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あちーぶ!  作者: キル
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『テラパレット』03

 激闘の一夜が明けると、とにかく夜までに出来るだけ家制作を頑張ることにした。


 私と銀華は残った石の斧2本で材木集め。茶子は小麦栽培。蒼奈は生産だ。

 家を建てるにあたって必要なのは、とにかく木材。大量に必要だ。そして、家の条件に必要なのは、床、壁、屋根に、寝床、明かりが必須となる。


 建てる家の間取りだけれど、寝床はひとり2区画のスペースが必要。玄関付近の1区画は何も置けないけど、空間が必要。これで正方形に作ればギリギリ家はできるけれど、収納が存在しないから、外に出した道具類が家に入れられない。

 そのため、もう3区画増やして、4×3の広さの家を建てることにした。その分必要な木材も多くなるから、とにかく切り続けるしかない。


 寝床も、木材と藁を使えば簡易ベッドが作れる。藁に関しては、小麦の収穫を半分にすれば、もう半分は藁として作られる。これも数は必要だけれど、茶子が集中して集めてくれるらしい。茶子は必要な藁を集めたら、家の建築に回る予定だ。

 今回は、パン作りより藁集めの方が重要のようで、蒼奈の、


「レベルが上がりやすい低レベル帯の経験値のために、貴重なパンを消費して生き残るより、死に戻りした方が効率がいい」


 との言葉に3人とも死を覚悟したが、蒼奈が言うには昨日の空腹メーターの下がり具合から、怪我でもしない限りは死ぬことはないだろうとも言ってた。


「アオナ、あとどれだけ?」


「半分超えたあたり……」


 私と銀華が持ってきた丸太を、次々に木材に変えているアオナ。動きが機械化されている……。


「アオナ~~~、藁64本~、作り終わった~~」


 茶子がふらふらしながら、やってきた。


「おつかれ、ありがとうチャコ。少し休憩してて」


「そうする~」


 茶子はそのまま地面に倒れ伏した。うん。さすがに種蒔き、水の運搬、水やり、草抜き、収穫をひとりでやり続けるのは大変だっただろう。ステータスにはない精神的な疲労は大きい。


「アカネ、行くぞ!」


「おー! 頑張ろう!」


 ぐったりしんなりしている茶子を見て、やる気を出す。こっちも頑張らないと!

 最初の内は、銀華とおしゃべりしながら木を切っていたけれど、次第に口数も少なくなってきた。

 空を見ると、太陽が真上に来ている。丸太を運搬したついでに蒼奈に聞いてみた。


「もうお昼すぎるけれど、間に合いそう? まだ土台も完成していないけど」


「わからないけど、材料がないと完成しないから絶対に集めないと。木の家の建築レシピはレベル1で覚えてるし、材料がそろったら全員でかかれば一気に作れると思う。」


 土台の方を見ると、休憩から復帰した茶子が土台を作っている。土台の高さは地面から高くなるように調整してある。1メートルの範囲であれば材料の消費量を変えずに高さを調整できるから、襲撃を考えて高さを高くしたんだろう。ただ、本当に高さが変わることで襲撃の様子が変化するかはわからない。気休めみたいなものだね。


 家の完成が楽しみだなーと、のんきに考えながら振り返ると、必死で考え事をしてる蒼奈がいた。


「……1日が2時間……残り3000秒切る……豆腐建築で52個所……時間が壁と天井120、床180、扉240……運搬……回復時間……あと20分が限度……」


 ……うん、手助けできることは、さぼらずに仕事することだ。


 しばらく銀華と一心不乱に木こりを続け、何度目かの運搬時に蒼奈が


「丸太は集まったよ。後は全員で家の建築しよう」


 と宣言してくれた。ようやく丸太集めが終わったー! そういえば、まだ家の建築したことなかったかも!


