『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』22
「久しぶりだな、トマト娘。ふむ、かなり鍛えたと見える。だが、ワシの目の黒いうちはその程度のチーズ捌きなどで許すほど甘くはないぞ!」
油断した! 来てしまった! チーズお爺さん! 最近はマードレ・ピッツァのみんなと楽しくピザを作っていたから、このミッションの存在がすっかり頭から消え去っていた!
今回の焼きは茶子の番だった。頑張れ、茶子。そのうち焼くことしか頭に残らなくなるよ……。
前回と同じく、ピザを作る際のチーズの乗せ方に関して様々な指導が入る。前回のモッツアレラチーズに関してはさんざん教えられたから、体にしみついていたので注意されることが少なかった。
今回は、前回追加されたチーズ、パルミジャーノだった。このチーズは粉チーズとして使われてるのだが、その振りかけ方に細かい指導が次々と入る。
「粉チーズひとつまみというのは指2本でつまむんじゃない! 指全体でつまみ親指を擦るようにして振りかけるんだ!」
指でつまんで振りかける方法をさんざん叩きこまれた。道具を使うのは好ましくないとのこと……。
「そんな振りかけ方では全体にいきわたらないだろう! 切り分けて食べることも考えろ! 均一に回せ!」
振りかける場所はピザの全体に振りかけるようにする……。
「コルニチョーネにかけるんじゃない! 中の具材にかけるんだ!」
全体にかけ回すのだが、コルニチョーネは避ける……。
「量が多すぎる! 香りと味の強いチーズだということを忘れるな! 何事も調和が大切だ!」
摘まむ量も適切な量がある……。
お爺さんの指導に必死に食らいついて、しばらくした後に、
「よし! ある程度は見られるようになったな、トマト娘よ」
と言われ、そのセリフにホッとするのも束の間、
「だが、粉チーズは客の要望によっては焼きあがってから振りかけたい場合もある。その練習をするぞ!」
との言葉に、また地獄が再開である。
もはや、店舗を拡大して来店したお客さんがどうなっているのかを確認することもできない事態だった。ピザを延々と作り続ける。ただそれだけを、ひたむきに努力し続けた。
「うむ、よくやったトマト娘。これでお前は粉チーズを普通に振りかけることが出来るようになった。また来るぞ! 精進することだ!」
そう言い残して去っていったらしい。最後のセリフはデリバリーから帰ってきた蜜柑先輩が聞いたセリフである。
指先がもうしびれてきた気がする。粉チーズまみれの状態を振り払う気力もない。
ガタンと音がした方を見ると、焼き担当の茶子が力尽きて床に倒れていた。その姿を見た後の記憶はない。
ログアウト、就寝……。
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学校のカフェテリアでラーメンを注文。醤油ラーメンで麺はやや太目。チャーシューの量は特に増やさなかったけど卵を追加して入れた。もやしはしゃくしゃくと噛み応えもよく、メンマはコリコリと美味しい。胡椒は入れていないから辛みはないけど、逆に醤油のスープが卵と混ざり合った甘みを伴っておいしく飲める。
「茜は卵をスープに溶くタイプなの~?」
茶子は味噌ラーメンを注文している。バターが入ってるから北海道風だね。
「濃いスープだと溶くけど、そうじゃなければ気分次第かなぁ?」
最初にレンゲでスープを一口飲む。もし醤油が濃すぎるなら卵で薄めるけど、そうでなければ気分次第で決めてない。
「1つ目の卵をスープの上に溶かした上に、2つめの卵を入れるのが熱い!」
そんな銀華は、つけ麺のラーメンでスープは醤油。卵について話してはいるけれど、銀華の麺の上には二つに切り分けられた茹で卵が乗っている。茹で卵も捨てがたい。
「銀華の味玉もいいよね。追加すればよかった」
蒼奈は野菜たっぷりの塩ラーメンをすすっている。にんじん、キャベツ、もやしと、色とりどりだ。
「ラーメンのゲームってあったよね~?」
「あったね。ラーメンの調理方法を極限までこだわったゲーム。難易度イージーでスタートしても、商店街のラーメン大会の初戦クリア者が、全プレイヤーの4割しかいないって噂の」
……調理方法を極限までこだわったゲーム? なんか覚えがある。ちょっとした恐怖を感じるくらいだ。
「クリアした人いるのか!?」
「調べる……イージークリア者が5名で、ノーマルクリア者が5名で、ハードクリア者が5名だって」
蒼奈がシーポンで検索した情報をAR画面で見せてくる。どのモードもプレイヤー名は全部同じだな。
「全世界5人専用ゲームだ!」
「ゲームとしてどうなんだろ~」
「イージーで地方大会5位の人が、ゲーム知識を元に実際のラーメン店を開業して成功しているみたいだよ」
「教育ソフトだ、それ」
「クリアした人のラーメン食べてみたいな~」
ワイワイお話しながら、楽しくお昼を過ごした。
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昨日のチーズお爺さんの惨状から一夜明け、お店の片付けをしながら新たに入手した限定食材を確認する。
限定食材『ゴルゴンゾーラ』
「おぉ、ブルーチーズだ……」
黄里先輩がゴルゴンゾーラを取り出したところ、青カビのチーズが目の前に出てきた。なんだか魔王みたいな名前だね。
「これどうやって食べるの~?」
「普通にそのままでも食べれるぞ。柔らかくて塩気があるんだが、好みが別れるだろうな」
「これを食べるのかー。うーん」
青カビってだけで、なんか遠慮してしまう。でも、きっと、おそらく美味しいんだろう。
眺めている間に、蜜柑先輩が1センチほどに切ってくれたチーズが目の前に並ぶ。試食だ……。
しばらくじっと眺めた後、食べてみる。チーズの柔らかさと、おそらく青カビ部分だと思われる個所を噛んだ食感が歯に感じられる。味は塩気が感じられて、まあ食べれる。
パクパク食べられるかというと、ちょっと遠慮したい。でも一口食べたから、まったくの未知でもなくなった。
「ゴルゴンゾーラを使ったピザにはちみつを掛けると美味しいらしい」
「このチーズ、ピカンテとドルチェって2種類あるって~」
「取り出すときにどちらかを選べるみたいだな」
食べたり調べたりすることで、いろいろな情報が出そろってくる。とりあえずは、注文がはいったら使うチーズということで、やはり普段はいつものチーズを使ってピザを作るってことで落ち着いた。
そろそろ朝の開店時間。生地を取り出したり、箱を準備したりと、ゲームを始めた頃と比べて、スタートする前の手際がかなり良くなった。きっと現実でピザ屋で仕事をしても問題なくできそうだ。……どこかで聞いたことがある話だな?
今回は私はデリバリーの番。最初少し手伝って、その後はバイクで走り回るぞ!
ラーメンのゲームは、漫然と食べるだけでゲームオーバーになります。食べるだけでも作法が多すぎる覚えゲーです。商店街の大会ですが、商店街でラーメン創業50年の老舗も参加しているため、素人が勝てる道理がありません。




