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あちーぶ!  作者: キル
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『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』14

「アカネちゃん、チャコちゃん、お疲れさま」


 黄里先輩が部屋のベッドに座りながら迎えてくれた。


「先輩たちも、大丈夫でした?」


「私たちは大丈夫。混乱はあったけど、もともと物が固定してある部屋だから揺れても問題はなかったよ」


 近くの棚を黄里先輩が軽く叩く。確かに、壁にしっかり固定がしてあるし、棚の扉もレバー式の鍵がかかるようになっていて、多少の振動では外れないようになっている。


「あ。物が固定してあるといえば、この場所って護衛艦っていう空飛ぶ船らしいよ。揺れると危ないから物が固定してあるんだろうね」


「だからか。ここの人らが妙に姿勢や言葉が丁寧なんで気になってたけど、軍隊に近い性質って考えたら納得だ」


 腕を組んで聞いている蜜柑先輩が頷く。確かに、ここの人たちの態度は極端に丁寧だ。そういった訓練されているのかな?


「リーマトさんは建築会社の社長ですよね~?」


「地面を作るって国家事業だろうし、一般企業が請け負う建築工事ではないってことだね」


「国営の会社じゃないかな。従業員であり軍隊でもあるって設定なんだろう」


 建築をしながら軍隊の訓練ってかなり大変なのでは? そう思ったけど、昔の軍隊は道路整備も仕事の内だったとか聞いたことがある。同じような物かな?


「別の組織かもしれないし、詳細は今のところわからないな。聞いていいものかどうかはわからないけど、一般的に知られている範囲なら教えてくれるかもしれん」


「結構しっかりしている組織なのに、こんなこと起こるんですね」


「T字アームが壊れていたって聞いたな」


[チャコ]アカネ、ちょっと疑問に思うかもしれないけど静かにね~


「T字アームが支えてるの~?」


「固定金属とT字アームが支えているらしいんだけど、うちが聞いた人はT字アームが破損したって言ってたな」


「それが壊れたのか壊されたのかで、調査が変わるだろうね」


「なるほど~」


 ……


 コンコン


 ノックがしたので扉を開けると、知らない女性の職員が居た。


「お休みのところ失礼します。現在、事故の調査を行っていまして、全員に聞き取り調査を実施しています。皆様にもご協力をお願いしたいのですが、よろしかったでしょうか」


 後ろのみんなを見るが、黄里先輩が頷くので、職員の人に協力すると返事をした。順番は誰でもいいとのことなので、黄里先輩が先に話をするために向かった。


 しばらくしてから先輩が戻ってきた。何を聞かれたか質問したら、今日の行動を聞かれただけだったらしい。さすがに、到着してすぐに何かできるとは疑われていないだろうから、聞かれたことも単純なんだろう。


 その後はじゃんけんで決めた茶子が向かい、次は私の番なので女性職員に連れられて部屋に入った。

 部屋の中には、緑の作業服を着た年配の女性職員が座っていて、対面の椅子に座るように促された。私に席を促してから女性職員は、服の襟を整えて背筋をビシッと伸ばし、隙の無さそうな体勢で私を見た。勲章なのかわからないけど、バッジを付けているのが軍隊の偉い人って感じがする。そのバッジがピザなのは、この世界のイメージにぴったりだけどちょっと面白い。


 聞かれたことは、先ほどの振動が起きたときにどこで何をしていたのかだった。

 列車で夕食のピザを作っていたと話したら解放された。私たちが鉄道へ移動している姿を見ている人も居るだろうし、もともと疑ってたわけじゃなさそう。建前として全員に話を聞いたことにしたいのかな?


 最後に蜜柑先輩が向かって、しばらくしてから戻ってきた。


「ほんとに、ただの質問だったな」


 私たちの部屋に蜜柑先輩が戻ってきた。先ほど私たちを調査室へ案内した緑の作業着を着た女性も扉の外で立っている。


「ご協力ありがとうございました。また、申し訳ないのですが皆さんには出来るだけ女性用宿泊棟だけをお使いいただくようお願いいたします。食事に関しては、通路の奥に食堂の女性専用側にてピザ自動販売機で購入できます。体調不良の場合は、各部屋にあるそちらのボタンを押してください」