「どうやって家の建築するの?」


 蒼奈にそう聞いてみると、実際に建築してみようということで、一緒に土台の上によじ登った。


「材料の近くでUI開くと、建築可能な建物一覧が出てくるよね? それを選ぶと透明なパーツが出てくるから、木の壁を選んで、場所をそこに指定して……そう、透明パーツが出てきた。後はその透明パーツを触って集中し続けたら完成。何人かで一緒に集中すると、制作時間も短縮されるよ」


 おお、結構簡単にできた! これは面白そう。今度は他の物も色々作ってみたくなる。とはいえ、気になることがある。


「でもこれ、高さが低い気がするけど」


「1辺1メートルしかないからね。同じ壁を上にひとつ伸ばして、2メートルの高さで揃えていくよ」


「壁に壁を積み上げるって、強度は大丈夫? 倒れない?」


「ゲームとしては大丈夫。木製だから火には弱そうだけど、強度は普通に押しただけならびくともしない。この壁が終わったら、あそこにある作りかけの玄関を作って、その後は外周を壁で全部覆うから」


 玄関も、2枚の扉パーツが重なってできている。扉は、重ねれば1つの扉に変化するみたいだ。不思議だけど、大きな扉を作るのには便利そう。

 さーて、がんばって家を建てるぞ! まだ土台ができていないところもあるから、そこはまだ壁を作らないように注意しないとね!


 作るのに集中するといっても、基本的に手をかざし続ければ自動的に作業が進行するから、皆とお話しながら作業できるので、非常に楽しい。


「結局、まだ『グルテン好き』がクリアできてないよね」


「『初めてのパン』はアチーブ取れたんだけどね~」


 蒼奈と一緒に、さっき作った壁を集中して作っていく。


「かなり多くパンを作る必要があるかな?」


「作るより食べるかもしれないぞ!」


「あ~、そうかも~」


 茶子と銀華は、ふたりで土台を作っている。あと2ブロックで床は完成っぽいから、すぐ壁作りに合流できそうだ。

 ふと目に入った空腹ゲージは3割ほどだ。みんなはどうなんだろ。


「みんなの空腹ゲージって、どれくらい残ってる?」


「残り3割」


 蒼奈が応え、他のふたりも同じく頷く。


「同じだね……今のうちにパン作っておいた方がいいのかな? 家の作業も軌道に乗ったし」


「家が完成してからね」


「アオナが空腹に厳しい……」


「家ができたら、アカネとギンガは藁や斧などのアイテム運び込み。チャコはパン焼き。僕は石ランタンにチェストの作成と、まだまだやることいっぱいあるから」


「さすがアオナ、予定が目白押しだ!」


 予定や指針は蒼奈が考えることが多い。とはいえ、転生の失敗のように、定期的にポカるのも蒼奈っぽさがある。


「そういえば、明かりが無いと家判定されないんだったね、石ランタンがそうなんだ」


「うん。松明と違って、設置しても何かに燃え移らないから、木の家に設置する明かりには最適。そのかわり、持ち歩けないけど」


 さっきの壁が作り終わって、作りかけの玄関となる扉に向かい、蒼奈と一緒に集中して作っていく。


「アオナ。土台って少し高いから玄関も少し高いけれど、家に入るときこれで大丈夫なの?」


「……よくない。階段作るための木材を考えてなかった」


「じゃあ、集めてくるよ!」


 頑張って考えてくれてる蒼奈のサポートも頑張らないとね!


 追加で丸太を集めたころには、全員が壁の作業に取り掛かっていた。階段も、先に集めていた木材で作ったようで、登りやすくなっている。丸太をさっきの壁作りと同じ要領で、作業台をつかって木材に変えてみた。うん、やっぱり物造りも面白い。


 それからも、みんなとおしゃべりをしてずっと家を作り続けた。壁が完成して、屋根に取り掛かったあたりで、


「チャコ、空腹ゲージが10%切ったから、屋根はこっちに任せてパン造りをお願い。壁ができたから襲撃は大丈夫だと思う」


「わかった~」


「鬼棟梁のアオナからパン造りが許されたー!」


「餓死せずに済むぞ!!!」


「鬼棟梁――アカネちゃん?」


「ヒェ!」


 蒼奈がアオナしてきた! いやぁ、蒼奈の笑顔はかわいいなぁ


 その後も天井を作り続け、途中で茶子が作ってきたパンも2個頬張って、日が暮れる前には何とか家が完成した!


