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あちーぶ!  作者: キル
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『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』12

 最後の6枚を焼き終わって、9人が全員でデリバリー先へ持っていく。駅のホームを超え、離れた場所にある扉から室内に入る。中に入るときに証明書を見せた。そこからしばらくは廊下を進んだ。


 2名と聞いたときは依頼主の旦那さんと息子さんかなと思っていたが、デリバリー先の部屋へ入ると、どちらも50代の男性だった。ふたりとも緑色の服を着ているけれど、作業着ではなくスーツのような姿だ。


「初めまして、モッツア建設社長のリーマトです。君たちが妻に依頼されてきた人たちだね、依頼を受けてくれてありがとう」


 明るい緑の髪で見た目が優しそうな男性が前に出てきて、手を胸に当てて軽く礼をした。私も慌てて礼をする。


「それと、こちらがアンダーピールの安全保障を担当しているカマンダさんです。彼にピザ鉄道や受け取り場所などの相談に乗ってもらうことで今回の依頼が実現したのです」


「カマンダです。アンダーピールで焼きたてのピザを食べようというリーマトさんの考えに共感して微力ながら手伝わせてもらいました」


 こちらのが少し年上の男性かな? 茶髪に白髪まじりで、体つきはがっしりしてる。


 カマンダさんを紹介された後は、部屋にある長椅子のソファーにそれぞれが座る。ソファーが並ぶ割には、部屋そのものは狭い。部屋の奥には事務仕事をしていそうな机と椅子が見える。アンダーピールは頻繁にお客さんが来るような場所では無さそうだし、外から人を招くだけの客間は無いのだろう。


 着席後、全員がここに呼ばれた理由を話してくれた。依頼した側として話がしたかったそうだ。主に、今までデリバリー先での受け取った反応を知りたいらしい。

 出会った人たちの反応は、全員が喜んでいたのでそれを伝えると、好評だとわかったようなので、定期的に依頼することを検討するとのこと。


 話をしていると、部屋にノックの音が響き、20代の緑の作業服を着た男性がひとり入ってきた。男性はそのままリーマトさんの席の横まで移動すると、私たちの側を見て真っすぐ立った。


「妻から聞いていると思われますが、息子のスインです」


「スインです。先ほどは美味しいピザを作っていただきありがとうございます」


 姿勢よくスインさんは礼をする。その後はリーマトさんの隣で真っすぐ立ったままだ。髪色は濃い茶色。顔つきはリーマトさんと似てないので、奥様に似てるのかも?


「スイン、皆さんを本日の宿泊棟まで案内してあげなさい」


「はい。それでは皆さんの宿泊棟まで案内させていただきます」


 スインさんはそのまま入口の扉を開け、外で待機。


「それでは、失礼します」


 アエラさんが挨拶して退室し、私たちもそれに倣った。

 部屋の外に全員が出てからスインさんの案内で移動を開始する。廊下は狭いけれど人がすれ違うほどの空間はある。天井はパイプがむき出しで、至る所に伸びている様子が、住居ではなくこの都市を支えるアンダーピールの職場なんだと実感する。


 廊下の手すりを何げなく掴みながら案内されると、やがてある一角で停止した。壮年に見える女性がひとり立っている。


「この曲がり角を右へ進むと男性用宿泊棟になります。緊急時以外は進まないようにしてください。正面は、食堂、医務室、理髪店、トレーニングルームなど生活に必要な施設があります。左が女性用宿泊棟です。ここに来るまでに上下への階段を見かけたと思いますが、この階だけで過ごすようお願いします」


 これだけ機械や見知らぬ道具がいっぱいある場所だから、勝手に移動するのはよくない。でも、食堂とかに行ってはダメって言われてないから、後で行ってみよう。


「女性専用の宿泊棟では、A-4がアエラさんに使っていただく部屋です。D-3とD-4が4人部屋で、それぞれの店舗で分けて使っていただきます」


 左側を見ると、少し進んだ先で右に道が曲がっている。遠くから見られないように曲がり角で視界を塞いでるんだね。男性用の方を見ても同じ作りだから、左右対称なのかな?


