作りに集中できるようになったため都合がいいと考えて、そう振る舞うようになったそうだ。


 現在ではそれが逆に功を奏して、会議の内容を堂々と盗み聞きできるようになり、異他飯委員会に役立てていたとか。


 通信装置は、黄色い制御装置と一緒に運び込んだようで、設置するときに通信装置で異他飯委員会と連絡を取り合うことで設定をしたようだ。

 3年前は携帯電話の普及も無く、電話線もないここでは無線装置を使う必要があったとか。


「設置後は、定期的に上へ行って管理してました?」


「いや、最初に設置して後はそのままかな。そこまで機械に詳しいわけじゃないからさ。設置したときに余った機械や道具は委員会に戻して手元にはないので、これ以上できることもないからね」


 なるほど……。

 色々考えていると、別の部屋から歓声がドッと沸き上がったのが聞こえた。そしてすぐに部屋に職員が入ってきて、


「システムオールグリーン! 復旧しました!」


 そう叫んで入ってきた瞬間、この部屋に居た職員も大歓声をあげた。


「なおった~!」


 茶子が抱きついてきたのと同時に、状況を理解した。


「やったー!!!」


 これで、孤児院の子たちも安心して過ごせる!


アカネ:先輩、全部のシステム直ったそうです!

ミカン:マジか! やったな!

キリ:ふたりともやるね! 私たちもそろそろ到着するから!

チャコ:待ってます~。


『ストーリーミッション:CLEAR!』

『システム:ストーリーミッションが付近にあります』

 茶子の説明が省略しすぎて茜は理解してませんが、茶子はボタンの隠し位置がわからなかったため、床下を直接見て配線からボタン位置を特定しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