『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』08
1年生が4人そろってカフェテリアでカレーライスを食べる。蒼奈が最初にカレーライスにするとつぶやいた後、全員の口の中がカレーに支配されてしまい、揃って食べることになった。
カフェテリアでのカレーは、スパイスもそれほど匂いがきつくないので、ニンニク料理と違って普通に提供されている。とはいっても、後で匂いを押さえるタブレットは飲むけどね。
私は、野菜カレーを注文した。ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、ブロッコリー、ナスが入っている。
カフェテリアのカレーは、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎが基本セットで入っている。そこから野菜カレーを選んだらそれらの量が増えたうえで野菜が追加される。私の場合は、ブロッコリーとナスの追加だね。希望すれば他の野菜も追加できたけれど、多すぎるから止めた。
蒼奈は、私のナスの部分をカボチャに変更しただけで、ほぼ一緒。ジャガイモも入っているので、ゴロゴロカレーって感じになっているのがおいしそう。
茶子は野菜カレーじゃなくてチキンカレー。前にチキンカレーを食べたことあるけど、鳥の肉部分のあっさりさと、皮の脂身が美味しい。
銀華はシーフードカレー。エビがおいしそうだから、今度頼むときはシーフードカレーを頼もう。
部室に戻って、黄里先輩が戻るのを待ってログイン。蜜柑先輩には黄里先輩が連絡をしていた。
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ログイン先は更衣室。そこから店先に出ると既に蜜柑先輩がいた。
「こんにちわ~」
「こんちわ。カタログ見て待ってな」
そういって蜜柑先輩もカタログを見ている。椅子に座ってパラパラカタログをめくってるだけなのに妙に絵になる先輩だ。
ほどなくして黄里先輩と茶子も来た。茶子がこっちに来たので、一緒にカタログを見る。
「次の仕事がどんな場所でやるのかわからないから、新たに買うのが難しいね」
「バイク3台貸してくれるって話だから、デリバリーなんだよな。となると、運搬量を増やすか……いや、携帯のナビでも買うか?」
「あ、それいいかも~。現在の状況を元に表示するやつがあるよ~」
腕時計タイプで、操作すると空中にパネルが開くナビを茶子が指さす。データ更新が10分ごとにされるから、どんな場所でも正確に位置を教えてくれるらしい。
「普段のデリバリーや、マップ探索にも役立ちそうだよね」
「じゃあ、人数分買っておこうか」
購入して数分後、玄関にナビ時計が届く。速い!
それぞれ左腕に付けて操作確認をする。普段のシープの使い勝手と似たような感じなので不自由なく使える。
……待ち受け画面は、私がシープに保存した写真を使えるのか。猫にしておこう。
ジリリリリリリ!
「はい! ソレッレ・ピッツァです!」
私たちの営業時間外だけど、電話が鳴ったので黄里先輩が受話器を取った。しばらく話をして、受話器を置く。
「今日の昼時間から35番通りの最奥で集合だそうだ。スカートでなければ、服装はなんでも良いらしい。ただし、数日分の着替えは必要だ。あと、こちらからバイク1台持っていくようにとのこと」
「ここに残ったNPCの人はバイク無しでいいの?」
「その話はなかったけど、いいんじゃないかな? 本店からの指示だからね」
問題が無いのならいいか。案外店を閉めてたりしてね。
「朝の営業はやるのか?」
「時間もあるし、やっておこうか。そのあと荷物をまとめてからスキップすればいいんだし」
ということで、朝のお仕事まで時間を進めて営業開始!
