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あちーぶ!  作者: キル
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『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』34

 下の階へ通じる階段前の扉を強引に開けて、30階に居た職員と一緒に作業を開始した。足りない機材も、28階や29階にあるようなので、それぞれ階段をこじ開けて運搬する。


 この階は情報管理部門と言われているようで、そこの職員さんが一致団結して頑張っている。今の作業が終われば都市の不具合は解消されると予想されてるので、そのために誰もが必死に頑張っている。


 中でも、情報管理部門の長官であるビルグスさんは、汗を拭く暇もなく周りの人に指揮をして頑張っている。あれほど市民のために必死になって頑張ってるのはすごい。さすが長官になるだけのことはあるなぁ。


 私は機械やプログラムはさっぱりわからないけど、運搬係は出来るので下からデリバリー用のバイクを持ってきて運んでいる。運ぶといっても、機材ではなく接続するコードだ。


 32階のリーマトさん達と連絡を取り詳細を詰めた結果、31階の機材を稼働させるために、32階の機材を補助で使うことになった。


 補助で使うにはお互いを接続する必要があるため、小さな換気口からコードを引っ張ってくる必要がある。

 換気口はビルの外にあるため、ビルの外側にバイクを飛ばし、換気口から伸びたコードを空中から受け取って下まで引っ張ってくるのが私の役目だ。もちろん、下から上へコードを引っ張ることもある。


 何度か往復して、準備完了って聞いたので、屋上のエレベーター乗り場に戻り、バイクごと乗り込んで31階へ下がる。

 どんな風に動くか見たいから、バイクを廊下の邪魔にならなさそうな場所に置き、都市型制御装置が配置されている部屋に入った。


 この部屋の、壁際に配置してある機械やモニターの前では、10人以上が作業をしている。その壁際より後ろ側では、テーブルや椅子が散乱している。そのテーブルには持ってきた機械やコードがいくつもまばらに並んでいて、準備が大変だったことがわかる。

 部屋の中央から後方に向けて、大きな棚のような機械が図書館のように沢山並んでいる。こちらも職員が何やらチェックしている。

 廊下を挟んだ反対側の部屋も同じような構成をしているのだけれど、この部屋だけ壁の中央部に、私が持ってきた都市型制御装置を設置する機械が存在する。


 ビルグスさんは廊下を挟んだふたつの部屋を往復していたけれど、ようやく仕事も終わったのか、今はこちらの都市型制御装置のある部屋でパイプ椅子に座って、ハンカチで汗を拭いている。お疲れ様です。

 歩き回っていた職員も今は足を止めて、都市型制御装置付近に視線が集中している。そろそろ動かすようだ。


 室内を案内してくれたお姉さんが、都市型制御装置の前に移動する。後ろのビルグスさんに確認を取ってから電源を入れた。すると、都市型制御装置がなにやら光りだし、職員の人達がそれぞれモニターを確認する。


「土台管理センターの状況が無事に異常を検知しました! 修正値は……」


 異常を検知したのが無事?

 近くの人に聞いたら、先ほどまでは土台が崩れていた状況でも正常だと表示されていたけれど、今は現状を異常だと検知するようになったため、都市環境システムが正常な動作に戻ったってことらしい。


「それじゃあ、地面は治るんですか?」


「それはまた別の作業かな。正常な位置に戻すのは現場での作業が必要だからね。ただ、プレートの固定は指示できるから、落下はもう防げるでしょう」


 それを聞いてほっとする。これ以上の事故はなさそう。

 安心して前を向いたら、新たな叫び声が聞こえてきた。


「T字アーム、及びU字アームが指示通り動作しません! プレートの固定も反応無し!」


 職員が慌ただしく機器を操作するが、状況が好転したと報告する人はいなかった。


『聞こえますか? 32階のリーマトです』


 部屋のスピーカーからリーマトさんの声が聞こえてきた。


『アームの自動制御機能は反応しませんが、手動による制御機能はこちらで掌握しました。よって、今から土台の固定に該当するアームを手動で制御します。各所から追加でモニターとコントローラーをセッティングしてください。手動機能をそれぞれ割り振ります』


 その言葉に、何人かの職員が行動を開始した。


「私も手伝います!」


「アカネちゃんは、ピザ作りお願いしていいかな? 人が増えるから!」


 なるほど。ピザはここの人たちのエネルギーだからね。


「わかりました!」


 ピザ窯がある奥の会議室に向かう。ピザ職人さんに、近くに転がっていた手帳に筆談で『人が沢山来るからピザを焼くよう言われました。一緒にお願いします』と伝えて、一緒にピザ作りを始める。

 ついでに、自己紹介をしておいた。ピッツァイオーロのラネークさん。ピッツァイオーロは、ピザを作る腕が非常に高いピザ職人さんに送られる称号だ。


キリ:護衛艦が来たから土台は安定した!

チャコ:アカネはどこにいるの~?

アカネ:センタービル31階でピザ作ってる!