「女性用宿泊棟で何かありましたら、こちらの女性にお申し付けください」


 先ほどから立っている女性に話が移る。女性は一歩前に出て、改めてこちらを見た。


「本日、皆さんの宿泊をサポートするルマナスです。生活に必要な施設の案内をさせていただきます。何かありましたらB-1室に来ていただければ対応させて頂きます」


 ルマナスさんも姿勢がいい。ここで働くと上下関係とか厳しいのかな? 体育会系な雰囲気を感じる。


「それでは、私はここで就寝時間まで待機しています。何か用があればいつでも対応させていただきます」


 スインさんはそう言ってルマナスさんを見て頷く。


「それでは、案内させていただきます」


 そういってルマナスさんの先導で女性用宿泊棟に移動した。

 ここで交代するなら、最初からルマナスさんの案内で良さそうな気がしたけれど、依頼主の息子ならそういうこともあるかと納得した。


~~~~~~


 ルマナスさんから説明を受けた後、茶子と一緒に探検開始!

 スインさんの居る分かれ道まで戻って、食堂へ行ってみる。すごく広いわけじゃないけど、狭い中にも30席は確保できる長テーブルがある。


「これが悪名高いピザか~」


 食堂には自販機のようなピザ製造機がある。奥様が泣いてしまうほど辛いここでのピザとはどんなものなのか気になっていた。

 スインさんに聞いたら、1~2枚なら食べてもいいらしいので1枚もらう。支払いする必要はなかったので、職員には無料で提供されているものなんだろう。


 ……ピザというか、ピザ風パンかな? ふわふわじゃないパンの部分に、ケチャップが塗られて、上に細切りにされたチーズが振りかけてある。それを、電子レンジで温めたようなピザだ。あったかいけどぱさぱさして美味しくない。いや、このゲームを始める前の私だったら喜んで食べてたね。


 その後、医務室はさすがに邪魔になりそうなので入らず、理髪店は外からしばらく眺めるだけにして、トレーニングルームでランニングマシンと筋トレ用の器具を少しだけ使い、娯楽室で職員がギターを演奏していたので少し聞いた。

 十字路に戻ってきたときに、ミテラさんとマーレさんが、スインさんと話をしていた。


「ミテラさんどうしました?」


「アカネちゃん。あのね、お二人とも夕食は食べました?」


 そういえば、ピザを焼いてばかりで食事としては食べてないなぁ。さっきの? 間食です。


「いえ、おやつで自販機ピザは食べたけど、ご飯は食べてないです」


「ですよね。だから今からみんなの分を焼きに行っていいかと相談してたんです」


「じゃあ、一緒に行こうかな。チャコは?」


「あたしもいくよ~」


 スインさんの許可を得た上で、スインさんも一緒に移動してピザを作りに行く。


アカネ:ミテラさんたちと夕食のピザ作りに行くよー。

キリ:助かる、行ってらっしゃーい。


 スインさんを先頭に、最初に来た道を戻り外に出る。改めて周囲を眺めるけど、駅のホームにしては広すぎるし、倉庫にしてはスカスカな印象だ。では何かというと、とりあえず今は駅のホームとしか言いようがない。


アカネ:ここって何に使うんだろ?

チャコ:広すぎてわからないよね~。


 なんだかよくわからない違和感を抱えたまま、鉄道に戻る。ここからはいつも通り、ピザ作りだ。


「スインさんはピザを作ることあるんですか?」


 ピザを作る合間に、ミテラさんが見学をしているスインさんに質問をする。


「いえ、ピザ作りの才能がありませんでした。学生の頃はピザ屋でバイトをしましたが、仲間が作ったピザをデリバリーしていただけですね」


「そうでしたか。どちらのお店で働いていたのですか?」


「フラテッリ・ピッツァです。ご存じですか?」


「はい。20番通りにありますね。老舗ピザ屋と聞いています」


 エルマーが居るところだ。うちの店と同じく、昔からある店舗らしい。話に入ってエルマーの名前を出したけど、さすがに知らなかった。年代が違うからね。


「もうほとんどが辞めてるかな。当時の最年少はブルダーって子だったのですが、知ってますか?」


 私は聞いたことも無い人なので首を横に振るが、茶子は違ったみたいだ。


「今は店舗のリーダーをしていますね~」


「そうですか、頑張ってますね。今は……大学2年かな。ピッツァイオーロ目指しているって言ってたけど、どうなったんだろう」


 昔を懐かしむような目をするスインさん。反対に茶子の表情は優れない。イベントで因縁のある相手なのかな?


「上に戻ったときに会いに行くのもいいですよね」


 マーレさんの言葉にうなずくスインさん。お客さんとしてならいつでも会いに行けるし、いい機会だよね。


 9人分のピザを焼き上げて、箱詰めが完了した。


「それじゃあ、食材をコンテナに戻してきます」


 食材コンテナの中は食材を適温に保つように工夫されているので、使ったら戻すのを徹底している。


「じゃあ、私は薪窯の掃除かな」


「あたしも手伝います~」


 マーレさんと茶子が薪窯の掃除を始める。薪窯ほど掃除の手間がかからないけれど、内部の汚れは使用した当日に綺麗にした方が汚れが落ちやすい。どちらにせよ使う前に掃除するのであれば、明日より今日のが時間の余裕もある。


「それじゃあ、わたくしはピザの運搬準備ですね」


「あぁ、それなら手伝えます」


 ミテラさんが持ってきたピザ用の台車を、スインさんが広げ、そこに出来上がった箱詰めのピザを乗せていく。列車内で積めるとホームとの段差があるので、ホーム側に台車を設置していた。


 私は、コンテナを開けて、食材の位置を確認。チーズやトマトソースを戻す。


「あ、小麦粉の残量見るの忘れた」


 生地生成器という、ミキサーから醗酵まで自動で行ってくれる機械がある。時間指定すれば望み通りの時間に次々と作ってくれるので、無くてはならない機械だ。ピザ列車の中間車両の半分はこの生地生成器が占めてると言ってよいほど大きい。

 その機械も、さすがに小麦粉を入れないと稼働しないため、残量の確認は怠ってはいけないので、確認するためにコンテナから出ようとする。


 ガゴンッッッッッ!!!!


 振動と共に、爆発したかのような大きさの音が鳴り響いた。

 コンテナの扉が勢いで閉まって危なかった。挟まれてたら大怪我だ。扉は自動で施錠されるタイプじゃないので閉じ込められずに済んだ。

 とにかく急いで外に出る。


 そこで見た光景は、駅のホームが斜めに傾き、ホームの先――海へ転がり落ちていくミテラさんとスインさんだった。

 駅のホームと鉄道は接続されていないので、ホームが傾いても鉄道には影響ありません。

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