 そういって指をさすのは十字マークの下にある赤いボタンだった。


「ミテラさんが医務室に居るのですが、お見舞いはできませんか?」


「本日はご遠慮いただきたいです。怪我人が多く、医務室が人であふれているためこちらも対応ができません」


 黄里先輩の要望もすっぱりと断られた。今日はどうあってもこの部屋で待機になっちゃうのか。探検も中途半端で残念だった。


「一緒に列車に乗ってきた仲間の部屋に入ることもだめでしょうか?」


 珍しく丁寧な話し方をする蜜柑先輩だ。


「それは構いません。女性用宿泊棟内であれば行動に制限は設けません」


「カードとかボードゲームはありませんか~?」


「奥の食堂の隅にいくつかあるので、そちらをお使いください」


 黄里先輩や蜜柑先輩と違って、遊びに関する質問だったからか、女性は少し微笑んで答えてくれた。この状況でその質問をする茶子も妙な度胸があるよね。


 その後は特に質問も無かったので、女性は戻っていった。


「ミテラさんのお見舞いに、マードレ・ピッツァの人たちが向かったから、後で話が聞けるかも」


 さっきすれ違ったことを伝えたら、あとで食堂に集まってミテラさんの様子を聞いてみることになった。まだ食べてない夕食もそのときに一緒に取ろうと決めた。


「アエラさんに、この後の方針を聞いてくるよ」


 黄里先輩そう言うと立ち上がって、部屋を出ていった。


「アカネ~、この世界のゲーム気にならない~?」


「なる! ピザっぽいのになってそう!」


 そういえば、まだこの世界でのゲームって見たことがない。これだけピザでまとめられた世界、デザインが変わっていないはずがない。

 ちらっと蜜柑先輩を見る。行っていいのかな?


「どうせ食堂で集合するんだ。先に行っていいぞ?」


「「はーい」」


 ということで食堂へ入り、中を見渡したら壁にピザ型のダーツっぽい的があった。多分あそこだ。

 近くにいくと、ガラスかプラスチックで中が見える扉の付いた棚があった。扉の持ち手を上に上げると簡易的な鍵がかかり、下げると鍵が解除されるようで、ここでも振動対策がされていることがわかる。


「やっぱりピザ柄が多いね」


 棚を開けて中身を取り出してそれぞれ確認すると、ピザの絵柄が非常に多い。

 トランプの王様たちの持ち物が全部ピザ関連で、キングがピザを食べ、クイーンがピザを切るカッターを持ち、ジャックがピザを焼くパーラーを持っている。


「これって将棋だよね~?」


「駒がそれっぽいよね」


 茶子が取り出したのは木の板と木の箱で、中を見ると将棋のような五角形の駒が入っていた。駒の文字がトマトやチーズの絵柄になっているのが違うところか。


「アカネって将棋できる~?」


「ううん。遊んだことない」


「そっか~、じゃあ別のにしよう~」


 土地を買うゲームやルーレットを回すゲームもあって、それがピザのデザインになっているのが面白い。

 というか、この土地を買うゲームって浮遊都市マルゲリータっぽいな。箱を開けて中の土地を見てみる……あれ?


「チャコ、このゲームのボードに、ソレッレ・ピッツァって書いてあるよね?」


「ほんとだ~。じゃあ、これは……フラテッリ・ピッツァにマードレ・ピッツァもある~」


「私たちの店って結構老舗なのかな?」


「ゲームに登場するくらいだからね~」


 意外なところで自分たちの店の情報が手に入る。ふたりだと盛り上がりに欠けそうだけど、このゲームで遊べばこの世界の情報も遊びながら覚えられそうだ。

 ちなみに、アエラさんの勤めていたファミーリャ・ピッツァは最高金額の店だった。


 他のゲームを探すと、見覚えのあるボードと駒が見つかった。


「これ、多分リバーシだね。駒がピザの裏表デザインになってるけど」


 ボードも8×8のマス目だから間違いない。


「遊んでみよ~」


 リバーシを近くのテーブルに移動させて、駒の入った箱を二人の真ん中あたりに置いてゲームを開始する。


[チャコ]個別チャットできるよね~?

[アカネ]うん。どうしたの?

[チャコ]まだハッキリしないんだけど~、この事件って先輩ふたりが関係しているかも~?

 円形のボードの周辺をデリバリー(周回)するゲームです。ピザ店を買ったりトマト農場やチーズ工場を購入するなどして合計金額1位を決めます。速度違反などで定期的に警察に捕まります。

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