ミカン:どんな展開だよ。

アカネ:チャコ、リーマトさん経由でここに来れるかもしれない。

チャコ:は~い。電話してみるね~。


 ピザ作りをしていると、ラネークさんのピザ作りの腕がとんでもないことに気が付く。生地を手に取ったと思ったら、もう広がっている。トマトソースも塗りむらがあるように見えたけど、それに合わせてチーズを乗せているようだった。その結果、焼き上がりのトマトソースが均一になるとか、正直レベルが違いすぎる。

 ピザ作りの手さばきに、これがピザ職人の称号、ピッツァイオーロの技なのかと関心してしまう。


 すばやく作ってるつもりだったけど、ピザ職人の壁は高いなぁと考えながら、チーズを手早く乗せると、ラネークさんが親指と人差し指で丸を作ってくれた。

 笑顔で上下に頷いて返事をする。きっとチーズを乗せる配置だけは認められてるのだろう。チーズお爺さんに感謝だ。ソースとの兼ね合いが出来ていないから、チーズお爺さんの評価も普通だったんだろう。あの時はそこまで余裕がなかったけれど、次の機会があればやってみてもいいかもしれない。


 生地を伸ばす作業は茶子たちが生地お婆さんに鍛えられていたから、私は特に上手でもないけど、ラネークさんの手つきを見て学んでいく。持ち方、押さえ方、コルニチョーネの整え方……。何気なく全ての指を自在に動かしながら作っているんだから、ただ押さえたり引っ張ったりする私とは訳が違う。茶子の生地伸ばしにラネークさんが指で丸を作っているのを見ると、対抗心が生まれる。


 トマトソースの塗り方も芸術的と言える。生地の中央に必要分のトマトソースを大きなスプーンですくって乗せたとたんに、さっと回しただけで生地にきれいに広がった。もちろん、チーズを乗せるための塗りむらのようなものはあるが、外周部は完全な円を描いている。私の場合、綺麗な円にするために色々な個所を修正しながら広げているけれど、ラネークさんは細かい修正もなく回しただけで綺麗な円になっているので憧れる。


 焼き方もかなり勉強になる。窯の中にパーラーを差し込んだだけに見えたのに、もう最適な場所にピザが移し替えられている。複数枚を同時に焼いているんだけど、窯の中は温度の差があるため置く場所によって焼ける強さや時間が変わる。それを、パーラーを窯の中で軽く動かすだけで、ピザに必要な熱が当たる最適な場所へと手早く移して焼いている。


 もくもくとピザを作り続ける。その間、職員の人達はピザを食べつつ作業を進めている。機械を扱っているのにピザを食べながらとか、危なくないのかなと思うけれど、器用に作業をしているので、彼らにとっては日常茶飯事なのだろう。


 何枚も作るうちに、茶子が生地を広げ、私がトマトソース、チーズ、バジリコで仕上げ、ラネークさんが焼くという連携ができていた。


「あれ? チャコいつの間に?」


「さっきから居たよ~」


 時計を見ると30分以上は経過していた。


「先輩たちは?」


「アカネから話があったT字アームについて~、所属と関係あるか確認しに行くんだって~」


 そういえば、ピザ作ってる最中にそんな話をした気がする。集中しすぎで覚えてないけど。


「アカネちゃん、チャコちゃん、ピザ1枚ください」


 名前を呼ばれて顔を上げると、リーマトさんが居た。


「リーマトさん! セキュリティはもう解除されたんですか?」


「なんとかね。無事に各所長に連絡して解除してもらえました。それと、突然のデリバリーを無事に届けてくれて助かりました。おかげでセキュリティの段階も大幅に下がりましたし、なにより状況が改善しそうですから」


「こちらこそ、間に合ってよかったです」


『システム:アチーブメント【1枚の価格が10万P以上のピザをデリバリー】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【1枚の価格が100万P以上のピザをデリバリー】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【1枚の価格が1000万P以上のピザをデリバリー】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【1枚の価格が1億P以上のピザをデリバリー】を獲得しました』

『システム:アチーブメント【高額ピザデリバリーマスター】を獲得しました』


ミカン:なんだこの無茶苦茶なアチーブ!

キリ:ふたりとも何したんですか!?

チャコ:あたしはなにもしてないよ~

アカネ:ちょっとしたイベントでね。後で話すよー。


 ピザを延々と焼き続けてた間に、アームを手動で動かす準備が終わったようで、人の流れも勢いが途切れてまばらになってきた。

 そのおかげで、色々考えたり相談できる暇ができた。


[チャコ]アカネ、気が付いてる~?

[アカネ]もちろん!

[チャコ]偶然ってことはないよね~。


 茶子が言いたいのは、ラネークさんの服の襟についているピンバッジだ。先輩たちと同じピンバッジをつけている。ここに居る土木建築部門や情報管理部門の人達は、誰もこのピンバッジを付けていない。

 都市のコントロールセンターに最も近い場所に居る、異他飯委員会のメンバーってだけで、かなり怪しい。


[チャコ]そういえば、ラネークさんって耳が聞こえないわけじゃないよね~?

[アカネ]そうなの!?

[チャコ]ピザが焼ける音に反応してたよ~。

[アカネ]あの忙しい中、よくわかったね!?


 さすが茶子、色々見てるなぁ。

 じゃあ、この人はここで会議が行われた内容も聞こえないふりして色々聞いていたってことかな? 異他飯委員会のスパイだとしたら、すごく優秀だよね。


アカネ:先輩たちって、異他飯委員会のスパイが誰かってわかります?

キリ:さすがにわからないなぁ。

チャコ:それっぽい人がここにいるんですけど~

ミカン:スパイの仕事といえば、情報集めと潜入工作か?

キリ:情報は当然ながら、工作もそこなら何かできそうだね。

ミカン:工作といえば、都市機能への潜入プログラムは複数の戦艦やアームそれぞれにインストールしたわけじゃないらしいぞ。

アカネ:ということは、元となるプログラムを変えたのかな?

チャコ:ピンポイントで全体に影響与えるのは、ここだよね~。

アカネ:ちょっと探索してみようか。

 都市型制御装置は10億P以上なので、金額によるアチーブメントはカンストしてます。他のプレイヤーがやったとして、同じルートは通るわけではありません。今回はかなり運がいい方向に転がった展開でしょう。

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