「おつかれー! 間に合ったねー!」


「お疲れ様、ギリギリだった」


「がんばった~、今日は無事にすごしたいよ~」


「初めての家! 使うのが楽しみだ!」


 みんなで外から完成した家を眺めた。外観は……真四角だ。


「すごく真四角だね」


「これがあの有名な豆腐ハウス。建築初心者の強い味方でもある最高効率な建築」


 真四角だけど、みんなで作ったからなんか嬉しいよね。


「じゃあ、さっき言った通り手分けして準備しよう。もうちょっとでアチーブ『雨の心配がない生活』が獲得できるよ」


「了解!」


 夜に備え、荷物を家の中に運び込み、パンも焼いてもらって、最後に家に必要な設置物を配置する。


「藁のベッドはどう設置しようか」


「川の字かな~」


「それだと端っこ同士が遠いよね」


「真ん中に頭が集まるようにしよう!」


「それいいね!」


 相談の結果、ベッドは中央に頭が集まるように設置。扉前は1マス空白が必要だから、残りの3マスが道具置き場となる。

 最後に、石ランタンを設置。


システム:アチーブメント『雨の心配がない生活』を獲得しました。


「「「「わぁぁぁあぁあぁ!」」」」


 ついに目標1つ達成! 長かったけれど、この調子で次々と取っていきたい!

 外はもうすぐ夜。ということで、家に入り扉を閉める。モンスターは扉を開けて家の中に入ることはないので、扉さえ閉めれば安全だ。

 あとは寝るばかり、なんだけど、寝る場所をどこにするかで話し合い。隣同士は誰にするかだけど、私と蒼奈はよくお互いの家でお泊りしてるから、ここでは対角線に寝ることにした。ということで、私の隣は銀華、蒼奈の隣が茶子になった。


「『グルテン好き』は、パンを作るか食べるかすればそのうち獲得できそうだから、時間の問題」


 藁のベッドに入りながら、次のアチーブの話をする。


「『ゴブリンの敵』がどの程度かだよねー。最初のゴブリン討伐は『ゴブリン初討伐』だった」


「何体か倒さないと、だめかな~」


「種類かもしれないぞ! ゴブリンアーチャーとか居そう!」


「アーチャーだと盾は必須」


「ゴブリンメイジも~、魔法防ぐのに盾が居るかもね~」


 まだ見ぬゴブリンに控えて、何が必要になってくるのか話し合う。必要なのはレベル、装備、回復薬と、まだまだ足りないものが多すぎた。


「今日の家建築でレベルが4まで上がったから、知性にポイント全部振ったら武器と服が作れるようになった。武器は、木の剣、石のメイス、服は全部布製品で、帽子、服、ズボン、スカート、手袋、シューズ。布装備は、羊毛か蜘蛛の糸が必要」


「服が欲しい~」


「まともな服!」


「羊を探すとして、見つけたらどうすればいいのかな?」


「草が食べ物だから、草を見せればついてくるかもね」


「柵が必要じゃない~?」


「あ、そうだね。もう少しレベル上げなきゃだめか」


 結局レベル上げないとどうにもならないかぁ。……うーん、そうかな?


「ねぇ、レシピってレベル上げないと手に入らないものなのかな?」


「ゲームって、レベル上げて強くなるものじゃないか?」


「そうだけど、レベル上げなくてもレシピが落ちてるってことあるんじゃない?」


「確かに。実物を入手してレシピ解放の可能性を忘れてた」


 ということで、明日は周辺を探索して、色々拾うことにした。ついでに羊を見つけたら連れてくることも決定している。


「ね~、もう夜になってるよね~? まだ寝れないの~?」


「ほんとだ! 布団に入ってるのに変わらないな!」


「確か、寝ると自動暗転して朝になるんだよね?」


「うん。もう少し詳しく調べてみる」


 調べた結果、夜になった時点でサーバーに居る人全員が布団に入っていると、自動暗転するらしい。目を閉じるとかは関係なく、横になればいいらしい。

 全員……いるよね。


「あ、コガネ先輩がログインしてる」


ギンガ:zzz

アカネ:zzz

アオナ:zzz

チャコ:zzz


コガネ:ごめんwww すぐ寝るからwww

 豆腐ハウスいいですよね。空間が無駄なく使える。

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