今回の私の担当は、ピザを焼く担当! 最初は焼く前の準備をしなくちゃいけない。
前回使った薪が燃えカスの灰になったので、それを捨てるところから開始。パーラーですくって、薪窯のとなりにある灰置き場に置く。
次は、薪を窯の左側に寄せるように置いて、火をつける。しばらくしたら窯の中が赤く燃え続けるので、準備完了。
実際のピザ屋さんは準備がもっと大変なんだろうけど、ゲームだからかなり省略されている。燃えカスの灰だって1回すくっただけで綺麗になるし、太い薪がすぐにごうごうと燃えてしまうので、私としてはお手軽で助かる。
窯の中が真っ赤になったので、位置がずれて横に転がった薪を左にしっかり寄せて準備完了。その後は、焼く直前まで作り終わったピザを、パーラーを使って中に入れていく。
パーラーの上にピザを乗せるときは、乗せる直前に打ち粉を振って滑りやすくし、ピザを作業台からスライドさせてパーラーの上に乗せる。その時、パーラーの上でピザの耳を引っ張って丸く整える。あとは窯に入れてパーラーを一気に手前へ引けば窯の中にピザが残る。
窯の中の薪を左端に寄せたので、反対の右端が焼く場所だ。窯が半球のドーム型なので、熱がドームの壁面を流れるようにぐるりと回ってピザ全体に熱が届くのだ。火に近すぎると片側だけ焼けすぎたり焦げてしまうため、窯の内部に敷き詰めるようには置けない。
それでも、置きっぱなしじゃ焼き加減にムラができるから、パーラーを使って中で回転させる。少し焼けたら回転させやすくなるので、パーラーの先でクルクル回す。
焼き時間は2分もかからないので、見た目を確認して綺麗に焼けていれば取り出して完成。大変な上に、注文が次から次へ入るので休みが無いのが厳しい。かといって、窯の入口は狭いのでふたりで焼くようなスペースはないため、常にひとりで頑張らなければならない。
「あらあら、生地の伸ばし方がまだまだね。若い子はこれだからだめよ。教えてあげるわ、伝統的な生地の伸ばし方を」
パーラーを必死に動かしていると、すぐ近くで知らない女性の声がした。そちらを見ると、蜜柑先輩と茶子にお婆さんが生地について話をしているようだ。
生地を手にしていたお婆さんは、ふいにその生地を空中で回しだした! 空中でクルクルと生地が回る様に、思わずパーラーを動かす手を止めてしまったほどに見惚れてしまう。
「これが出来れば、遠心力で生地も均一になって焼きムラも少なくなり、押さえつけないから中のガスもつぶされず、ふわふわの食感になるわよ。まぁ、今のあなたたちには無理ね。基本がなっていないもの。今回は手を使った伸ばし方を教えてあげるわ」
そう言っていつの間にか生地の指導教室が開催されている。このあいだのチーズお爺さんと一緒だ。……ということは。
それからは休む暇がなかった。延々と追加されるピザをもくもくと焼き続ける。前回と同じくお婆さんが全てのピザを買い取るので無駄にはならない。
前回はチーズの乗せ方を教えてもらっていたのでまだ工夫や試行錯誤があったけど、今回は延々と焼くだけ。あの時に焼き担当の蜜柑先輩はこんな気持ちだったのだろうか。
そして私は、体がまるで機械のように同じ動きを続けることになった……。
……
「今日のところはここまでね。練習しておきなさいよ?」
はっ! 焼き待ちのピザが来ない! ピザは? ピザはどこ?
「おわった~」
「指が腱鞘炎になる」
振り返ると茶子と蜜柑先輩が作業台に倒れ伏している。お婆さんはいない。おわったのか!
パーラーを持ったまま、その場でへたり込む。辛かった。意識が途中でなくなった気がする。黄里先輩が帰ってきた気がするけど、話しかける気にならないほど疲れた。
茶子がやってきて、支えられて立ち上がり、椅子に座らされて水を一口飲んでようやく意識が回復した。
「アカネも大変だったね~」
「チャコありがとー。もう途中から記憶がないよ」
向こうでは黄里先輩と蜜柑先輩が話をしている。まだ他を気にするほどの元気はない。
「何か報酬あったの?」
「生地を作るミキサーがもらえたよ~。生地が伸ばしやすくなって、美味しさもアップするから売上も上がるみたい~」
茶子が指をさす方を見ると、業務用炊飯器のような大きさのミキサーがあった。私たちが生地を作ることはないけど、設置するだけで効果があるようだ。
「アカネはもうちょっと休憩が必要そうだね。私と蜜柑で周辺回ってくるからそれまで休んでおいて」
「はーい。いってらっしゃーい」
「いってらっしゃ~い」
先輩たちが外へ出かけるのを見送り、私と茶子はのんびりと会話しながら体力の回復に努めた。
ピザ作りはユネスコ無形文化遺産なんですね。ピザ回しも世界大会があって奥が深い。




